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AI技術の可能性を解き放つために、
世界中の優れたAI研究者やエンジニアを魅了していく
Sony AIは、米国や欧州、日本に拠点を持つ組織として設立され、今年4月にはソニーグループの100%子会社となりました。ソニーグループの関連事業と連携することで、ソニーのAI技術ポートフォリオを独自のやり方で拡大することを目指しています。Sony AIのCOO、ミカエル・シュプランガーとSony AI ZÜrichのディレクター、ペーター・ドゥールに、それぞれのミッションや考え、Sony AIの研究開発について聞きました。
プロフィール
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ミカエル・シュプランガー
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ペーター・ドゥール
ソニーグループ協働で推進する
3つのフラグシップ・プロジェクト
──Sony AIが設立された目的と、会社のミッションを教えてください。
シュプランガー:私たちは、「AIで人類の想像力とクリエイティビティを解き放つこと」をミッションとして掲げており、とりわけ、世界中のアーティストやクリエイターの想像力とクリエイティビティをAIで高めることができると考えています。このミッションは、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というソニーのPurpose(存在意義)にも通じます。
現在、ソニーグループの各ビジネスユニットやR&Dセンターと連携しながら、ゲーム、イメージング&センシング、ガストロノミーのそれぞれの領域において、3つのフラグシップ・プロジェクトを進めています。各事業や研究開発で蓄積された技術を結びつけ、そこに私たちSony AI独自のAI技術で付加価値を加えていきます。ゲームとイメージング&センシング事業は、ソニーの成長を牽引するビジネスであり、ソニーにとってまったくの新領域であるガストロノミーは、さまざまな技術探索の可能性を秘めています。同時に、ソニーが持つアセットの拡大と将来的な成長を視野に、新たなフラグシップ・プロジェクトも前向きに計画中です。
──なぜ、ガストロノミーがSony AIの取り組みに重要なのでしょう。AIとどんな関係があるのでしょうか?
シュプランガー:ガストロノミーとAIは、ソニーの新たな活動領域となり得る大きな可能性を秘めています。実は、ソニーとガストロノミーの間には歴史的なつながりがあります。古くはソニー設立以前、ソニー創業者の一人、井深大の研究所で製造されていた電気炊飯器です。また1960年代には、東京初の本格フレンチレストラン、「マキシム・ド・パリ」の支店が銀座ソニービル内にオープンし、注目を集めました。
そして現在、私たちはAIとロボティクスをガストロノミーに取り入れようと試みています。このプロジェクトで取り組むものは2つ。一つは、ヘルシーで環境に優しく、それでいておいしい新たな料理をシェフや職人が創作することを手助けするAI技術の開発。もう一つは、レストランや家庭の新たなツールとして、おいしい食事を用意するロボットの開発です。いずれも、ソニーのセンシングやロボティクス、独自のAI技術など、強みとする技術があるからこそ、取り組めると考えています。
──AI研究や技術応用の最前線で活躍し、ソニーらしさを発揮するために、Sony AIはどのような戦略を立てていますか。
シュプランガー:AIに関する研究開発は急成長を遂げている領域で、今まで以上に競争が激しくなってきています。こうした中で、「Sony AIはどのように競争優位性を確立していくのか」といった質問をよくいただきますが、答えは非常にシンプルです。世界中の優れた人材に来てもらい、刺激的で革新的なプロジェクトに取り組める環境を用意することです。Sony AIは、ゲームやイメージング&センシング、音楽や映画、エレクトロニクス事業などソニーのアセットを活用したプロジェクトに取り組むことで、AIの研究開発においてグローバルで存在感を発揮していきます。AI研究者が、このような多分野にまたがる領域のクリエイターと密に連携しながら、自分の研究に集中できる随一の環境がソニーなのです。
AIは、金融サービスからセンシング、エンタテインメントまで、ソニーグループのあらゆる事業領域に貢献し、適用できるテクノロジーです。直近でソニーは、AI処理機能が搭載されたインテリジェントビジョンセンサーを発表しましたが、AIにより、ソニーはセンサーを製造するだけでなく、AIを融合したセンシングソリューションを提供できるようになります。たとえば、次世代の車や産業用ロボット、調理機器など、さまざまな用途での支援ができる可能性があります。映画や音楽、ゲームなどのコンテンツ制作においても、AIが画期的な役割を果たし、より多くの人々がテクノロジーを通じて自分を表現できるようになっていきます。AI技術はクリエイティビティの形を変え、音楽やゲーム、ガストロノミーにも、今までになかった新しい領域が生まれると考えています。
そして、ソニーのクリエイティビティを刺激し、グループ内の事業が迅速に最先端のテクノロジーを取り入れることができるよう、Sony AIは外部パートナーとの連携も積極的に進めていきます。AI技術を開発し、活用していくことは、Sony AIだけのミッションではなく、ソニーグループ全体にとっても大切な目的です。グループ全員で一丸となって、ソニーを世界で最も優れたAI技術を活用する会社にしていきたいと思っています。
次世代AI技術の黎明期
──Sony AI ZÜrichでは、どのようなことに取り組んでいますか?
ドゥール:Sony AI ZÜrichでは現在、ソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS)で開発された新しいセンサー技術と、最新の機械学習手法やロボットアクチュエーターを組み合わせるための取り組みを行っています。新たな学習・制御アルゴリズムや、センサーデータを適切に処理するコンピューターハードウェアの開発により、SSSのセンサーが持つ可能性を最大限に引き出すことができれば、工場の自動化や自動運転、ドローンなどの分野で新たな応用の可能性を切り開けると信じています。
──未来のAI研究開発はどのようになると考えていますか?
ドゥール:現在のAI研究開発は、事前にラベル付けされた学習データを使用する、ディープラーニングベースによる識別技術に大きく影響されています。しかし、次世代のAIシステムでは、そのようなデータを事前に手をかけて用意する必要はありません。たとえば、シミュレーションを用いた計算などによって、必要なデータが生成されます。また、ロボティクスの領域ですが、外部環境と相互に作用することでデータの収集を行います。ですので、AIとロボティクスをまったく別の研究テーマとして扱うべきではないと考えています。
また、近い将来には、AIの学習アルゴリズムが大型サーバーによる制限を受けることもなくなります。センサー側でアルゴリズムの計算が行われることで、レイテンシーの低減や消費電力の削減、プライバシーの強化が行われ、新しいアプリケーションの提供が可能となります。