第2回は、ソニーグループの人材育成の現場にスポットを当てます。
ソニー本社5階にある社員同士の学び合いの場「PORT(ポート)」や研修などにおける新たな活動を中心に、
社員の自発的な学びと成長を促す多様な取り組みについてお届けします。
ソニーには、社員のチャレンジや自立性を大切にする組織風土があります。多様性に満ち溢れた事業や組織の中で、高い専門性を持った社員一人ひとりが有機的なつながりの中で互いに刺激し合いながら自立的に成長していくことが、人材や組織の成長につながると考えます。
これまで階層別に人材育成研修を実施してきましたが、そのよい部分は残しながら、成長意欲の高い個々人が自らの意思でソニーの場を使い成長していけるような「能動型」施策を、今後さらに広げていきます。
コロナ禍でPORTの取り組みや研修などのリモート化が進み、より多くのソニーグループ社員が物理的な制約を超えて学びと成長の機会を得られるようになりました。意欲の高い人材が自分の意思で様々なコンテンツを選択できることはリモート施策の大きなメリットです。ソニーの強みを最大限に生かした人材育成および社員の成長の仕組みの構築に向けて、コロナ禍の変化をチャンスと捉え、さまざまな育成施策の変革を継続的に進めていきます。
ソニーが提供している、学びと成長の場におけるリモートでの知の共有活動について、担当社員に話をうかがいました。
高木さん(以下、敬称略):新型コロナウイルス感染症対策のため一定の期間、PORTを閉館していました。しかし、PORTのコンセプトである人材開発や探索の場としての役割を維持させるため、いち早くリモートでの活動に舵を切り、8月末時点で大小十数回のイベントを実施しています。イベントの内容は、Microsoft Teamsの使い方や動画の作成方法といったリモート化が進む今の環境に役立つもの、オンライン大学院、話題の書籍「シン・ニホン」、「2050年のキャリア」といったテーマに関する講義など多岐にわたり、各回非常に盛況でした。
Teamsを使用したリモートイベント後の懇親ミーティング併設や、動画を事前に見てからの反転学習型、リアル含め複数手法とのハイブリッドなど、テーマと共に学びのスタイルについても常に探索しています。
中村さん(以下、敬称略):当初は、定員を100名に設定していたのですが、募集開始から15分程度で満員となり、数百名の方がキャンセル待ちをされる状況となって非常に驚きました。社員の学習意欲の高さがこの数字に表れていると思います。
今回、場所を問わずに参加できるリモート企画の可能性を感じた一方で、通信トラブルの発生や細かな運営の難しさなど、リモート企画ならではの課題も見えました。加えて、リモートでイベントを開催すると、イベント終了後の個別活動へとつながりづらいという声も多く、リアルなイベントとの融合についても今後探索していきます。
また、予想を超えた参加希望があり、急きょ配信方法を切り替えたことに関しても、未経験でもまずはやってみよう、と新しいことにチャレンジできる環境だったからこそ実現できたのだと思います。試行錯誤しながらメンバーで協力して企画を作っていくことも、「多様性を生かした成長の場」というPORTならではの試みだと考えています。
高木: このようにPORTはコロナ禍においても社員たちの熱意で積極的に学びの場を推進することができました。PORTはこれからも「主体的で持続的な学びの場」として、深化と探索を進めます。皆さんがソニーの仲間になり、PORTを通じて共に学び合うことを楽しみにお待ちしております。
人材開発部では、以下の3種類の研修を実施しています。
人間力の育成に向け、正しく自己/他者を理解し、思考力とコミュニケーション力を身につけることが目的。
仕事力の育成に向け、ソニーのエンジニアとして働く上で必要となる基本的な技術習得が目的。
新たなスキルの取得やレベル向上が目的。主に、現役エンジニアが研修内容を作成し、講義を担当。約280科目もの技術講座で構成される。
岡村さん(以下、敬称略): これまでは、研修の約80%が教室を使用した集合型のスタイルでした。しかし、昨今の状況下では、3密回避や社員の働き方に合わせるために、研修のeラーニング化やリモート化といった、教室を使用しない形での開催方法が求められています。
岡村: これまでの内容をただリモート化するのではなく、学習効果を維持・向上するために、研修の実施形態に合わせて内容や進め方の見直しが必要となりました。
たとえば、eラーニング化する場合はより手軽に学習できるよう単元を細かく分けています。また、ライブ講義の場合はリモート環境に合わせたグループワークの実施や、講師の負担低減のために、進行方法の工夫やツール活用などといった検討も必要です。
岡村: 今後、すべての研修をリモート化するわけではありません。リアルな体験そのものが学びとなる研修や、実習機材を使用する研修はこれまでと同様に教室で実施するなど、内容に合わせて最適な方法での提供を目指します。また、講義のeラーニング化に加え、ライブ講義の録画によって常在化できる学習教材を増やし、社員それぞれのタイミングで学習できる環境を充実させていきます。
赤井田さん(以下、敬称略): いろいろと劇的に変化しました。まず、イベント開催スタイルが、集合型からリモートに変化しました。会場手配などが不要になったことで、以前は1カ月以上必要だったイベント準備期間が、最短10日程度まで短縮され、年に3回程度だった開催頻度は、4カ月で3回と大幅に増加しています。また、場所の制約がなくなり、より多くの方々に気軽にご参加いただけるようになったことで、参加者が200人を超えるイベントも開催できるようになりました。
イベントのテーマも、「リモート座談会:with/afterコロナのマネジメント術とちょっとしたコツとは?」や「ウェビナー:テレワーク時代に組織を成功に導くために!」といった、働き方のニュー・ノーマルを意識したものが増えています。
赤井田: リモートイベントの参加者アンケート結果は、以下のように非常にポジティブなものとなっています。自由記述には、「フレンドリーな雰囲気」「質問しやすい」などといったコメントがあり、リモートならではの良さもあるようです。
以下の3イベント 参加者アンケートより
イベント有益度 とても有益:37.5%、有益:62.5%
※「どちらでもない/有益でなかった/全く有益でない」の回答は0%
以下の2イベント 参加者アンケートより
Teams開催によるコミュニケーション
円滑:33.3%、問題なし:66.7%
※「問題があった/全くコミュニケーションがとれなかった」の回答は0%
赤井田: Leaders Labにおけるリモートイベント導入のきっかけは、新型コロナウイルス拡大対策でしたが、いざ実施してみると、場所の制約を受けず気軽にコミュニケーションが取れるなど、多くのメリットに気がつきました。リモートイベントが、今後のニュー・ノーマルになると思います。