「分解ワークショップ」は、ソニーの現役エンジニアと一緒に、テレビやパソコン、オーディオ機器などの電化製品を分解していくプログラムです。ソニー創業者である井深大も幼少期に体験した「時計の分解」が自身の科学への好奇心の原点だったと語っています。日頃から何気なく使っている機器を分解し部品に分けることによって、機器のしくみや工具の使い方を学びます。
はじめに、講師から「分解」という行為で得られるものについてのお話がありました。「分解」とは、構造を考え「分けることによって理解する」ことなのだと漢字を使って説明。対して、「破壊」とは、構造を無視して「破って壊す」ことであり、バラバラにするという行為自体はお互い似ているけれども、そこから学び取れることは全然違うのだということでした。それを聞き、子どもたちはこれからの作業に向け、気持ちが引き締まった様子でした。また、このプログラムでは、保護者の方々と協力し、ひとつの目標に向かっていく楽しさを知ったり、大人の人たちとの積極的な会話を通して学習していく体験をしてもらいたい、と語りかけました。
続いて、サポートスタッフとなる現役エンジニアの方々の紹介です。銀座のソニーショールームに務める人もいれば、携帯電話をつくっている人、ブルーレイレコーダーのプログラムをつくる人など、多種多様な部門から参加しています。ひとくちに「ソニー」と言っても、いろいろな仕事があるということを知り、子どもたちは驚いた表情でした。
分解のために用意された製品は、デジタルカメラ、ブルーレイディスクレコーダー、液晶テレビ、プロジェクターなど。その中から自分で興味関心のある製品を分解することができます。まずは、製品の動作チェック。電源を入れ、まだ正常に動作する製品だということを確認してから作業に入ります。そして、配られた「分解カルテ」に製品名や型番、シリアルナンバーなどを書き取り、ネジの予想本数も書き込み、準備完了です。
いよいよ分解のスタート。講師から説明のあったドライバーの使い方を参考に、子どもたちはネジ外しに真剣に取り組みます。作業員が製品の修理の際にどのネジから外すかを指示したマークについてなど、分解にまつわるヒントをサポートスタッフに教えてもらいながら着々と進んでいきます。分解の過程で、部品を無理やり引き剥がそうとしている子に「ダメダメ、それじゃ破壊だよ」とサポートスタッフが注意したりしています。「分けることによって理解する」を意識して、丁寧に進めていくことが大切なのです。また、専門のスタッフによって、分解の途中で動作を確認することのできた製品もありました。ノートパソコンから液晶モニタ部分を取り外して電源を入れてみるというサポートスタッフによる実演。ガラスやバックライト偏光フィルターといった各部品をバラバラにした状態で動作させながらの、その役割についてのわかりやすい解説に、子供たちだけでなく保護者の方々も興味津々でした。
最後は、ワークショップの修了証授与式。ひとりひとりステージに上がり修了証が手渡され、子どもたちと保護者の方々がそれぞれ感想を発表します。保護者の方々からは「専門家に説明を受けながらの分解が楽しく勉強になりました」「子どもも最初はおっかなびっくりの分解でしたが、最後にはドライバー使いもうまくなっていて驚きました」「スタッフのみなさんに楽しそうに接していただけたのがうれしかった」などの声が集まりました。そして、最初に「分解カルテ」に記載したネジの予想本数が実際と一致、または一本違いだった人には、賞品も渡され、にぎやかな雰囲気のなか授与式は終了。 身近な電化製品を分解することで、そのしくみを知り、さらにコミュニケーション力も育めるプログラムです。