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プレイヤーの声で攻略の楽しみをアップデート
進化する体験型アトラクション


THE TOKYO MATRIX


新宿の東急歌舞伎町タワーにオープンしたミッション攻略型のアトラクション施設、「THE TOKYO MATRIX」。開発したソニー・ミュージックソリューションズが目指すのは、リアル空間でアニメの世界に没入し、仲間と“攻略”を楽しむ新しい体験の提供です。企画段階からユーザー視点を重視し、検証と改善を繰り返しながら究極の攻略体験を追求し続けています。

ゲームの世界観にリアルな場で没入する“新しい体験”の追求

ようこそ、駅前の異空間(ダンジョン)へ——。2023年4月、「THE TOKYO MATRIX」は新宿・東急歌舞伎町タワー4階にオープンしました。

施設を運営するのは、「ふたつとない、いくつもの感動を。」をスローガンに掲げるソニー・ミュージックソリューションズ(以下、SMS)。“攻略”をキーワードに、繰り返し挑戦したくなる体験を追求しています。企画構想から施設のオープンまで、費やした時間はおよそ5年。ソニー・ミュージックエンタテインメントグループのエンタメソリューションを結集させるためにSMSが設立された当時から、プロジェクトに取り組んできました。

「これまで私たちは、さまざまな音楽・アニメイベント等の企画・運営を通じて、多様なソリューションを提案してきました。そんな私たちにとっても、長期に渡って場所を賃貸契約し、施設を運営していくベニュービジネス(Venue Business)——THE TOKYO MATRIXの開発・運営は新たな挑戦となります」(SMSビジネスクリエーションカンパニーエンタノベーションオフィス・松崎知子)

出発前の待機スペースの様子。ここで登録を済ませてから、ゲームの世界へと足を踏み入れる。

同アトラクションを通じて提供するのは、2〜3人でパーティー(共に戦う仲間)を組み、ゲームやアニメの世界観にリアルに没入していくという“体験”です。深部への侵入を拒むダンジョンを、肉体・頭脳・チームワークで攻略していきます。

「プレイヤーに攻略をどう楽しんでもらうか、また攻略以外の楽しみ方を提供し、展開させていくのか。オープン後も“施設としての楽しさ”をブラッシュアップし続けていくことが、私たちのミッションです。
そもそも私たちは、2016〜2017年頃から、“エンタメ×テック”をテーマにより新しい体験の提供ができないかと模索してきました。アニメ作品の世界観をリアルに再現するためにはどうすればよいのか——それを追求していくなかで生まれたのが、THE TOKYO MATRIXの構想です。VRを使わず、あえてアナログ要素を残したリアルな場で、お客様がいかにその世界に没入することができるか。テクノロジーを駆使しながら、自身がプレイヤーとなり、まるっとリアルに体験する新しさを突き詰めているところです」(松崎)

THE TOKYO MATRIXプロジェクトを統括するSMSの松崎知子。これまで、同アトラクションの全体統括を担い、企画、デザイン、設計、システム開発、RDC技術、PR等さまざまな部署から集まったメンバーと、10数社にのぼるステークホルダーをまとめてきた。

「稼働させなければわからない」。べニュービジネスの課題と向き合う

施設のオープンに向けて、SMSの開発チームはあらゆる状況を想定したテストを繰り返し実施してきました。しかし、開発チームだけで判断する限界もありました。

「大勢のお客様が利用してもシステムは正確に稼働するだろうか?」
「想定時間内に、来場客を待機スペースからダンジョンに入れることは可能か?」
「ゲームの難易度は適正か?」
「案内や構内説明は適切か?」

これらは、ベニュービジネス特有の課題でもあります。実際にプレイヤーを入れて本番通りにやってみなければ、システムや運用フローが適正かどうかの判断は難しい。そこで、ソニーグループの社内モニター制度を活用し、登録・エントリーからゲーム攻略体験まで、本番さながらの検証を実施しました。

さまざまな部署から、社員がモニターとして検証に参加。一般のお客様と同じ目線でアトラクションを体験。

「検証に協力いただくモニターは、社外から集めることも可能です。しかし、オープン前の体験型アトラクション施設では、どうしても情報漏洩のリスクがあります。その点、社員とそのご家族に限定したモニター制度であれば、私たちも安心して検証に取り組むことができますし、グループ会社の新事業とあって、みなさん鋭いご指摘、ご意見をくださいました。
なかでも、オープン前の検証で知りたかったのは、施設内のどこで待機時間ができてしまうのか、そしてゲームの難易度が適正かどうかです。前者については、約30分で90名ほどのお客様をゲーム内に入れることが可能と想定していたところ、実際には1時間以上もの時間がかかってしまいました。また、想定以上に簡単にクリアされてしまうクエスト(ゲーム内のクリアすべき依頼や課題)もあり、ずっと試行錯誤してきた『ゲームの難易度をどう設定するか』という壁にも、再度ぶつかりました」(松崎)

検証後、システムや運用フローを再構築。入場前の待ち時間を半減

検証の結果をもとに、開発チームがシステムや運用フローを再構築しました。直前まで細かく調整を重ねた結果、待機時間30分(ユーザー登録などスマホエントリー時間を含む)で90名をゲーム内に入れることに成功。さらに、その待機時間もプレイヤーが退屈することなく、よりゲームに没入できるよう、現在は待機スペース内のスクリーンを活用し、攻略につながる情報なども流しています。

また、難易度の調整は難航しましたが、プレイヤーのフィードバックを参考にしながら試行錯誤し、初めての方でも楽しめ、ベテランの方でも攻略のしがいがある、絶妙なバランスを探り続けています。

「THE TOKYO MATRIXではゲームの説明をするキャラクターの音声に、グループ会社の技術である音声合成を使っています。音声合成を使うことで、説明の追加や変更を自分たちでクイックにゲームに反映することが可能性です。そのため、ここの説明をもう少し詳しくしたほうがいいとか、この案内ではわかりづらいといった課題を見つけ、随時説明内容の微調整を実施しています。オープン直前でも非常にスムーズに改善が行えたのは、まさにソニーの技術力と検証のおかげです」(松崎)

検証の際には、プレイ中のチームの進行状況もスクリーンに表示。現在はこのスクリーンをさまざまな情報提供に利用している。

HCDで得られた知見を新たなエンタメの創造へとつなげていく

THE TOKYO MATRIXでの体験の向上に向けて、オープン前の検証の結果だけでなく、まさにいま楽しんでくださっているお客様のリアルな声も、現在進行形で生かされ続けています。

「攻略に向けてさまざまな工夫をし、SNSなどを通じて活発に情報交換をされるなど、お客様が想像を越えた楽しみ方をしてくださっていて、ありがたい気づきを得ることが多々あります。だからこそ、私たちももっと期待に応えたい。リアルタイムの声も聞きながら、繰り返し挑戦したくなる体験を追求し、長く楽しんでいただける施設としてアップデートを続けていきたいと思っています。
そして、私たちの最終的な構想は、リアルとオンラインが融合するようなエンターテイメント の提供です。そこにつなげる仕組みや仕掛けづくりはすでに始まっていて、いかに早くそれを実現するかが今後のミッションです。積み上げてきたナレッジを次のサービスにも活かし、新たな体験を創造し続けていきます」(松崎)