報道資料
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2010年5月26日
〜独自の有機半導体材料による有機薄膜トランジスタ(有機TFT)の高性能化などで実現〜
ソニーは、極めて柔軟性が高く、細い棒状に巻き取ることが可能な厚さ80μm,精細度121ppiの4.1型有機TFT※1駆動フルカラー有機ELディスプレイを開発しました。
本ディスプレイ実現のために、独自開発の有機半導体材料(PXX誘導体)を用いて、駆動力を従来比8倍※2に向上させた有機TFTを新開発しています。あわせて、20μmの極薄フレキシブル基板上に有機TFTと有機ELを集積化する技術、巻き取りに邪魔になっていた従来の固いICチップの代わりにやわらかい有機TFTでゲートドライバ回路を形成する技術、有機TFTと有機ELの集積回路中の全ての絶縁膜をやわらかい有機材料で構成する技術の開発を行いました。これらの技術を組み合わせることで、世界で初めて※3曲率半径4mmの太さに巻いたり伸ばしたりを繰り返しながらの動画再生が可能な有機ELディスプレイの試作に成功しています。
有機半導体材料や有機絶縁膜は、溶媒に溶かすことによるインク化が容易で、塗布・印刷プロセスでディスプレイデバイスの作製を可能にします。有機材料を用いた塗布・印刷プロセスは、従来の無機・シリコン系材料で使われていた高温・真空プロセスよりも、より材料使用効率が高く、大気中で少ない工程数でのデバイス形成が可能です。これにより、デバイス製造の材料消費を抑えると同時に、低エネルギー消費、低環境負荷の実現が期待されています。今後は、さらに塗布・印刷プロセスに重点を置いて研究開発を進める予定です。
本成果は、薄く・軽く、耐衝撃性や収納性に優れたモバイル機器の実用化につながるものと期待されます。今後は、更なる有機半導体の高性能化と信頼性の向上を目指して研究・開発に取り組んでいきます。なお、本研究成果は、米国ワシントン州シアトル市で5月23〜28日に開催のディスプレイ関連学会 SID(Society for Information Display)2010 International Symposiumに採択され、現地時間の5月27日に発表します。
1. 伝導性・安定性に優れた独自開発の有機半導体「PXX誘導体」を用いた高性能有機TFT
電荷伝導性の高い構造を持ち、酸素・水・光・熱に対して劣化しにくい安定した特性をもつソニー独自開発の有機半導体「peri-Xanthenoxanthene(PXX)誘導体」を用いた有機TFTを開発し、従来の有機半導体ペンタセンを用いた有機TFTと比べて、駆動力が8倍※2になりました。有機TFTの高性能化により、画素トランジスタのサイズを小さくすることが可能となり、有機TFT駆動有機ELディスプレイとして、世界最高の精細度※4(121ppi、432×240×RGB画素 (FWQVGA))を実現しました。
ディスプレイの画素トランジスタに電圧をかける周辺回路(ゲートドライバ回路)は、従来、固いシリコンのドライバICをディスプレイパネル上に実装して形成していました。それに対して、今回、有機TFTの高性能化に伴い、やわらかい有機TFTによりゲートドライバ回路を形成しディスプレイパネル上に内蔵することができました。 有機TFTで構成したゲートドライバ回路による有機ELディスプレイ駆動に成功したのは世界初※3です。これにより、ディスプレイの曲げを阻害していた固いドライバICチップを取り除き、巻き取ることができるディスプレイの回路レイアウトが可能になりました。
ディスプレイの柔軟性を確保するため、有機TFTと有機ELの集積回路中の全ての絶縁膜に有機材料を用い、塗布プロセスで成膜しています。絶縁膜に有機材料を用いることで、高い柔軟性を確保することができました。また、有機材料の塗布・印刷プロセスは、従来の無機・シリコン系材料を用いた高温・真空を要する半導体プロセスに対し、低温、大気中、少ない工程数、高い材料使用効率でデバイス製造を可能とし、将来は、デバイス製造を低エネルギー消費化、低環境負荷化することが期待されています。ディスプレイの大画面化にも適応性の高い技術です。
上記1〜3の技術を組み合わせることで、曲率半径4mmで巻き取りながらの動画再生が可能となりました。また、耐久性にも優れ、1,000回の巻き戻しの繰り返し試験において、ディスプレイの表示性能に劣化がないことを確認しています。