ディスプレイ表現の新たな常識を創造する
空間上にあたかも実物が存在するかのような映像再現を目指して「空間ディスプレイ」の研究を進めています。実現のためには、光線再生ディスプレイなどデバイスの進化が期待されますが、同時に、映像コンテンツを自然に再現する技術も必要となります。そこで、デバイス性能を最大限に活用するための信号処理技術や、人間の視覚特性を考慮して各種コンテンツに最適な視点生成・描画をする技術の開発に取り組んでいます。快適で自然な空間映像を再現することで、ディスプレイ技術の進化に貢献していきます。
空間や物体を映像として撮像・制作・編集・伝送する技術が急激に進歩する中で、この空間や物体の情報を表示するディスプレイの実現が強く望まれています。本テーマでは、スクリーンを感じさせない映像表現や光線を正確に再生する光線制御技術により、あたかも実物が存在するかのような映像体験を目指しています。このような新しい映像表現方法で、これまでの平面ディスプレイではできなかった、親近感・信頼感のあるエージェントアバターの表示や、リモートオペレーション・リモートコミュニケーションなどを可能にします。
小型軽量で低消費電力かつ屋外でも視認性の高い光学モジュールを開発し、ハンズフリーでのリアルタイムの情報提示を可能とするSmart Glassを実現します。セキュリティや自動翻訳などのBtoB用途のほか、旅先でのナビゲーションやお知らせ告知など場所に由来した情報を提示するCE分野の用途展開を進めています。また、拡張現実技術を使って実空間と虚像を融合したゲーム体験や、チームでデザインした創作品を実寸大で確認するクリエイターツールなどの用途で使われるAR Glassも開発を進め、現実世界をシームレスに拡張するMixed Realityの実現を目指しています。
ソニーのマイクロ有機ELディスプレイは、独自の有機EL技術と半導体シリコン駆動技術によって、超小型・高精細でありながら、高コントラスト、広色域、高速応答性能を実現。きめ細やかな映像や、より自然な色再現、階調特性、優れた動画特性を可能にしました。マイクロ有機ELディスプレイはデジタル一眼カメラ用電子ビューファインダ(EVF)やヘッドマウントディスプレイ(HMD)などに搭載され、高い評価を得ています。今後は仮想現実(VR)、拡張現実(AR)向けの小型ディスプレイとして幅広い用途で採用されることが期待されます。
近距離空間に実際に触れられるかのような高輝度・高精細・自然な奥行き感のある映像を表示することで、自然に映像にインタラクションできるMR(複合現実)の世界を実現するシースルーアイウェアディスプレイを開発しています。要素技術は、マイクロデバイスでスキャンされたレーザービームを観察者の瞳孔を介して網膜に直接照射する“フリーフォーカス網膜直描方式”です。映像が観察者から遠方の固定面に表示される従来のシースルータイプのアイウェアディスプレイと異なり、映像をユーザーの手の届く範囲内の近距離でも投影することができる点に大きな特徴があります。