ものづくりへの想いとこだわりが紡ぐ最高の音楽体験
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業界最高※1クラスのノイズキャンセリング性能を実現し、支持を集める1000Xシリーズ。「世界最高への挑戦」を合言葉に、数々のイレギュラーを乗り越え生まれた完全ワイヤレス型ヘッドホン『WF-1000XM4』にも注目が集まっています。ものづくりへの熱い想い、高度な技術に隠された苦労とは。チームメンバーの一人として、生産設計を担当された木下将太さんに伺いました。
※1:2021年時点、ソニー調べ。JEITA基準に則る。完全ワイヤレス型ノイズキャンセリングヘッドホン市場において。
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- 安部 優里香
逆境の中で始まった「世界最高」への挑戦。
—ハイレゾ音質再生、小型軽量化、防滴仕様…技術をふんだんに盛り込んだ最新作『WF-1000XM4』。概要を知ったときの率直なお気持ちを聞かせてください。
割とすんなり受け入れられました。というのも『WF-1000XM4』の前はブルーレイディスクレコーダーの商品設計を担当しており、ヘッドホンについてそこまで深く知らなかったからです。今振り返ってみると、かえって良かったのではないかと思います。本当にありとあらゆる技術を詰め込んだ製品なので、当時知識があったらひるんでいたかもしれません。
—前作『WF-1000XM3』からさらに進化していますよね。新天地での挑戦、苦労はありましたか。
私が『WF-1000XM4』のチームに加わったのが2020年4月、ちょうど新型コロナウイルスの感染拡大で初めての緊急事態宣言が出た直後でした。そのため、お互いの顔すら見たことがないまま設計がスタートするという前代未聞の状況で。通常時であれば、過去どんな風に取り組んでいたのか聞いてみるなどメンバーたちと会話をしながら進めるのですが、それがいきなりできなくなってしまい、関係性を築くという意味で苦労しました。そのような中でも、私たちは「世界最高のイヤホンをつくろう」という共通の想いを持っていました。
結果は必ず”音”に出る。だから絶対に妥協しない。
—新シリーズでは、新機能の追加に小型軽量化と、まさにトップレベルの要求だと思います。どのようにして乗り越えられたのでしょうか。
音質の担保と生産性を両立させることです。例えば、ボンドの接着不良があればそこから空気が漏れて音に影響が出ます。また、マイクにつける音響弾性膜に張りズレがあれば、音圧に差が出たり、固定不具合によって音に違和感が出たりとすべて音につながります。音質は品位に直結するものであるため決して妥協せず、徹底して原因を特定、分析して改善を実施。正しく、正確な検査で音質を担保するために、音響設計者、治具設計者とともに検査方法や設備精度、効率化を検討しながら進めました。
—「音」への強いこだわりが伝わってきます。小型軽量化についても教えてください。
小型軽量化を実現するには「攻め」が必要です。「設計を攻める」と言って、イヤホンの限られたスペースの中に部品すべてを詰め込むことを指します。イヤホン自体を大きくすれば簡単に解決できますが、小さな耳にもフィットし、長時間でも疲れない着け心地を追求するためには「攻め」が非常に重要なのです。
—「設計を攻める」、初めて聞きました。具体的にどのようなことを行うのでしょうか。
メカ接着部、基板コネクター、部品一つ一つの小型化やコンマ数ミリの部品を高密度な空間に実装する手法等、さまざまな技術が開発されその掛け合わせにより、小型軽量化が実現されます。「攻め」とはまさに、目的を達成するための設計者が要素を突き詰めた検討の結晶です。
—ひとことに「小型軽量化」と言っても、多くの工程をクリアしなければならないのですね。その中でも特に生産設計に求められる役割とは何でしょうか。
「攻め」と「品質」のどちらも重視し、かつ高い生産性を持って実行していくことです。「攻め」だけでは、製品の組み立ての難易度が上がり品質悪化につながります。一方、直前まで仕様を詰めたい設計と、実際に製造を担当する生産技術の間にいる私たち生産設計は、途中変更が許されない中で、絶対に譲れない条件を整理してそれぞれの役割を調整しながら製品の完成度を高めていきます。
—両者の立場を踏まえた提案や、細かなニュアンスを伝えるうえで、対面のコミュニケーションがとれないもどかしさもあったかと思います。
特に難しく感じたのは海外事業所とのやり取りですね。通常、立ち上げ時には多くの設計者が出張しますが、コロナ禍でそうはいきませんでした。試作段階からライブカメラをつないで一つひとつ動作を確認しあったり、担当者が画面に張り付きになって問題や気になる点がないか常に見ながらフィードバックし続けたりと積極的にコンタクトを取ることで、どうにかみんなで乗り越えました。
ものづくりはチームワーク。仲間と立ち向かい、諦めなければ必ず道は拓ける。
—行動制限下にあっても「良い製品を世に出す」という同じ目標に向かって一丸となっていたのですね。実際の業務で思うように進められないとき、木下さんが大切にされていることはありますか。
もちろん、業務では先が見えない、どうにもならないような暗闇を経験することもあります。生産設計を行う中でも、さまざまな難題やトラブルに直面することがあります。そんなときこそ一生懸命、事象に向き合うことが大切ですし、そうすれば必ず解決策が見えてきます。また、上司の「問題は変化点に存在する」という助言を心に留めており、何か問題が起きても一つひとつ丁寧に紐解き、原因を特定するようにしています。
—『WF-1000XM4』が完成するまでにも、同じような場面はありましたか。
音響検査設備を立ち上げているときのこと。1000回以上繰り返しテストを行い測定にばらつきがないことを確認するのですが、どうも微妙に内蔵マイクの取得音圧が安定しないということがありました。チームメンバーで検査装置のありとあらゆる経路を見直しても異常なし。完全に煮詰まった日の夜、空調が止まり底冷えする検討室ではたと「温度と相関性がないか?」と気が付きました。結果、数度の温度差でスピーカーの音圧が微小に変化することを発見。装置を量産工場へ出荷するギリギリのタイミングでした。
—目の前の問題に向き合い、わずかな変化も見逃さなければ解決策に辿り着くということを体現されたのですね。
はい。同時に、ものづくりはチームワークがとても重要で、一人では何もできないのだと感じた経験でもありました。ソニーには挑戦を支えてくれる仲間や相談に乗ってくれる上司がいます。一人で抱え込まず、ともに立ち向かっていくことも重要です。
「想いのバトン」をつなぎ、ユーザーに感動体験を届けたい。
—立ちはだかる壁にも臆することなく、ものづくりへの熱い想いとこだわりを貫く木下さんを突き動かしているものは何でしょうか。
「創り出した製品で世界中の人の生活を豊かにしたい」という入社時からの目標です。昔から有形無形問わず、ものをつくることが好きでした。高校時代はバンドを組んでいたり、大学時代にはバンド活動の傍ら特許研究をしたりと仲間と何か新しいものを生み出すことに楽しさを感じるのです。
—共通の目標に向かって、たくさんの関わりの中でともに達成を目指すというところにつながっているのですね。最後に、木下さんにとって「ものづくり」とはどのようなものですか。
「想いのバトンをつなぐこと」だと思っています。ソニーには良い製品をつくりたいという熱い想いを持った人がたくさんいて、その仲間たちがそれぞれの持ち場で最大限の能力と情熱を込めて仕事をしています。一人として欠かすことはできず、一つの製品に本当に多くの人が携わっているのがソニーのものづくりです。例えば、「都心の喧騒の中でもノイズキャンセリングで好きな音楽に没頭できた」「ボイスピックアップでクリアに聞こえた友達の声に勇気づけられた」など、まだまだたくさんありますが、『WF-1000XM4』が持つ機能はチームメンバー一人ひとりの仕事の結果です。そのように自分が携わった製品が誰かの人生を少しでも豊かにしたり、ユーザーの感動や感情を揺さぶるものになると良いなと願っています。
<編集部のDiscover>
小さなイヤホン1つに無数の人の努力、プライド、想いが込められていることを知り、ソニーのものづくりの真髄に一歩近づいたような気がしました。最先端の技術の裏で受け継がれる、”最高”を一途に追う不撓不屈の精神。さらなる進化の足音が聞こえます。