コロナ禍で、ソニーの採用活動はどう変化したのでしょうか。
ソニーでは、学生の皆さんとのリモートでのコミュニケーションが「対面の代替手段」に留まることなく、
ソニーだから出来る新しい採用のかたちとなるようにチャレンジを続けています。
採用活動が佳境を迎える中でリモートワークとなり、新卒採用イベントや面接、内定者懇親会などもリモートで開催。さまざまな工夫のもとで実施された新しい取り組みについて、ソニーグループ(株) エレクトロニクス人事部門 採用部の清水舞子さんに話を聞きました。
5,000名以上の来場を予定していたソニーグループの企業活動を紹介するためのイベント「Sony Group Career Forum 2021」の中止を皮切りに、各大学や就職情報サイトが主催する就活イベントなどが次々と中止になりました。リアルイベントに参加できないために、社風や社員の雰囲気といった企業の生の情報を取りづらく、多くの学生の皆さんが就職活動に不安を覚える状況となりました。
そうした環境下でソニーは、採用イベントに向けて用意していたコンテンツを動画で配信するなど、先駆けていち早くリモートでの情報発信を実施。社員座談会の様子を複数言語にてライブ配信し、チャットを通じて学生の皆さんとリアルタイムでコミュニケーションできる機会を作りました。Sony’s Purpose & Valuesなどの企業文化を伝えるものを含めて、ソニーの魅力をさまざまな切り口から発信した結果、多くの方々からのエントリーを頂きました。
対面とは違い、学生の皆さんと同じ空間をともにしているわけではないので、まずは一方通行なコミュニケーションにならないように工夫しました。これまでの採用イベントでは、会社説明の後に質問を受け付けて回答するといった流れでしたが、オンラインの会社説明の場ではあえて会社説明のパートは設けずに、チャット機能を使ったインタラクティブなセッションをメインにしました。学生の皆さんにも、参加しながら一緒に作っているような感覚を持ってほしかったのです。また、ソニーの事業全体を知りたい方には、新卒採⽤マイページ内に会社説明動画を用意し、そちらを案内することで、きちんと会社理解をしていただけるようにしました。
今では当たり前となりましたが、一気に何千名という視聴者に配信しつつチャット機能を使って質問をお受けしたり、発言へのリアクションが瞬時に投稿されたりするのは非常に新鮮で、リモートならではの魅力も見いだせました。また、7月には、国内外約450名の内々定者を対象とした懇親会を、初めてリモートで開催しました。
1次面接から最終面接までほぼすべての選考をリモートで実施し、ウェブ面接回数は延べ数千回となります。
採用面接を全面リモートに切り替えたばかりの頃は、接続トラブルに悩まされました。学生の皆さんもソニー側もリモート面接の経験値が少なく、「音声が聞こえない」「映像が映らない」といった事象が相次ぎました。面接システムがアクセス負荷でダウンしてすべてが中断されてしまったこともありました。次の日の面接設定をさせていただいている中で、さまざまな手法を試行錯誤したのは、今から思い出しても手に汗がにじみます。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、過去にないほど国際的な移動が断絶され、グローバル採用は大きな影響を受けています。採用のプロモーション活動や選考プロセスがすべてリモートに切り替わっていく中で、オンラインコンテンツの充実だけでなく、戦略的な発信が非常に重要なポイントとなっています。また、何よりも、参加が決まったインターン生や新入社員が入国制限によって渡航できずに、予定された業務ができない状況が続いています。
こうした状況の中でも、職場社員との協同のもとで、海外にいるインターン生や内定者、新入社員に向けて、少しでもソニーについて理解、体験してもらえるようなプログラムを行っています。
時間と場所を選ばずに、一気に多数の人に情報を届けられるようになった点はよかったです。今まで頻繁に足を運べていなかった地方の学生の皆さんにも平等に情報を届けられるようになりましたし、わざわざ東京に来ることなく採用イベントや面接に参加できることは、学生の皆さんにとってもプラスに働いたのではと思います。
一方で、引き続きの課題としては、一度も来社することなく内々定となる学生の皆さんに、どれだけソニーで働くイメージや実感を湧かせられるかという点が挙げられます。毎年、内々定者懇親会をはじめ、事業部単位でも内定者向けのイベント策を実施していますが、今年の内定者の皆さんに関してはそれがますます重要になってきます。
また、採用広報に関しては本当におもしろいコンテンツを作っていかないと、学生の皆さんから見てもらえないという難しさもあります。ウェブセミナーではカメラの向こうで学生の皆さんがどんな表情をしているかがわかりませんし、今までの対面イベントでは1時間聞いてもらえていた内容も、動画だと5分もせずに飽きてしまうかもしれません。また、時間と場所の制約がなくなったからこそ、イベント会場での偶然の出会いというものは無くなりつつあります。最初から興味を持っている会社のコンテンツにダイレクトにリーチされる学生の皆さんに向けて、どうしたらソニーのコンテンツを見てもらえるのか、動画を見てもらう以前のアピールや、募集方法での工夫も必要になってきます。
一般的に、今後の新卒採用活動ではリモート化がより進み、学生の皆さんが、会社との直接的な接点が持ちづらく、就職活動そのものに大きな不安を覚えてしまう状況は、残念ながら今後も継続するかと思います。
ソニーでは、夏インターンシップを全面リモートで実施していました。学生の皆さんが求める情報を積極的に発信するとともに、インタラクションを持つ場ではあまりカチっと作り込みをし過ぎず、ソニーらしさが伝わるようなコンテンツ作りを意識したいと思っています。また、こういった状況だからこそ、今まで以上に学生の皆さんがスマートフォンなどからクイックかつ簡単に欲しい情報にアクセスできることが重要になると思っています。そういった点も意識して今後学生の皆さんに少しでもソニーのことを知っていただけるような採用プロモーション活動を進めていく予定です。
また、今後はリモート化がますます加速し、スタンダードになっていくでしょう。「対面の代替手段」としてではなく、「リモートだからできること」「リモートでしかできないこと」を追求することで、ソニーだからこそなしえる新しい採用の実現に向けてチャレンジしていきたいと考えています。
急きょ採用イベントなどがリモート開催に変わり、情報収集などもさまざまな苦労があったと思います。21年4月入社予定内定者の井上南さんにお話をうかがいました。
ソニーと接点を持ったのは、大学で開催されたソニーのOB/OGによる交流会でした。先輩社員の話を聞いてソニーに興味を持ち、2月の学生を対象に企業活動を紹介するためのイベントへ参加する予定でした。直前で中止になったのには驚きましたが、各職種の動画配信という形で情報を得る機会を与えてもらえたのは、大変ありがたかったです。他社でもオンラインコンテンツはありましたが、どちらかというと事業全体をざっくり説明するものが多かった印象です。一方、ソニーのコンテンツは事業領域ごとにかなり細分化されていたので、仕事のイメージが具体的に湧きました。いくつかの動画を見る中で半導体事業に興味を持ち、現在内々定をいただいているソニーセミコンダクタソリューションズのコースに応募を決めました。
ソニーの面接ではリモートと対面いずれも経験しましたが、個人的にはリモート面接でやりづらさを感じたことはありませんでした。むしろお互いにマスクの着用が必要とされる対面よりも、画面越しでも表情がわかる方が話しやすかったです。一方で、学生側にはリモート面接ができる環境を確保する難しさもあります。私は大学の図書館のミーティングルームを使いましたが、学生の中には、安定した通信環境の確保が難しい方もいると思います。また、リモート面接では学生と面接官は空間をともにはしていません。相手がどんな環境で話しているかがわからないので、少し不安を感じることもありました。事前の準備は必要ですね。
就活中は対面とリモート両方のイベントに参加しましたが、それぞれによさがあると思います。私は東北地方に住んでいるので、東京に行かずともリモートでイベントに参加できるのはありがたかったですが、対面では実際の社員に会えるからこそ伝わる雰囲気があります。
今欲しいのは、内定者同士の横のつながりですね。先日はリモートでの内々定者懇親会もありましたが、これから一緒に働く仲間とつながる機会をより活用していきたいと思います。