最近、「デザイン」ってよく聞きませんか? 気になったので、ソニーのデザイン部門の方に聞いてみました。
突然ですが、最近「デザイン」という言葉をよく聞きませんか? 本屋、就活、経営の勉強。さまざまな場面でデザインという言葉が付いて回ります。
なんとなく大事なのだろうと思い、試しに絵を描いてみると、何を表すのか分からない絵しか描けない。こんな私でもデザイン時代を生きていけるのだろうか? そのような思いを抱きながらソニーについて調べていると、クリエイティブセンターというデザイン部門が存在することが分かりました。1961年からあるそうです。 どのような組織なのか、なにを考えているのか、どうすれば私のように絵心がなくてもデザイン力を身に付けられるのか、そのような思いを胸に、クリエイティブセンターの副センター長お二人に話を伺いました。
- 久藤 颯人
思っている以上に幅広い「デザイン」の領域
—クリエイティブセンターはソニーのデザイン部門とお聞きしました。「デザイン」と聞くと、見た目を美しく整えるデザインが頭に浮かびますが、実際のところ、皆さんはどのような業務を行っているのですか?
山田:エンタテインメント・テクノロジー&サービス領域の製品を中心としたいわゆるプロダクトデザインはもちろん、UI/UXと呼ばれるアプリケーションやソリューション、サービスもデザインしています。
山田:パッケージなどのグラフィックデザインに加え、近年ではコーポレートメッセージをWebやイベントなどで視覚化し、わかりやすく伝えるブランディングデザインにも深く携わっています。さらにはR&Dセンターや新規事業のチームと協業して、新規ビジネスコンセプトを立ち上げるインキュベーションデザインと呼ばれる領域もあり、非常に幅広い業務を行っています。
—幅広い分野を担当する皆さんは、どのような価値観を重視しているのですか?
山田:デザイナーによってさまざまな考え方や個性がありますが、皆が共通して大事にしているのは、Sony Design Philosophyとして掲げている「『原型』を創る」という理念と、「先駆」「本質」「共感」というキーワードに集約されるのではないでしょうか。実はこれらの文言はクリエイティブセンターが設立されてから60年以上の間に何度か見直しされているのですが、過去の大事なものを受け継ぎつつ、時代に合わせてアップデートしていくという点にもソニーらしさが表れていると思います。
*クリエイティブセンターの理念として掲げているのが、「『原型』を創る」です。
新しい価値を創造し、後々の原型となるようなものを生み出す—この理念を念頭に、デザイナーたちが何度も議論を重ね、細部までこだわり抜かれたものだけがソニーのデザインとして世に送り出されています。
ソニーグループポータル | ソニーデザインのフィロソフィー | Sony Design(ソニーデザイン)
「感心」を「感動」に昇華させるデザインの力
—最近「デザイン」という言葉をよく聞くようになり、ぜひお聞きしたいと思っていたのですが、デザインによるアプローチの優れた点はどこにあると思いますか?
前川:私は理性と感性をつなぎ、感心を感動に昇華させるのがデザインの力だと考えています。
—どういうことでしょう?
前川:技術や機能がすごい商品で、ふむふむ、なるほど、と理性的に「感心」はされても本当の意味でお客様の心を動かす「感動」までには至らないことが多いと思います。すごい技術や機能に、デザインの持つ感性的な価値が加わることで初めて「これはとても面白いね」「これはぜひ使ってみたいな」と思ってもらえる製品やサービスになるのではないかなと。
山田:デザインを担当していた歴代のトップマネジメントも、機能価値と感性価値を両立させることの重要性を語っていますよね。
前川:ソニーのPurpose(存在意義)は「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」ですが、テクノロジーだけではなく、クリエイティビティという感性的な言葉が最初に入っているのはとても大切なことだと思っています。
山田:事業部の皆さんと議論するときも、私たちは感性的な部分を大事にしています。もちろんロジックを使ったアプローチも大事ですが、やはり似たような答えになることも多い。 ただそこに、デザイナーが持つ感性というアプローチが加わることによって、非常に人間らしい解決策・突然変異のようなブレイクスルーが生まれることもあるのです。
—どうすれば、そのようなデザイン的アプローチを身に付けられますか?
山田:無理にデザイン的アプローチを身に付けよう、急にデザインを勉強しようと考えなくても良いと思います。 使う人や場所、時間など具体的なシーンを徹底的に想定もしくは観察して、利用者本人も気づいていないような課題を見つけ出すことが重要です。デザイナーがそのようなアプローチを得意としている理由はおそらく、心地良く使ってもらいたい、美しいと思ってもらいたいという発想が根付いているからではないでしょうか。
デザイン部門から見たソニー
—なるほど。では最後に、デザイナー視点でソニーを見ると、どのような組織だと感じるか、教えていただけますか?
前川:先程のPurposeの話でも触れましたが、クリエイティビティ、感性を大事にしている人が多い組織だと思います。それはデザイナーやエンジニアなどの職種にあまり関係なく言えることです。
山田:そうですよね。そしてソニーが好きで、ソニー愛が強い人が多いと思います。その愛の先にはソニーを愛してくれるお客様がいる。私たちがやっているデザインも突き詰めると「愛」だなと(笑)最近すごく思いますね。
<編集部のDiscover>
取材の終わる間際に山田さんが「デザインって愛だなと最近すごく思いますね。」とおっしゃっていました。データやロジックを重視している社会が、次はどう変化するのだろうか。さまざまなトレンドが生まれては消えていく現在ですが、仕事を楽しみ、人生を満喫する秘訣は、結局のところ捉えどころのない「愛」なんだろうなとも感じました。