「人類とこの惑星の未来のために」
- 進化し続けるソニーCSLのミッション
ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)は創設以来、研究を通じて未来を切り開き、人類の可能性にチャレンジすることに取り組んできました。設立から34年を迎えた本年、その理念をさらに推し進めて、人類のみならず惑星規模の課題をスコープに入れた幅広い活動を行うことをミッションとして掲げました。
ソニーCSLは、並外れたイマジネーションを有する研究者を擁し、想像を超える未来を創ることに貢献していく研究所です。ソニーCSL 代表取締役社長、所長(兼 ソニーグループ(株) CTO)の北野宏明は「研究をすることは、未来を切り開いていくこと」だと考えています。そして未来は、各々の研究者のイマジネーションの中に存在しています。研究者は、未来で起きることや実現すべきことの極限をできるだけ具体的かつ詳細に想像し、具現化させる能力が求められているのです。
当研究所は1988年の設立から34年間、さまざまな分野で突出した人材が集まり、無限の創造性と創意工夫を駆使した研究を通じてより良い未来を作り出すことに注力してきました。設立当初は主にコンピューターシステムや分散OS・AIの研究が行われていました。その後、サステナビリティや人間拡張(ヒューマンオーグメンテーション)など、研究領域が多様化していく中で、学術的な研究を超えて実際に行動し、現場へ赴き、場合によっては自らがシステムの変革に関与し続けながら、研究の社会還元・実装に取り組むようになりました。
「惑星規模の重要課題(Planetary Agenda)」
- それは何を意味するのか。なぜ必要なのか。
今年初めて一般公開した、ソニーCSLの研究員が進行中の研究やプロジェクトの成果・進捗状況について3日間にわたって発表するイベント「ソニーCSLオープンハウス2022(アーカイブ動画公開中)」の開催に際して、北野は創設以来の「人類の未来のための研究を行う」というソニーCSLのミッションステートメントを「人類とこの惑星の未来のための研究を行う」へ改訂することを表明しました。
北野は、人類の課題を考えているだけでは、地球全体がサステナブル(持続可能)でいることはもう不可能だと考えています。2020年初頭の新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的流行)の初期に世界規模で大規模なロックダウン(都市封鎖)が発生しCO2排出量が削減されましたが、気候変動を回避できるまでには至らず、その後はCO2排出量がパンデミック以前のレベルまで戻っています。森林伐採や汚染が引き起こした環境劣化により生物多様性が失われれば、未知のウイルスを運ぶ可能性のある野生動物と人間が接触する機会が増えることになり、将来パンデミックが発生するリスクを高めるという予測もあります。
このように直面している課題を、我々の人類文明を中心に考えるのではなく、人類文明の枠組みをも超えた惑星規模の重要課題としてとらえるべきとの思いから、北野は「私たちの取り組みも、この惑星、地球そのものの未来という、より広いスコープで考えなければならない」という結論に至りました。
ソニーCSLは、この視点で取り組む研究プロジェクトを既にいくつも立ち上げています。その一例が、有用植物が育つ生態系を人為的につくり、食料を収穫しながら生物の多様性を豊かにしていく「協生農法®」です。また、超分散型でダイナミックに再構成可能なオープンエネルギーシステムを通じて、再生可能なエネルギーによる持続可能なエネルギーを実現することを目的とした「オープンエネルギーシステム(OES)プロジェクト」という研究と社会実装にも取り組んでいます。
今回改訂されたミッションステートメントでは、今まで以上に研究員個人の力を最大限に解き放ちつつ、影響力を最大化して世界に投射し続け、志を同じくする仲間たちを作り、世の中で大きな流れを作りだしていくこと(Global Influence Projection)が示されています。ソニーCSLは、自分たちの組織の存在自体を実験、そして一つの冒険と捉えて「Dispersive Organization(拡散する組織)」と称しており、この惑星と人類文明の激変期における新たな組織のあり方を探究し続けています。
ソニーCSLオープンハウス2022
- ソニーCSLの現在と未来
3月16日から18日まで開催された「ソニーCSLオープンハウス2022」では、20以上の進行中の研究プロジェクトの発表が行われました。今年はオープンハウスを初めて一般公開したことで、「幅広い方々へソニーCSLの研究を紹介するとともに、人類、社会、そして地球の未来への貢献を一緒に考える機会にもなりました」と北野は振り返ります。
イベントは3日間それぞれに「Data & AI」、「Human Augmentation & Creativity(人間拡張と創造性)」、「Sustainability(持続可能性)」という異なったテーマを据えて開催されました。いずれのテーマにおいても発表された研究プロジェクトの多様性と深さは大きく、メンタルヘルスに寄り添う脳神経科学的リサーチや、ブロックチェーン時代における「企業通貨」、テクノロジーの活用を通した「茶の湯文化」の継承・拡張、AIがアシストする音楽制作、そして「協生農法®」など、さまざまな研究が紹介されました。
ソニーCSLは、世の中を変えるために、絶え間ない挑戦と変化を続けている組織です。「惑星規模の重要課題(Planetary Agenda)」を加えたミッションを再定義したことはそのスピリットの現れです。今年のオープンハウスでも、抜本的に変化した世界規模の観点による新しいアプローチを示しています。
ソニーCSLの描く、人類とこの惑星の未来像にご期待ください。