ソニーセミコンダクタソリューションズ(株)
モバイルシステム事業部
統括部長
2005年に入社し、CMOSイメージセンサーの開発に長年エンジニアとして携わり、目の前の課題をやり遂げることを積み重ね、地道に技術の進化に取り組んできました。これまでの自分の仕事を振り返ってみると、私たちの技術を通じ、10年前よりも世の中の映像文化が豊かになってきた実感が強くあります。CMOSイメージセンサーは、スマートフォンなどのカメラにも搭載される、現代生活に不可欠な半導体製品です。CMOSイメージセンサーの技術進化により、誰もが格段に美しい写真や映像を撮ることができるようになりました。クライアントから「ソニーは(イメージセンサーによる)映像文化を創ってきた、また、これからも新しい映像文化を創り上げていく中心的存在である」と大きな期待を頂いています。これは大変なプレッシャーながらも、仕事を続ける上で大きなモチベーションとなっています。ソニーには組織やルールにとらわれずに一緒に動いてくれる人たちがたくさんいます。私が手掛けたプロジェクトの中に、顔認証技術に採用されている近赤外・測距イメージセンサーの開発がありました。これは、業務外のプロジェクトとして始まったものですが、今では重要な技術の一つとなっています。何かに挑戦すると新しい発見があるもので、たとえプロジェクトの本筋からそれても、新たな興味を見つけると夢中になってしまうのがエンジニアの習性です。長いものづくりの歴史があるソニーでは、社内から生まれた小さな発見・発明を大事にする文化があり、業務外のことでも、自由に意見を交換でき、誰もそれを否定しない空気があります。自由な意見交換の場から賛同を少しずつ得ていく、気づいたらどんどん人が集まり、最終的には正式なプロジェクトになっているケースも少なくありません。これはソニーが誇れる企業文化の一つです。一方、自由でわきあいあいとした職場風土とともに、ソニーのエンジニアには有言実行に対する強い意思、そして「自由」と「責任」が表裏一体であることを共通認識として持っているストイックな面もあります。エンジニアは自ら課題を発見し、その解決に取り組み、最後までやり切ることが求められます。
2016年から2020年までシリコンバレーと呼ばれる、米国カリフォルニア州サンノゼにあるオフィスに赴任しました。新卒で入社してから長年同じ環境で働いていたので、海外からソニーを見る貴重な機会となりました。バックグラウンドが異なり、さまざまな価値観を持つ人々と働いた経験からは大きな学びを得ました。例えば、シリコンバレーではアサーティブコミュニケーション*という考え方のもと議論が繰り広げられました。日本では沈黙が同意を示す場面も多いですが、これはシリコンバレーでは「意見がない」「アイデアがない」「考えていない」と解釈されるため、積極的に意見やアイデアを表明することが求められました。意思表明をしないと、信頼関係どころか存在すら認識してもらえないのです。反対に、積極的に意見や質問を投げかけ、情報を発信すると「自分の考えを持つ人だから、一度意見を聞いてみよう」と認知され、自然と情報が入ってくるようになります。また、シリコンバレーでは時間は貴重な資産として認識されおり、皆が目的や方向性が不明確な時間の使い方を避けたがります。会議でも、開催目的が不明瞭、あるいは方針に沿わない会議は途中で打ち切られることもありました。そのような経験から、今は会議に目的を持つこと、業務時間の効率を高めることを強く意識して働いています。また、海外にいると日本の社内組織とのコミュニケーションに苦労することもありました。責任者の明確化や業務に沿った組織の構造の必要性など、日本で働いているときには感じなかった課題に直面しました。それらに対応するために、業務改善や組織構造の見直しに取り組み、クライアント側から見ても情報の流れがスムーズかも考慮し、グローバル企業として的確な体制の構築を進めています。
*自分の主張を明確にする際に一方的な主張を押し通したりせずに、相手を尊重しながら適切な方法で自分の気持ちを伝える事を重視するコミュニケーションの手法の一つ
私たちが長年開発に取り組んでいるCMOSイメージセンサーは、すでに40年ほどの歴史があります。世界中のスマートフォンに私たちの製品を使っていただき、撮影を通じて「感動」を提供できることは非常に醍醐味です。一方で、従来築き上げていきたビジネスに加え、私たちは会社全体で常に新しいことへチャレンジするべきだというマインドはいつもあります。組織や会社が大きく成長した分、コミュニケーションや、部署を超えた交流の難しさの解決に向けた改善や取り組みは重要です。組織を超えたコミュニケーションを活性化させることで、多様な意見が交錯し、異なるタイプの人材が組み合わさり、才能ある多くのエンジニアが「適材適所」でその能力をフルに発揮して活躍することができると信じています。多様な人材の中でチームビルディングに取り組んだ私の経験やスキルが、ソニーが次世代においても世界にイノベーションを提供する企業であり続ける一助になるよう、私もチャレンジしていきたいと思っています。