報道資料
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2007年5月24日
ソニーは、プラスチックフィルム上に有機薄膜トランジスタ※1(有機Thin Film Transistor=有機TFT)と有機EL素子を集積化する技術を開発し、世界で初めて有機TFTによるフルカラー有機ELディスプレイの駆動に成功しました。
通常、有機ELディスプレイは、硬いガラス基板の上に、シリコン半導体材料を用いたTFTを形成し、その上に有機ELの発光素子を積層させてつくります。これに対して、今回、プラスチックフィルム上に形成した柔軟性に富む有機TFTを開発することで、薄く、軽く、曲げられるディスプレイを実現しました。これまでの有機TFT駆動有機ELディスプレイの試作例の中では、世界初のフルカラー表示、世界最高精細※2(160×120画素、80 ppi、画素サイズ318μm角)の解像度を達成、曲げた状態でのフルカラー動画表示も可能としています。
本研究成果は、ソニーが次世代のフラットパネルディスプレイとして商品化を進めている有機ELディスプレイの将来技術として、薄く、軽く、やわらかいなどの特長を持ったエレクトロニクス製品の実現につながるものと期待しています。
当社は、今後も有機TFT技術の実用化に向け、新規材料・デバイス構造・プロセス・信頼性向上などの要素技術の研究開発を進めていきます。
なお、この研究成果は、米国カリフォルニア州ロングビーチで5月22〜25日に開催のディスプレイ関連学会 SID(Society for Information Display)2007 International Symposiumに採択され、5月25日に発表いたします。
1)高精細化のための上面発光方式有機EL構造と新規有機TFT集積化技術
フルカラーの高精細表示を実現するには、画素の微細化が必要でした。そこで、有機EL素子の発光層をTFTの上面に配置でき、画素同士の間隔を狭くすることが可能な上面発光方式の有機EL構造を採用しました。
さらに、高精細な上面発光方式有機EL素子を駆動するため、従来困難であった有機TFT微細加工プロセスを開発しました。有機半導体層を加工する際、溶媒を用いる従来の微細加工方法では、半導体層の有機物にダメージを与えてしまう問題がありました。これに対して、溶媒を使わずに、各画素内に設けた立体構造により半導体層の微細加工を行う新たな集積化方法を開発することで、駆動性能を損なわずに微細な有機TFTを作製することが可能になりました。これら技術の組み合わせにより、フルカラー化可能な精細度を実現しています。
2)ソニー独自開発の電極構造及び絶縁膜による有機TFTの高性能化
従来の有機TFTは、微細化を行うとソース・ドレイン電極と有機半導体層の間に生じる寄生抵抗の増大や、微細化プロセスに伴う有機半導体層へのダメージのために、ディスプレイ駆動に必要な特性を維持することが困難でした。今回、我々は有機TFT中の電流層に直接コンタクトを取り、寄生抵抗の低減を図った電極構造や、微細化プロセス後も良好な有機半導体/絶縁膜界面を形成する有機絶縁膜を開発し、特性のよい微細有機TFTを実現、微細な画素によるフルカラー表示を可能にしました。
3)やわらかさを重視した有機TFT用絶縁膜の全有機化
ディスプレイの機械的な柔軟性を確保するため、基板にはプラスチックフィルムを用い、TFTの絶縁膜には、硬質な無機絶縁材料を撤廃し、有機絶縁膜のみを採用しました。これにより、曲げた状態でも画像表示可能なことを実証しました。