ソニーの音楽ビジネスは40年前のこの新聞広告から始まった
1967年10月、この年の6月に日本コロムビアとの契約が切れた米国CBS社は、ソニーとのレコード合弁会社を強く希望、両社の交渉が開始された。ソニーとしてもかねてよりソフトウェアの分野に進出したいという希望があり、音響製品を強化していくためにも自社ブランドのレコード製作を手がけなければならないと考えていた矢先のことであった。
交渉はスムーズに進み、12月には合弁会社設立の調印が交わされ、ただちにCBS、ソニーの折半出資による新会社設立の申請を行った。そして、翌68年2月、政府の認可がおり、3月11日、ここに現在のソニーミュージックグループの母体となる「CBS・ソニーレコード株式会社」(以下CBS・ソニー)が誕生した。
ところで、前年の67年7月、日本の経済力の拡大に連れて強まる諸外国からの要請に対して、政府は資本自由化に踏み切った。レコード製造業も、外資の比率を50%まで認める業種に含まれており、CBS・ソニーはこの自由化第1号となった。
会社設立直後の3月17日、CBS・ソニーは朝日新聞の全国版に全7段の型破りな人材募集広告を掲載した(写真)。
「CBS・ソニーを築く人を求めます」——応募資格は国籍、年令、性別、学歴、身体障がいの有無を問わないという、まったくの無制限。履歴書と経歴書に写真を添え、「私はCBS・ソニーで何をするか」という400字詰原稿用紙4枚以内の作文を出すだけである。この異例の人材募集に14歳から70歳までの男女7,000人が全国から応募した。採用人員80人に対してである。
かくして7月、全国に7営業所を開設し、いよいよ本格的な営業活動を開始、8月21日には記念すべき第1回目の新譜を発売した。CBS・ソニーは、単なるレコード盤のプレス、販売という、それまでのレコードメーカーのビジネススタイルを打ち破っていった。すなわち、プロダクション部門を確立し、アーティストの発掘、マネジメントを自社で行い、当初からあった著作権部門とともに、すべての権利をCBS・ソニーおよびグループ内に留保するビジネスモデルをつくりあげていった。そして、営業開始10年後の1978年には早くも売り上げ日本一のレコード会社に急成長する。
創業40周年の今年、ソニーミュージックグループの従業員数は約1,400人。彼らは今日も新たなミュージックシーンを開拓し続けている。