就活の「志望動機」や「自己PR」、実際会社でのキャリア形成に役立っている?
多くの学生が就職活動の中で取り組むことになるエントリーシート(ES)。しかし、学生当時の想いや考えが、会社に入ってからどの程度実現されているのかは未知数。この疑問を発端にして、今回はソニー社員2名と一緒に就活時代のESを振り返りました。2人は、一体どのようなESを書いていたのでしょうか。
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ソニーで働く上でのモチベーションとなってきた、就活時代の「志望動機」
—今回、改めてソニーへのエントリー時に書いたESを見て、率直にどう思われましたか?
梶:4年前に書いたことなので内容は忘れていました。でも改めて見ると、当時書いていた会社でやりたいことは、今の仕事で概ね満たせているなと感じました。
市島:私も、ESには「顧客視点でものづくりをやりたい」と書いていて、今の品質保証のエンジニアというのは、それを達成する仕事としてとても当てはまっていると感じました。
—市島さんは、具体的な志望動機として「つくる側の思う良い製品とお客様の思う良い製品のギャップをなくしたい」という想いを書かれていましたね。
市島:このような想いを持ったのは、大学3年生の時にソニーの職場密着インターンに参加したことがきっかけです。
—ソニーの職場密着インターンは2~4週間の長期ですよね。
市島:はい。その時に、品質保証においてお客様の要求や利用目的を考えてはいるものの、つくる側とお客様の間にはまだギャップが残っているということを実感しました。将来的には、そのギャップをなくせるような仕事をしていきたいと思いました。
—梶さんも、インターンに参加したことが志望動機の確立につながったのですよね。
梶:私はインターンでの経験を基に、会社に入ってやりたいこととして「iSTAR情報の解析手法の確立と周知」と「品質保証の指標作りに関する活動」を掲げていました。
—入社前でありながら、すごく具体的な志望動機ですよね。
梶:iSTAR情報というのは、簡単にいうとイメージセンサーの特性情報のようなものなのですが、凄く膨大なデータベースで解析は複雑です。そこで、自分の大学時代に養った知見でもあった統計学を活かせるような分野に携わりたいと思ったことが、1つ目の志望動機を掲げた理由です。
—「品質保証の指標作り」については、どのようなきっかけがあったのでしょうか。
梶:インターンを通じてイメージセンサーの利用目的や品質要求が日々進化していくということを知る中で、品質保証の指標も常に見直さなければならないということを強く実感したことが理由です。
—このように就職活動当時に掲げてきた2つの志望動機について、現状達成できているような実感はありますか?
梶:後者の「品質保証の指標作り」についてはかなっている部分があります。0から1を作り出すような業務をしてみたいと思っていたのですが、入社2年目に車載ソフトウェアの装置における品質保証の仕組み作りを業務として担いました。他の領域の基準を調べて参考にしたり、国際標準や顧客要求などを加味して設計のメンバーとも協力しながら新たな仕組み作りができたときには、すごく達成感を感じました。
—市島さんはどうでしょうか。
市島:私も達成できていると思います。営業のメンバーがヒアリングした商品に対する新たな要求については、もちろん品質保証の観点からも対応しています。そういった時に「つくる側とお客様との間にあるギャップを埋める」ために、できる限りのことをやっているという実感が持てますね。
自分らしく仕事ができているのは、強みを見つけて伸ばしてこられたから
—続いて、「自己PR」についても伺っていきたいのですが、この「自己PR」を書く時に何か気を付けていたことはありますか?
市島:簡潔に自分が伝えたいことを分かりやすく書くということが何よりも大切だと思っていました。
梶:私も似ていますが、自分の視点や自分には何ができるのかを端的に伝えることが大事かと思います。自分なりの試行錯誤や考えのプロセスがしっかりと伝わるように書くことで、他の人と差別化したアピールができるのではないかと思います。
—すごく大切な視点だと思います。梶さんは「自己PR」に「集合と位相」という科目を学んだ経験について書かれていました。
梶:この学問自体を仕事で生かしたいという意味ではなく、「苦手な分野についても成果が出るまで粘り強く続けられる」という姿勢を自分の強みとして表現したくて、このエピソードを書きました。
—ソニーの業務でもそのような粘り強さが生かせていると感じることはありますか?
梶:品質保証の業務は1つの決まった答えがあるわけではなく、いろいろなアプローチがある中で、お客様の要求や製品開発全体の状況・課題を見まわして、どれが最適かを導き出す仕事だと思っています。粘り強くいろいろな可能性を見て、自分なりにしっかりと理解して判断していくという仕事での過程に、自身の特長が生かせているのかなと感じています。
—一方で、市島さんの「自己PR」では予備校でのアドバイザーとしての経験が書かれていました。そこでは、「先輩のやり方を見て技術を学ぶことが得意だった」という文脈で、ご自身の観察力や考察力などをアピールされていましたね。
市島:私も、この特長は会社に入社後も生かせていると思っています。品質保証は、業務の中でいろいろな人と関わるので、相手がどういうことを考えているのか、潜在的にどのような要求を持っているのかについて、しっかり自ら見聞きして考えながら仕事を進める必要があると思っています。
—自分なりに解釈する力や考察する力が要求されるということですね。
市島:技術は日々更新されるものなので、それに対してどういうアプローチをするのかは、自ら学んで考えたことがすごく生きる場面なのかなと思っています。
—このような自身の強みや特長は、今またESを書くとすると当時とは違ったものになりそうですか?
梶:自分の学生時代から持っている特長は、仕事を通して更に磨かれてきているのかなと思っているので、変わらないと思います。
市島:私も、強みについては仕事でも生かせていると感じているので、同じことを書くかなと思いますね。
学生時代の想いや考えの延長線上に、キャリアを描く
—今回お二人でお話をされて、お互いのコメントに「意外だな」や「確かにそうだな」と思ったことはありましたか?
梶:市島さんの強みはすごくその通りだなと思いました。普段の業務でも、人のやっていることを吸収して、理解して応用してということが得意な方だと思っていたので。
市島:私も、いつもの梶さんのイメージ通りだと思いました。何でもしっかりとやり遂げるイメージだったので、その通りだと思いましたね。
—お二人とも、ESに書いたことの延長線上にきちんとキャリアを築いていかれている感じがします。
梶:ESを改めて振り返って、当時自分が強みにしていたこともやりたいと思っていたことも、概ね変わっていないので、そういう意味では今の業務はすごく自分に合っていたのかなと思います。
市島:私も当時のESを見て、今の自分と感覚がかけ離れていないので、良かったなと思いました。
—ソニーのコース別採用の良さという部分も関係しているのかもしれません。
梶:そうですね。ソニーはコース別採用なので、実際の面接員が今の職場の課長や部長でした。これによって、お互いマッチした職場配属が実現されているのかもしれないですね。
<編集部のDiscover>
今回お二人のESを一緒に振り返ってみて、学生時代の想いや考えはきちんとキャリアの中で受け継がれているものなのだと実感しました。それも、お二人が学生時代にしっかりと自分自身の人となりや将来と向き合ってきたからこそのことなのだと思います。もしかしたらESを書くというのは、採用に必要なだけでなく、自分自身の人生にとってもとても有意義なことなのかもしれませんね。