Crunchyrollが目指すのは、アニメファンのための究極のサービス
世界中で日本のアニメ人気が高まる中、ソニーグループ傘下でアニメ専門のストリーミングサービスを提供する「Crunchyroll(クランチロール)」が成長を続けています。5月23日に開催された経営方針説明会では、社長 COO 兼 CFOの十時裕樹が、注力分野であるアニメにおけるIP価値最大化の取り組みにおいて、Crunchyrollが非常に重要な役割を担っていることを説明しました。注目の高まるCrunchyrollのプレジデントであるラウール・プリニに、Crunchyrollのこれまでの歩み、今年のアニメアワードに対する思い、そして、Crunchyrollの今後の展望について話を聞きました。
アニメファンのすべてになりたい
2006年に動画アップロード・共有サイトとして設立されたCrunchyrollは、さまざまな企業との連携を通じて、海外における日本アニメの代名詞的なブランドへと成長を遂げてきました。ソニーは2021年8月、Crunchyrollを買収し、2017年に買収した別のアニメ配信サービスであるFunimationとの合併を行い、サービスの拡大と発展を図りました。
プリニはこの合併が、Crunchyrollにとって大きな転換点だったと語ります。
「二つの有力なアニメ配信サービスを究極のサービスとして統合することで、手がけるアニメ作品、サービスを提供するユーザー数、対象地域、サービス内容、そのすべてが拡大しました。」
また、ソニーによる買収で、「アニメのエコシステムを支えてきた歴史と多様性に富んだ企業体の一員となれたことは、Crunchyrollにとって幸運」とも語ります。
「『クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす』というソニーのPurpose(存在意義)は、Crunchyrollのミッションを定義する上でも不可欠です。私たちは、アニメの感動を世界中のファンに届けられることに、非常にわくわくしています。」
Crunchyrollは現在、世界200以上の国と地域に1,300万人以上の有料会員を抱えています。今なお成長を続けるCrunchyrollは、一貫してアニメに特化したサービス提供を行ってきましたが、プリニはそれこそが競争の激しい映像配信サービス市場でCrunchyrollが成功している秘訣だと説明します。
「私たちは万人に向けたサービスではなく、特定の対象、つまりアニメファンのためのすべてになりたいのです。ファンダムを超えたアニメファンへのサービス提供に注力することが、私たちの差別化の要です。ストリーミング、劇場映画、ゲーム、グッズ、イベントなど、アニメとのあらゆる接点において、ファンに素晴らしい体験を提供したいと考えています。」
アニメは今後も文化の発信源の一つであり続ける
そうしたアニメファンとの接点となっているイベントが、今年で8回目を迎えたアニメアワードです。2年連続で東京開催となった今年のアワードには、世界中のファンから過去最多となる約3,400万票が投じられました。アニメ・オブ・ザ・イヤーには「呪術廻戦 懐玉・玉折」が選出されたほか、ソニーグループからは、日本のソニー・ミュージックエンタテインメント(SMEJ)傘下のアニプレックスが手掛ける『テレビアニメ「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編』が最優秀アニメーション賞、最優秀美術賞、最優秀ファンタジー作品賞を受賞しました。さらに、SMEJに所属するYOASOBIによる『【推しの子】』のオープニング主題歌「アイドル」も最優秀アニソン賞を受賞しました。
アワードは、グラミー賞を受賞したアーティストのミーガン・ザ・スタリオンや映画監督のポン・ジュノなど、ファンを代表する世界の著名人をプレゼンターとして迎え、アニメカルチャーの原動力となっているクリエイターやミュージシャン、キャスト、そして数々のアニメ作品をたたえました。
「アニメコミュニティがお互いをたたえ、認め合う姿を見ることができただけでなく、世界的なインフルエンサーや著名人が、アニメが彼らの創作活動にいかに影響を与えてきたかについて語るのを聞き、とても感動しました」と、プリニは振り返ります。「今年のアワードの様子から、アニメは引き続き世界的に大きな注目を集め、文化の発信源の一つであり続けるだろうと思っています。」
プリニはまた、今年のアワードへの素晴らしい反応と世界的な反響は、Crunchyrollの全スタッフを刺激し、2025年のアニメアワードがより盛大で、より良いものとなることを確信しているといいます。
Crunchyrollとアニメの明るい未来
CrunchyrollはSony Pictures Entertainmentと、アニプレックスによる合弁会社として運営されています。アニプレックスは、海外でも人気を博している『鬼滅の刃』や『俺だけレベルアップな件』などのヒットアニメの企画・プロデュース、『犬王』などの劇場版長編作品の配給を行うとともに、Crunchyrollにコンテンツを提供しているパートナーでもあります。アニプレックスとの連携についてプリニは、「世界中のアニメファンにとって魅力的で、多様なコンテンツを確実に提供できる形で協力できている」と評します。
一方でプリニは、他の日本のアニメクリエイターともオープンな関係であることが重要と語ります。
「日本のアニメ制作環境は層が厚く、多様で腕の立つクリエイターが、質、量ともに素晴らしいアニメを制作しています。私たちCrunchyrollは、そうしたコンテンツの全てを世界中のアニメファンにお届けする役割を引き受けています。日本の全てのアニメ制作プロダクションやスタジオの皆様とは、オープンで、良きパートナーであることが不可欠です。」
また、海外でのアニメ人気の高まりは、日本のクリエイターの「より多様でユニークな、素晴らしいストーリーを生み出す原動力になっている」とプリニは指摘します。
「より多くのアニメを待ち望んでいるファンの期待に応えられるよう、シーズンごとに提供する新しいコンテンツの数を増やすべく、私たちは日本のクリエイティブコミュニティの皆様と連携しています。」
世界中にユーザーを持つCrunchyrollは、視聴者の好みやエンゲージメントの情報をクリエイター側にも伝えています。そうすることで、全世界もしくは特定の地域のファンが望むコンテンツを、より多く制作することができるとプリニは説明します。またプリニは、今後の成長可能性が見込まれる地域として、ブラジル、インド、東南アジアを挙げ、これらの地域では、作品の劇場公開のほか、現地でのイベントなど、さまざまなサービスを提供することに注力するとしています。
最後に、プリニは今後のCrunchyrollの展望について、次のように述べました。
「私たちは、ファンがアニメの幅広さと奥深さを存分に体験できる、究極のサービスとなるように努めていきます。」
ラウール・プリニ
Crunchyroll プレジデント
ラウール・プリニは、CrunchyrollのCOOを数年間務めた後、2022年5月に同社のプレジデントに就任した。世界有数のアニメ配信サービスであるCrunchyrollのグローバル戦略の策定を行っている。