Initiatives

優れた外部研究者やベンチャー企業との協業

ソニーの未来につながるイノベーションの“種”

2020年4月22日

  • 鈴木 良太

    ソニー株式会社
    事業開発プラットフォーム
    イノベーションファンド室

2016年にソニーのコーポレートベンチャーキャピタル※として設立されたソニーイノベーションファンド(以下、SIF)。優れた外部の研究者やベンチャー企業に投資し、事業を支援、ソニーグループとの協業により、新規事業の発掘や技術革新を加速させる取り組みです。

その狙いについて、SIFメンバーの一人、主に欧米の案件を担当する鈴木は言います。「一つは将来のソニーのビジネスの種となるきっかけを見つけること。もう一つは、外部との交流を通じて、外で起きているイノベーションを学ぶことです」。「具体的な活動としては、まず、 “インダストリアルIoT” “モビリティ” “eスポーツ” “スポーツテクノロジー” “マテリアル”“量子コンピューティング”といたフォーカスする分野を設定。日本・欧米・イスラエルのチームが、これに基づき世界各地で投資先候補を発掘します。投資先を選定した後は、定期的に対話を重ね、長期視点で事業を支援していきます」。投資先との協業は、ソニーの技術力強化はもちろん、関係する社員の刺激にもなるのだそう。「企業規模が拡大するほど組織としての動きは鈍くなってしまう中で、ベンチャー特有のスピード感や、アンテナ感度の高さなど学ぶことは多いです」。他のコーポレートベンチャーキャピタルの違いについては、2つの点があげられると鈴木。「一つは、多様な技術を取り込めること。ソニーの事業領域の幅広さは、技術革新の芽の豊富さでもあります。もう一つは、社内に多くの“目利き”がいること。あまたのベンチャー企業の中から投資先を選定する際に、検討中のベンチャー企業やその技術の新しさ、ビジネスとの親和性を、専門領域の近い社員に相談しています。現場の生の声をいただけるのは大変ありがたいです」。

一方で、投資先の選定基準は技術の新しさだけではないのだとか。「なによりも大切なのは“人”です。“イノベーション”を起こすには圧倒的な熱量が不可欠ですが、それは人を見ればわかります。志が高く、”熱い”起業家の方々との出会いは私自身、とてもワクワクしますし、勉強にもなります」。

SIFの今後について鈴木はこう語ります。「正直、成功も失敗もまだだと思っています。協業につながった事例も出てきてはいますが、まだまだこれから。一つひとつの事業の芽を丁寧に育て、ソニグループの新しい事業につながるイノベーションの一翼になれれば嬉しいですね」。

※ 事業会社が、自社の事業内容と関連性のある新興企業(ベンチャー企業)に投資し、本業との相乗効果を狙う活動組織のこと。

主な投資先

現在、SIFで投資しているのは約60社。その中から4社を取り上げ、
事業内容や各社からのコメントをご紹介します。

Aroma Bit, Inc.(アロマビット)

アロマビットは、これまで人の感覚でしか判断できなかっ たニオイを可視化し、革新的な製品およびサービスの企画、開発、製造、販売を行っています。自社開発した小型ニオイセンサーでは、ニオイのデジタルデータ化が可能に。ニオイの届かない遠く離れた地や、インターネット上でもニオイを知ることができます。現在、さまざまな分野への当技術の展開を検討しています。

「身の回りのどこにでも存在する、ニオイ・カオリの世界。当社のニオイセンサーは想像力次第で、多くの新たなプロダクトやサービスにつながるはずです。しかし、当社だけで実現できるプロダクトやサービスに は限界があります。そこで、イノベーティブでクリエイティブな人材とインフラを有するソニーグループとの 共創を通じて、より早く深く広く、ニオイが可視化された世界を実現できることを期待しています。」

代表取締役社長 黒木 俊一郎氏

METCELA(メトセラ)

メトセラは、心不全向けの再生医療等製品の研究開発を行うバイオベンチャーです。現在、一度低下した心機能を大きく回復させる治療薬は存在せず、有効な治療手段も限られる中、当社が独自に発見したVCFという細胞を心臓の組織内に投与することで、心筋細胞の増殖促進が可能に。「心不全治療に、革命を起こす。」を使命とし、世界でも増加の一途を辿る心不全患者への細胞医薬品を開発しています。

「2018年8月にSIFより「Series A」への投資をいただきました。現在は、定期的にアドバイスもいただきながら、治験に向けた最後の準備を行っているところです。事業展開の考え方や、イノベーション創造を実現する研究開発のありかたなど、多くのことを今後も学ばせていただきたいと考えております。」

代表取締役 岩宮 高紘氏

Tracklib Holdings AB(トラックリブ)

トラックリブは、サンプリング用楽曲を扱う世界初のデジ タルストアです。音楽業界で最も複雑な課題の一つは、サンプリング用楽曲の入手が難しいこと。当社は、プロ デューサーやアーティストが世界中のサンプリング用楽曲に自由にアクセスできる上、合法的かつ手頃な価格で楽曲入手を可能にするサービスを提供。音楽ライセンスのグローバル市場をめざしています。

「トラックリブは、サンプリング用楽曲を扱う世界初のデジ タルストアです。音楽業界で最も複雑な課題の一つは、サンプリング用楽曲の入手が難しいこと。当社は、プロ デューサーやアーティストが世界中のサンプリング用楽曲に自由にアクセスできる上、合法的かつ手頃な価格で楽曲入手を可能にするサービスを提供。音楽ライセンスのグローバル市場をめざしています」

CEO パー・アルムクヴィスト氏

Digilens(デジレンズ)

デジレンズは、世界をリードする導光板ディスプレイ技術のプロバイダーです。当社独自のフォトポリマー素材、設計ソフトウェアおよびプロセスを強みに、目の前に地図を表示しバイクや自転車を運転できる片眼鏡型デバイスなど、最高クラスのARデバイス「透明ホログラフィックディスプレイ」を開発してきました。AR時代に向け、デジタルと現実の世界のイメージを融合させたディスプレイの実現に挑みます。

「ソニーはエレクトロニクスとエンタテインメントのリーダーです。デジレンズは、私たちのディスプレイ技術の活用を通じて、ソニーの関連部署そしてソニーのお客さまへのプレゼンスと影響力をより高めていきたいと思います。」

CEO クリス・ピケット氏

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