「おもしろ算数実験ワークショップ」は、学校で習う公式では計算できない“変な形”の面積が工夫することで求められることを体験し、面積を求める方法は1つではなく色々あることを学び、確率が身近なところにあることを知り、確率の特徴を使った「捕獲再捕獲法」を体験しながら、算数や数学を学ぶ楽しさを知るプログラムです。
まず、子どもたちそれぞれに、直線や曲線などいろいろな形が混ざった複雑な形をしたフレームが配られます。学校で習う公式では面積が求めにくい形をしているので、「最適化問題」「モンテカルロ法」「重さ」を使って面積を求めることにチャレンジします。
「最適化問題」では、フレームをなぞって白紙に図を写し、その線に合うように異なる形の図形ブロックを並べていきます。そして、フレームの形にできるだけぴったりブロックを敷き詰めたら、すべてのブロックの面積を足し、フレームの面積を求めます。
「モンテカルロ法」では、四角いトレーにフレームを入れて、用意された同じ大きさのたくさんの白球をフレームと四角い枠全体に向かってデタラメに投げ入れます。そして、フレームの外側と内側の白球の数をそれぞれ数えて、その数と四角い枠とフレームとの割合から、フレームの面積を求めます。
「重さ」を使った方法では、スライム(ゲル状のおもちゃ)を使います。四角いトレーに流し込まれているスライムにフレームを押し当て、内側と外側のスライムをそれぞれカップへ取り分けます。各スライムのそれぞれの重さからフレームの面積を求めます。
「最適化問題」にじっくり真剣に取り組む人もいれば、「モンテカルロ法」を何度も試してデータをとる人、そして「重さ」を使う方法で、スライムの感触に驚きながらもしっかり厳密に計算をしようとする人もいて、子どもたちは積極的にそれぞれの方法を試していきました。各方法で導き出した答えが離れてしまい、どこで誤差が出てしまったのか考えながら、再度挑戦する子もいました。
小学校で確率は勉強しないが、確率は自分達の身近なところにあることを、まず知ってもらうために、3つの実験を行ないました。1つ目は手品です。スタッフが各テーブルで手品を披露します。まずトランプに入っているカードは、ばらばらであることを子ども達に見せます。次に、子どもが無作為にトランプのカードを1枚選び、それを全員に見せます。他の子どもも無作為にカードを選びますが、何度無作為にカードを選んでも同じ数字を引いてしまうので、子どもたちは驚きの声を上げます。そもそもなぜ何度も同じ数字がでてくると驚くのでしょう?これは私たちの生活の中に「確率」という考え方が根付いているから起こる感覚なのだとナビゲーターが説明します。
2つ目は、クジの当選に関するものです。何番目にクジを引くのが一番得なのか。普段の生活で身近に起こる出来事です。これを風船を割る実験で体験しました。これはどの順番でも同じ確率であること、なぜ実際はそう感じないのかが説明されました。2つの実験から確率は身近な算数であること、自分達の感情は確率の影響を受けていることが説明されました。
3つ目の実験にはサイコロが使われました。サイコロを30回振って、どの目が何回出るか調べました。出る目にばらつきがあるものの、参加者全員の目を平均すると、だいたい1/6になることが示されました。最後に、「確率」の特徴を使った「捕獲再捕獲法」を使って、湖や山にいる魚や熊の総数といった全部捕まえて数えることのできない数の推定にチャレンジしました。「捕獲再捕獲法」とは、たとえば、大きな湖のなかにいる魚の数を計算するときに実際に使われている方法です。
1000個以上の白球が透明なボックスに入っており、この白球の数を求める実験です。まず、ボックスのなかから、カップ一杯分の白球をすくい、その数を数えます。次にそれと同数の赤球と交換し、その赤球をボックスの中に混ぜます。赤球と白球になったボックスの中身を、しっかりよく交ぜます。赤白交ざったボックスの中の球をまたカップ一杯分すくい、赤と白の球の数を数えます。最初に取った白球の数、次に取った赤球と白球の数から、透明なボックスに入っていた球の総数を推定することが出来ます。これを5回ほど繰り返すと各回で推定値が異なることが分かります。サイコロ実験の説明を受けながら、各自、平均値を求め、ボックスの中にある球の数を導き出します。「捕獲再捕獲法」のデータの集計がすむと、球の全体数が正解に近かった子どもたちが発表され、記念品も渡され、盛り上がりました。
そして、最後はワークショップの修了証授与式です。ナビゲーターがみなさんに感想を聞くと、「楽しかった!」と笑顔が返ってきました。自分たちの手で集めたデータを使って、公式では計算できない面積の求め方を学び、実際に数えられない数を如何に推定するかを知ることで、算数に対する親しみや好奇心を育てることのできるプログラムになりました。