サステナビリティ

余剰バイオマスを利用したサステナブルな素材

近年、水や空気の環境浄化から、洗浄剤などのボディケア製品まで、石炭やヤシ殻を原料とした活性炭が吸着材として多く使用されています。
ソニーはバッテリー電極材料の研究開発をしていた中で、籾殻が持つ独特な微細構造を発見し、優れた吸着特性を持つ
新しい植物由来の多孔質カーボン素材*1 Triporous™(トリポーラス™)を開発しました。
籾殻は日本だけで年間約200万トン、世界中では年間約1億トン以上も排出されており、
トリポーラスはこの余剰バイオマスを活用することで、環境に配慮した循環型社会への実現にも貢献します。
また、トリポーラスは公益社団法人発明協会主催の平成26年度全国発明表彰において「21世紀発明奨励賞」を受賞しています。

  • *1 微細な空孔が非常にたくさんあり、その空孔に物質を吸着させる材料。

持続可能な開発目標(SDGs)への貢献

私たちはトリポーラスを通じて、社会課題の解決に取り組み、国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)に貢献します。

Triporous
SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS

ソニーはトリポーラスを通じて持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています

1. 余剰バイオマスである籾殻を利用することで循環型社会の形成に貢献します(目標12)

米の籾殻は日本で約200万トン、世界で1億トン以上排出されている余剰バイオマスです。
1トンの籾殻から約100kgのトリポーラスが製造可能です。
世界中で大量に排出されている籾殻をリサイクルすることにより、循環型社会やサーキュラーエコノミーの実現に貢献します。

光合成による稲の成長と排出される籾殻、それを利用したトリポーラスの循環

該当する目標とターゲット

12 つくる責任 つかう責任

目標12:つくる責任 つかう責任
ターゲット12.5: 2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用および再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。

2. 籾殻の廃棄による大気汚染物質と温室効果ガス排出の低減に貢献します(目標11, 13)

国連食糧機関によると、現在世界で年間4億トン以上*2 籾殻を含むバイオマスが焼却によって処理されています。
また気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、バイオマスの焼却は気候変動の原因である
温室効果ガスや大気汚染の原因であるPM2.5の発生源となっています*3
ソニーはトリポーラスの製造におけるライフサイクルアセスメント(LCA)を行うことで、環境負荷の定量化を行っています。
10kgの籾殻から1kgのトリポーラスを製造することは、同じ量の籾殻を焼却廃棄する場合と比較して、温室効果ガスの削減とPM2.5の大幅な低減が期待できます。
ソニーは籾殻の新しい使い方としてのトリポーラスを世界に拡げることで、大気汚染の改善と気候変動の緩和に貢献します。

  • *2 出典元:FAOSTAT - Food and agriculture data
  • *3 出典元:IPCC Special Report on Climate Change and Land
トリポーラスおよびトリポーラス製品のライフサイクル

PM2.5排出量(g)*4,5

PM2.5排出量のグラフ

温室効果ガス排出量(kg-CO2eq.)*4,5

温室効果ガス排出量のグラフ

温室効果ガス排出量(kg-CO2eq.)

温室効果ガス排出量のグラフ
  • *4 参考文献:Frontiers in Energy Research, 8 (2021)
  • *5
    ISO14040のLCA手法を用いて、トリポーラス1kgの製造における温室効果ガスの排出量を以下の条件で算定した。
    • 機能単位は、トリポーラス1kgの製造とした。
    • 算定範囲は、籾殻の回収と輸送~粉砕~ペレット製造~炭化~シリカ除去~賦活処理までとし、トリポーラスの製造後の製品輸送は算定対象外とした。
    • 籾殻の回収と輸送~粉砕~ペレット製造~炭化~シリカ除去の工程はインド、賦活処理は日本での実施を想定して算定した。
    • 原材料の籾殻は、米の生産における副産物であり、飼料、肥料、土壌改良材などにも利用されるが、代替物の同定が困難であるため、環境負荷を持たないものとして扱った。
    • バイオマス由来のCO2排出量を算定に含めた。
    • 一部、植物が成長過程で吸収したCO2は固定化されていると想定して算定した。
    • シリカ除去の工程で発生する水ガラスは副生成物として扱い、重量配分を行ない算定した。
    • 算定には、IDEAv2.3を利用した。

該当する目標とターゲット

11 住み続けられるまちづくりを

目標11: 住み続けられるまちづくりを
ターゲット11.6: 2030年までに、大気の質および一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものも含め、都市の一人あたりの環境上の悪影響を軽減する。

13 気候変動に具体的な対策を

目標13: 気候変動に具体的な対策を
ターゲット13.1: 全ての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する。

3. トリポーラスの吸着特性により、水や空気の浄化に貢献します(目標3, 6, 11)

世界保健機関(WHO)の報告によると、世界中で21億人の人々が安全な水の確保に苦しんでおり*6
微小粒子状物質PM2.5などの大気汚染の拡大により年間約700万人が死亡している*7と報告されています。
トリポーラスはその独特の微細構造により、従来技術では吸着しにくかった分子量の大きな物質を容易に吸着できる特性を有することに加え、
低分子化合物に対しての高速吸着が可能です。
具体的には、大きな有機化合物やたんぱく質、ウイルスなど水中の汚染物の吸着に優れます。
また、PM2.5の原因である揮発性有機化合物(VOC)にも高い吸着性能を示します。
トリポーラスを通じて、世界の安全な水の確保や、大気汚染の改善に貢献します。

  • *6 出典元:2.1 billion people lack safe drinking water at home, more than twice as many lack safe sanitation
  • *7 出典元:7 million premature deaths annually linked to air pollution

ウイルスの除去性能

  • WHOの基準水(protocol #6)を使用して評価
ウイルス濃度のグラフ

揮発性有機化合物(VOC)の吸着性能

  • WHOの標準評価方法(SOP 09)にて評価
1gあたりのVOCの吸着量のグラフ

該当する目標とターゲット

3 すべての人に健康と福祉を

目標3:すべての人に健康と福祉を
ターゲット3.9: 2030年までに、有害化学物質、並びに大気および土壌の汚染による死亡および疾病の件数を大幅に減少させる。

6 安全な水とトイレを世界中に

目標6:安全な水とトイレを世界中に
ターゲット6.1: 2030年までに、すべての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ公平なアクセスを達成する。ターゲット6.3: 2030年までに、汚染の減少、投棄の廃絶と有害な化学物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減および再生利用と安全な再利用の世界的規模で大幅に増加させることにより、水質を改善する。

11 住み続けられるまちづくりを

目標11:住み続けられるまちづくりを
ターゲット11.6: 2030年までに、大気の質および一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものも含め、都市の一人あたりの環境上の悪影響を軽減する。

4. オープンイノベーションで開発と事業化をグローバルで推進します(目標17)

新素材トリポーラスを社会実装するために、国内外の様々な研究機関や企業とのオープンイノベーションをグローバルで推進します。

該当する目標とターゲット

17 パートナーシップで目標を達成しよう

目標17:パートナーシップで目標を達成しよう
ターゲット17.17: さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推奨する。