Aスマートフォンなどの普及により、近年広く知られるようになったAR(Augmented Reality)。「拡張現実感」という日本語に訳されている通り、周囲の現実環境に情報を付加したり強調したり、時には削除したりしながら、普段目にしている現実の世界の情報を拡張させる技術のことを言います。
このARと、Sony Tabletを組み合わせ、環境について学んでもらおうというプログラムが、ARオリエンテーリング・ワークショップです。複数の参加者が1組となって、タブレットを使いながら、あらかじめ設定されたポイントをオリエンテーリング形式で巡り、環境や歴史に関するクイズに挑戦してもらいます。また、最新のSmart ARの技術と、現実の世界で実現できることについて学ぶことができます。
まずはサイエンスナビゲーターから、「データ」「情報」「知識」の違い、コミュニケーションの大切さなど、「伝える」ことと「受け取る(知る)」ことや、ARの技術を使ってどのようなことができるのかについてお話をいただきます。
その後はいよいよオリエンテーリングの説明です。オリエンテーリングの進め方や今日まわるポイントの位置、オリエンテーリングの際の注意事項、Sony Tabletの使い方などについて話を聞いたあと、一緒にポイントをまわってくれるサポートのスタッフと参加者がチームになって、スタート会場から出発です。
Sony Tablet上でARシステムを起動させ、GPSと連動した地図を見ながらポイントのある場所を探します。ポイントが見つかったら早速タブレットで写真を撮影。自分たちの撮った画像がARシステム上と同じと認識されれば、そのポイントに関係のあるクイズが出題されます。クイズに正解すると得点を獲得できます。
クイズでは、各ポイントに生息している多様な生き物たちに関する問題も出題されました。いわゆる「絶滅危惧種」に指定されている生き物たちに関する問題も含まれています。そのように身近にいる生き物たちにも環境がもたらす影響が大きいというお話を聞くことによって、あらためてエネルギーや資源を大事にすることについて考える機会を持つ子どもたちもいます。
タブレットで撮影した写真が、システム上の画像と同じであると認識されないと環境クイズに進めず、得点も獲得できないのですが、制限時間はどんどん迫ってきます。チームで話し合って効率的にポイントを巡り、なんとか難しいクイズにも次々と挑戦しているうちに、2時間はあっという間に過ぎ、オリエンテーリングは終了となります。
フィールドワークからもどってきたメンバーは、サイエンスナビゲーターよりSmart AR技術についてレクチャーを受けます。
SmartARは統合型拡張現実感技術で、SmartはSony’s Mobile Active Recognition Technologyの頭文字です。何も情報のない現実世界に潤沢で有益な付加価値情報を追加してくれる技術です。
すでに、ゲームや、地図などの情報サービス、広告などにも活用されています。本当はいないのに、映像でみるとビルの横に現れる巨大ロボットや、ショッピングモールに現れるトラなどの事例をみて不思議な気分で「うわー、すごーい」などの驚きの声を上げる参加者。どうしてそのようなことが可能なのでしょうか?
人は、視覚からはいる情報の特徴を捉え脳に記憶します。同じ状況が再現されると記憶と照合し思い出すわけですが、AR技術でも同じことをしています。カメラでとらえた情報の特徴を、物体認識、空間認識、顔認識等各種認識技術で特徴点を捉え、メモリー/クラウドにある膨大なデータと照らし合わせて、あたかも、現実にあるものとして追加するということです。
色々なところで、すでに実用されていますが、将来的には、国際イベント会場などでも瞬時に翻訳情報をモバイル端末に提供したり、お店などでも端末をかざすと商品情報をみることができるようになることが期待されています。
その後、オリエンテーリングの得点発表、表彰式。歩き回って頑張ったのが報われる瞬間です。
このワークショップでは、オリエンテーリングで、環境について学びつつ、AR技術を楽しみながら体感し、そして、これからのより楽しく、便利な世界を想像するきっかけを体験することができます。