報道資料
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1996年1月11日
駆動回路を一体形成した 5.6型フルカラーLCDの試作に成功
ソニーは、400℃以下の低温プロセスで形成したポリシリコン膜を用い、ガラス基板上に駆動回路を一体形成したカラーLCDを実現できる『低温ポリシリコンTFT形成技術』を確立しました。
昨今の液晶ディスプレイは、軽量薄型・低消費電力という点で、小型携帯機器に適したディスプレイデバイスとして市場が拡大し、そして現在、高画質化が可能な"薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)"の技術が注目されています。
多結晶シリコン(ポリシリコン)TFTは、アモルファスシリコン(a-Si)TFTに比べて、高いキャリア移動度によりTFTのサイズを小さくして高精細化することができると同時に、駆動回路を一体形成することができます。しかし、通常のポリシリコンTFTは、結晶成長を行う"固相成長"や、結晶を2次成長させて欠陥を除去する"熱アニール"という方法によってキャリア移動度の高い良質のポリシリコン膜を得ており、1000℃以上の高温プロセスを用いる必要があります。この高温のプロセスでは、シリコン膜を形成する基板に融点の高い高価な"石英"を用いるため、大型化・低価格化が困難とされていました。
今回確立した『低温ポリシリコンTFT形成技術』では、エキシマレーザーを用いた"低温ポリシリコン超薄膜結晶化技術"や、プラズマCVDによる"低温ゲート絶縁膜形成法"などの技術を用いることにより、ガラス基板の使用が可能な400℃以下の低温プロセスにおいて、移動度の高いTFTを形成することができます。
本技術の確立で、a-Si TFTの形成で使われている設備、安価な大型ガラス基板を用いて、20インチクラスまでの高性能なTFTを形成することが可能となり、高精細液晶ディスプレイの大型化が容易になると期待できます。
当社はこの度、『低温ポリシリコンTFT形成技術』を用いて、"5.6型フルカラーLCD"の試作に成功しました。今後は、試作した5.6型LCDを基にして、本年秋を目標に5インチクラスのLCDの製品化を進めてまいります。
1.低温ポリシリコン超薄膜結晶化技術
融点が低いガラス基板上で、エキシマレーザーなど短波長光の照射条件を最適化することにより、50nm以下の超薄膜において、高性能なポリシリコン膜の形成を実現します。
a-Si TFTに対して100倍の高移動度が得られ、これにより、駆動回路の一体形成が可能となり、高精細化が容易になります。
低温ポリシリコンTFTとして初めて、"プラズマCVDによるゲート酸化膜形成法"を確立することで、400℃以下の低温プロセスを実現し、大型ガラス基板上での形成が可能になります。
ガラス基板に存在する不純物の影響を避けるため、ゲートを基板側に形成するポリシリコンTFT構造を開発することにより、信頼性を向上しています。
セルフアラインゲート形成技術により、"ボトムゲート型LDD(Lighty Doped Drain)構造"を開発。トランジスタのオン/オフ電流比 8桁を達成し、高コントラストを実現しています。
今回開発した駆動回路内蔵TFTプロセスでは、従来のa-Si TFTと同じマスク枚数で液晶パネルを作成することができ、同時に、a-Si TFTで必要としていた駆動ICをパネルに実装する工程が不要になります。これにより、コストダウンと高信頼性を実現しています。
ラインビームエキシマレーザ ( 308nm )
新LDD構造 ( 画素部 )