次世代を築く女性研究者の飛躍のために 「Sony Women in Technology Award with Nature」創設(前編)
今年3月、ソニーは世界有数の国際科学雑誌Natureをパートナーに迎え、キャリア初期から中期の女性研究者を支援する「Sony Women in Technology Award with Nature」を立ち上げました。賞の創設にあたり、自身も研究者としてのキャリアを歩んできた、ソニーグループ株式会社 副社長 CTOの北野宏明と、Nature編集長のマグダレーナ・スキッパーさんが対談し、テクノロジー分野のダイバーシティの課題や、多様な視点を取り入れた研究開発について語りました。その対談の様子を、前編・後編の2回に分けて紹介します。前編では、テクノロジー分野における女性研究者の貢献の大きさや、賞を通じてめざす次世代の研究者の支援について意見を交わしています。
「Sony Women in Technology Award with Nature」について
「Sony Women in Technology Award with Nature」は、テクノロジー分野で地球や社会にポジティブな影響を与えるような研究開発活動に取り組む、キャリアの初期から中期の女性研究者を表彰し、研究活動用の賞金(受賞者ごとに25万USドル)やネットワーキングを通じて支援する、新たな取り組みです。
女性研究者はもっと評価されるべき存在
はじめに、マグダレーナ・スキッパー(以下、マグダレーナ)さんは、賞を通じて女性研究者の貢献が改めて評価され、新たな優れた研究者が見いだされることへの強い期待感を示しました。
「公募のアワードでは、女性が受賞することはそう多くはありません。私は今から応募を心待ちにしています。キャリアの初期の女性研究者が応募し、彼女たちの経験や貢献を分かち合われることで気づきを得られると思いますし、本当に楽しみです」
これに対し、北野は、女性研究者が現代社会を形作るような画期的な技術を発明してきた歴史に触れています。
「エイダ・ラブレスのような歴史に残る例もあれば、アデル・ゴールドバーグはスモールトークやオブジェクト指向プログラミングを発明したことで知られています。スペクトラム通信システムも、ヘディ・ラマーによって発明されました。彼女と共同研究者の発明がなければ、現在の携帯電話は存在しなかったのです」
そして二人は、女性研究者が今もなお過少評価されているという認識を共有した上で、この賞を通じてその貢献を広く世に示し、その活動の可能性を広げられるように支援したいと語りました。
次世代の研究者に飛躍のチャンスを与え、可能性を広げる
さらに、北野は研究者のキャリア初期から中期の重要性に触れ、「キャリア初期段階で研究の独立性を高めることが、将来のキャリア形成や創造的な研究アイデアを育み追求することに役立つ」と主張しました。
一方、マグダレーナさんは、視点の偏りが研究のアウトプットに影響している事例を挙げ、「女性のイノベーターや技術者に力と可能性を与えることが、私たちが目にする成果やイノベーションにも、大きな影響を与える」と述べました。
二人は、こうした観点から、次世代を担う女性研究者の成長をさらにサポートするために必要なことについて、それぞれの考えを示しました。
「彼女たちが何を達成し、どのように成長していくのかをフォローすることもまた重要です。賞を通じて、彼女たちが直面し続けている問題を特定するだけではなくて、彼女たち自身を支援し、スポットライトを当て、その努力を世に示し続けることができると思います」(マグダレーナ)
「互いに助け合い、良い影響を与えあえるような、同じ志を持つ人たちとのネットワークを形成する支援ができれば、研究者にとって大きな助けになるのではないかと考えています」(北野)
Sony Women in Technology Award with Natureは、現在グローバルにエントリーを受け付けています(応募期間は2024年5月31日まで)受賞者3名にはそれぞれ賞金25万USドルとNatureを通じて自身の研究活動について発信する機会が提供されます。