地球や社会のために、ソニーができること
インタビュー全文
Q1:ESG説明会で最も伝えたかったメッセージは何でしょうか?
シッピー:ソニーでは、サステナビリティの取り組みをよりよく理解していただくために、2018年より毎年ESG説明会を開催しています。今回は、サステナビリティの取り組みがこれまで以上に経営に統合されてきていること、各事業会社、そして各社員の活動に浸透してきていることを中心にお伝えしました。各事業会社がしっかりとサステナビリティの意義を理解し、実行しているからこそ、こうした進化が生まれてきたと思っています。
志賀:そうですね。ソニーでは70年台初頭から、環境活動に取り組んでいるんですけれども、最近では本社だけではなくて、各事業においての活動が一層加速しているなという風に感じます。
Q2:ソニーが環境や社会に関する活動に真正面から取り組む理由はなんでしょうか?
シッピー:ソニーの事業は、Purposeのもと、健全な地球環境や社会があってこそ成り立っており、サステナビリティの取り組みは、持続的な事業運営のためには必要不可欠であるということが大きな理由です。
- ※Sony's Purpose(存在意義)=「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」
— 最近では、さまざまな環境や社会課題が私たちを取り巻いていますよね。
シッピー:そうですね。昨年から続く新型コロナウイルスの感染拡大や世界各地で起こっている異常気象によって、地球環境や社会が決して不変のものではないことを、ソニーのマネジメントや世界11万人の社員が改めて再認識したということがあります。
志賀:今シッピーさんが触れた、健全な地球環境がなければ、ソニーの事業は成り立たないということを、CEOの吉田さんは初めの社員向けのブログで「地球の中のソニー」という風に表現をしています。
通常、ステークホルダーというと、株主、お客様、社員などがあげられると思いますが、ソニーでは取引先や地域社会、そして地球も重要なステークホルダーの一つとして考えています。
Q3:それでは、まず環境の領域についてうかがいます。ソニーでは、どのような視点で環境活動に取り組んでいるのでしょうか?
志賀:環境に対して、グローバル企業としての「責任」を果たしつつ、ソニーの技術や事業で地球環境の課題解決にプラスの「貢献」をしていくという、「責任」と「貢献」の二つの軸で取り組みを行っています。
— 吉田さんも、ESG説明会で説明していた考え方だと思いますが、具体的にどんな取り組みになんでしょう。
志賀:「責任」の軸となるのは、2050年までに環境負荷をゼロにするというソニーの「Road to Zero」という環境計画です。実現のためにオフィスや工場での省エネの推進や再エネの導入を行っています。また、プラスチック使用量の削減のために、竹やさとうきび、リサイクル紙などを原料にしたオリジナルブレンドマテリアルという紙素材を開発し、商品パッケージに使用したりもしています。こうした活動は、商品に付加価値をもたらし、商品の魅力向上にもつながると考えています。
「貢献」の事例としては、世界で初めてAI処理機能を搭載したインテリジェントビジョンセンサーの開発があげられます。IoT時代においてデータ量が爆発的に増えることが見込まれる中、ソニーのセンサーやAI技術で電力消費低減に貢献するソリューションを提供していきたいと考えています。
- ※イメージセンサー内でAI処理を行うことで、クラウドに流れ込むデータ量の大幅な削減が可能
Q4:テクノロジーを活用した環境への貢献はソニーだからこそできることですね。エンタテインメント事業の領域においてもユニークな取り組みはありますか?
志賀:色々ありますが、例えば、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントが今年公開した映画、『ピーターラビット2/バーナバスの誘惑』での事例があげられます。映画に登場するピーターラビットやその仲間たちが、国際連合、国連食糧農業機関、国連財団と協力し、「フードヒーローになろう!」と呼びかけるグローバルキャンペーンを展開しました。
シッピー:彼らのような愛らしいキャラクターの影響によって、健康によい食品を食べる、地産地消を行う、食べ物を無駄にしない、家庭菜園を行うなど、子どもたちとその家族がフードヒーローになってくれるとうれしいですね。
志賀:そうですね。また、その他のエンタテインメント領域での貢献事例や、ソニーが独自開発をした水や空気を浄化する新素材、環境技術のスタートアップ企業への投資ファンド、拡張生態系への取り組みなどをまとめた動画も制作しています。多くの方に見ていただいて環境活動に取り組む仲間が増えるといいなと思っています。
Q5:次に人・社会の領域についてうかがいます。ソニーの人材に対する考え方を教えてください。
シッピー:ソニーでは、「人」を軸とした多様な事業を通じて、「社会」に価値を創出していくことをめざしています。その価値創造の基盤となるのが多様な人材になります。
志賀:多様性はグローバルに事業を展開するソニーの強みですし、私たちが大切にしたい価値観であるSony's Valuesの一つにもなっていますよね。
Q6:昨年来のコロナ禍で多くの人々が社会的な影響を受ける中、新たに始めた活動はありますか?
シッピー:昨年、総額1億USドルのグローバル支援基金を、二つ設立いたしました。
一つは、新型コロナウイルスで大きな影響を受けている方々への支援を目的とした、「新型コロナウイルス・ソニーグローバル支援基金」です。もう一つは、アメリカを中心にして起こった人種差別の是正や社会正義を求める動きを受けて設立した「Global Social Justice Fund」です。
— 「Global Social Justice Fund」については以前、このブログでも詳しくご紹介しているので、今回は「新型コロナウイルス・ソニーグローバル支援基金」について教えてください。
シッピー:はい。この基金を通じて、医療、教育、クリエイティブコミュニティの三つの領域で新型コロナウイルスの影響を受けている方々への支援を行っています。これまで行ってきた直接的な貢献としては、各グループ会社から国際組織やNPO等への寄付、医療機関へのフェイスシールドやaiboの寄贈、日本、アメリカ、中国の学校等へのロボット・プログラミング学習キットKOOV®(クーブ)の寄贈など、約5,500の団体に支援を展開してまいりました。
志賀:こうした基金を通じた支援活動は、ソニーの多様な社員からのアイデアや強い思いによって進められていて、まさにソニーの多様性を表していると思います。
Q7:近年サステナビリティへの取り組みをこれまで以上に強化してきた中で、会社としての変化を肌で感じている部分はありますか。今後、さらに強化していく点があれば教えてください。
志賀:吉田さんがCEOに就任した後、サステナビリティが経営戦略のコア要素として捉えられたということが大きな変化点でした。産業界においても、サステナビリティへの取り組みが加速されていく中で、ソニーとしても、引き続き、社会をけん引していく存在であり続けたいと思っています。
シッピー:この数年でサステナビリティが経営の中核になってきていると感じています。社内では、経営戦略を立てる部門との連携、外部では、投資家とのコミュニケーションが増えてきていると感じています。特に今年度は、中期経営計画にサステナビリティの課題への取り組みが含まれていますし、KPIを設定して、事業の業績評価の一部にも組み込まれるようになってきたというのは大きな変化です。
今後もサステナビリティの取り組みをステークホルダーの皆様に発信し、対話を続けて、前進していきたいという風に考えています。