ソニーの環境への取り組みの展示
「Sony's Story on the Environment」
ガイドツアー動画のテキスト全文
オープニング
ソニーはこれまで、感動を生むテクノロジーを作ってきました。そして、誰も体験したことの無いような、新しい価値を見つけてきました。だからこそ、この先の未来も人々と喜びや驚きを共有するために、いまの地球や社会に真剣に向き合い、企業としての責任ある行動を示すだけでなく、課題解決への貢献を目指しています。
ソニーは、2010年から「環境負荷ゼロ」を実現するための環境計画「Road to Zero」を推進しています。製品ライフサイクルのステージごとに環境に関する4つの重要な視点の目標を設定し、環境負荷ゼロに向けて活動しています。
気候変動の領域において、環境負荷低減活動を加速し、スコープ1から3までを含むバリューチェーン全体でのネットゼロの目標達成を10年前倒しし、2040年を達成年としています。
このRoad to Zeroは地球環境に対して果たす「責任」を象徴するものですが、これに加えて、ソニーは、これからの生活や社会システム、ものづくりを大きく変えられるような、新しい技術や研究開発にも前向きに挑戦しています。
このたび、ソニー本社で「Sony's Story on the Environment」を公開しました。環境負荷の低減や改善に貢献するさまざまな技術を、その「兆し」から構成し、地球(THE PLANET)、社会(SOCIETY)、人(PEOPLE)の3つのスケールで、展示しています。
この展示を通して、守るべき地球を捉え、そこに暮らす私たちが、共にどのように責任を果たし、地球に貢献していけるのか、皆様と一緒に考えるきっかけにしたいと考えています。
それでは、11の取り組みをご紹介します。
THE PLANET / 地球:もっと地球を知る
いま地球では何が起きているのでしょうか。宇宙から見えるこの惑星は、どんな姿なのでしょうか。
身近でありながら全体がつかみにくい地球を、さまざまな方法で探ります。
STAR SPHERE
「宇宙の視点」をテクノロジーの力で人々に解放し、エンタテインメントの力で宇宙感動体験を世界に広めることに挑戦しているSTAR SPHERE。
宇宙から見るだけではなく、宇宙を通して物事を捉え、考えてみることを意味する「宇宙の視点」を大切にしています。
地球環境に思いを巡らすことも、その一つです。
東京大学、JAXAとともに、ソニー製のカメラを搭載した超小型人工衛星を開発し、今年の冬の打ち上げを目指しています。
誰でも自由に操作、撮影できる人工衛星を通して宇宙とつながり、「宇宙の視点」を発見することで、一人ひとりの価値観と社会が変わり、地球環境がより良い方向へと変わっていく世界を目指すことに挑戦していきます。
人工衛星打ち上げ後は、撮影シミュレーターを使ってユーザーが意図した動画、写真の撮影が可能となるサービスを検討しています。衛星がいつ、どこを飛んでいるか確かめられるだけでなく、衛星の画角やカメラ設定を事前に試すことができます。
また、地上のさまざまな場所や、昼と夜、太陽や月、天体がつくり出す宇宙視点の構図やカメラワークを工夫できます。
こちらのデモンストレーションSpace Shooting Labでは、実際のサービスに先駆けて、「宇宙の視点」を発見する体感型宇宙撮影の「場」を提案する実験的なシミュレーターの操作を体験できます。
撮影シミュレーターによる宇宙とつながる体験を通じて、思いもしなかった地球や宇宙の姿、そして身近な社会に対する新たな気付きを得られるかもしれません。
地球みまもりプラットフォーム
地球上のあらゆる場所をセンシング可能にする仕組みの実現を目指す「地球みまもりプラットフォーム」。
ソニーの技術を活用し、地球上の異変の予兆を捉え、人々にフィードバックすることで、サステナビリティにつながる行動を促します。
予兆情報を有効活用し、持続可能な未来を考え、具体的なアクションをとるための原動力にして、環境破壊の未然防止や自然災害の予兆検知、農業、畜産業の生産性向上などにもつなげていきます。
地球みまもりプラットフォームは、変化を捉えるセンシングと超低消費電力エッジAI、変化を伝える超広域センシングネットワーク、変化を理解する予兆分析の3つのコア技術で構成されます。
プラットフォームの実現に向けて、世界中のさまざまな場所でフィールドワークを行っています。例えば、北海道大学の共同研究では、無人トラクターなどを用いるスマート農業に、ソニーのセンシング・AI技術などを応用することで、高度な農業DXを目指しています。
地球温暖化や世界人口の増加から生じる食糧問題、農業が抱える就業人口および高齢化などの課題の解決にもつなげていきます。
SOCIETY / 社会:社会のシステムを考え直す
当たり前とされてきたシステムが、変わるべき時代に来ています。インフラ、エネルギー、農法など日々の社会生活に広く関わる、新しい基盤を実現するための技術を開発しています。
バーチャルプロダクション
大型LEDディスプレイ、カメラトラッキングとリアルタイムエンジンを組み合わせた撮影手法である「バーチャルプロダクション」。
大型ディスプレイに表示した3DCG背景の前で、オブジェクトや人物を撮影することで、後処理なく3DCG背景と合成したような映像制作を実現します。
ソニーは、デジタルシネマカメラ「VENICE」などのカメラ技術と、リアリティを忠実に再現するCrystal LEDディスプレイなどのディスプレイ技術を組み合わせ、より高品位な映像制作を実現しています。
クリエイターを場所や時間の制約から解放し、映像表現の自由度を大幅に高めます。
撮影スタジオの中で、あたかもリアルなロケーションで撮影を行ったかのような映像制作が可能なこの撮影手法を活用することで、ロケ地へ撮影のためにスタッフが出向く必要がなくなります。
現地での発電機の使用や、スタッフやセットの移動にかかるエネルギーが不要となり、温室効果ガス排出量の削減にも貢献します。また、セットや小道具を再利用することも可能なため、資源の削減にもつながります。
VISION-S
ソニーが2020年に発表したモビリティの進化への貢献を目指した取り組み「VISION-S」。
より人に寄り添うモビリティを目指して進化を続け、安心・安全のための技術開発やエンタテインメント・アダプタビリティを軸に開発を継続し、CES2022では、SUVの試作車VISION-S 02を発表しました。
EVはマイクログリッドにおける大容量電池の役割を果たします。また、VISION-Sには5Gネットワーク機能が搭載されていますが、Over the Airでシステムをアップデートし、車を持続的に進化させることが可能です。ソニーでは、EVとクラウドプラットフォームを、環境に貢献しうる技術と位置付けています。
竹、リサイクル材を一部に使用したマイクロファイバーなどの環境負荷の低い素材をシート、ドアトリム、コンソールなどに使用しています。
また、Triporous™をフロアマット素材の一部に使用し、移動空間内での空気環境改善にも役立てています。
さらに、EVのバッテリーは、再生可能エネルギーの有効活用において、重要な役割を担うことができます。
VISION-Sを地域のマイクログリッドの一要素に組み込むことで、低炭素社会の実現に貢献していきます。
インテリジェントビジョンセンサー「IMX500」
画素チップとロジックチップを重ね合わせた積層構造を用いて、ロジックチップにAIによる画像解析処理機能を搭載した、世界で初めてのイメージセンサー「IMX500」。
画素チップで取得した信号をセンサー内でAI処理することで、高性能なプロセッサや外部メモリーを必要とすることなく、エッジコンピューティングを実現できます。
「IMX500」は、イメージセンサー内でデータ処理を行う事で、撮像データに属する意味情報であるメタデータのみを出力することが可能です。
積層技術によるイメージセンサー自体の電力効率向上だけでなく、クラウドに流れ込むデータ量を大幅に削減することで、IPトラフィックやデータセンターの負荷を低減します。これにより消費電力を抑え、排出されるCO2を削減することができます。
交通渋滞の低減など、ローマ市での社会課題の解決に向けた実証実験、アメリカ Nomad Go(ノマドゴー)社によるビル内の空調システムインテリジェント化に伴う電力消費抑制ソリューションなどにおいても、IMX500を搭載したAIカメラが活用されています。
オープンエネルギーシステム
再生可能エネルギーを利用した分散型の新しいエネルギーシステムである「オープンエネルギーシステム」(株式会社 ソニーコンピュータサイエンス研究所にて開発)。
太陽光発電などの分散発電源と分散蓄電装置を繋ぎ、独自の電力融通技術を活用することで、コミュニティ内で電力融通が可能になります。
化石燃料を用いた集中型電力システムへの依存度を減らすことで、気候変動の抑制や、生物多様性の保全、回復に貢献します。
徳島県三好市のウマバ地区にある、ワーケーション施設にてオープンエネルギーシステムを構築し、産官民が連携して実証実験「UMABA Project」を行っています。
宿泊予約や天候予測に基づいて、システムが充電計画を自動的に作成。太陽光で発電した電力を可能な限り自家消費できるように、使用状況に応じて最も効率的な電力融通を自律的に実行するシステムの開発を進めています。
また、電気自動車によるエネルギー運搬や地域内移動・搬送システムとの連携を検討しています。
地域の活性化に貢献するだけでなく、脱炭素社会の実現と地域レジリエンスの強化にチャレンジします。
PEOPLE / 人:一人ひとりが行動する
私たちが日々選び、使うものは、何から作られているのでしょうか。環境への影響を考えるきっかけを生むとともに、できることから一つずつ、人々への新しい選択肢を作ります。
Triporous™
籾殻から生まれた天然由来の多孔質カーボン素材、「Triporous™」。特許を取得した独特の微細構造により、水や空気の浄化など幅広い応用が期待されています。
Triporous™の原料である米の籾殻は、日本で年間約200万トン、世界で年間1億トン以上排出される余剰バイオマスです。
余剰資源を再生活用することで、循環型社会、地球環境負荷の低減にも貢献しながら、世界に次のブレイクスルーを生み出していきます。
Triporous™は現在、アパレルやインテリア、化粧品や薬剤に至るまで幅広い分野で製品展開されています。
繊維にTriporous™を応用することで、その特長である消臭・抗菌効果を持つ生活用品のアイデアである「Triporous:Space QOL Series」(リラクシングウェア、インナーウェア、タオル、ポーチ)を、JAXAの「第2回 宇宙生活/地上生活に共通する課題を解決する生活用品アイデア募集」に提案し、国際宇宙ステーション(ISS)への搭載に向けたアイデアとして選定されました。
その中の一つであるリラクシングウェアの開発が完了し、2023年以降、国際宇宙ステーションへの搭載が決定しました。
SORPLAS™
使用済み水ボトルや、廃棄される光ディスクなどを素材として活用し、再生材利用率最大99%を実現した難燃性再生プラスチック「SORPLAS™」。
開発が始まったのは今から約20年前。
事業所で排出される廃プラスチックを有効利用するための研究の中で、ポリカーボネイト樹脂に対して極微量で高い難燃性を発揮する独自の難燃剤を実用化しました。そして、その難燃剤と各種添加剤を、廃プラスチックから再生した原料にブレンドすることで、再生材利用率は高いまま、流動性(加工性)と強度のバランスを実現しています。
SORPLAS™は、複数回のリサイクルを想定した試験でも、添加物に起因する劣化がほとんど見られず、難燃性ポリカーボネイト樹脂として高い耐久性を実現しています。また、再生プラスチックでありながら、色のくすみが少なく、塗装処理なしでも鮮やかな色とツヤが表現可能です。
さまざまな日用品の素材として活用されており、こちらの4K有機ELテレビBRAVIA A95K/A80K(65V型と55V型)/A90Kシリーズは、テレビで最も面積の大きい背面カバーにSORPLAS™を使用し、美しい仕上がりを実現しています。
オリジナルブレンドマテリアル
竹、さとうきび、市場回収したリサイクルペーパーを原料にする紙素材「オリジナルブレンドマテリアル」。
原料は「環境・サステナビリティの観点から、産地を特定したもの」に限定し、ソニーが見極めたものを使用しています。
こちらのヘッドホン『WF-1000XM4』※1『WH-1000XM5』※2のパッケージに採用されています。
また、実はこの「Sony's Story on the Environment」の展示什器の一部にも、オリジナルブレンドマテリアルを使用しています。
オリジナルブレンドマテリアルは、「どこの」「なにを」「どのようにして」「こうなった」というストーリーをお客様に伝え、共感いただくことにより、具体的な行動につなげていただくことを目指しています。
デザインにもストーリーコンセプトが伝わる風合いを生かしながら、3種類の原料ブレンドにもこだわっています。
今後も商品パッケージへの採用を進め、環境への取り組みについてお客様とともに考えていくきっかけにしていきます。
- ※1:WF-1000XM4は、ラベル以外のパッケージにオリジナルブレンドマテリアルを使用。
- ※2:WH-1000XM5は、製品箱にオリジナルブレンドマテリアルを使用。スリーブはリサイクルペーパーを採用。
高音質再生プラスチック
ソニーは、バイオマスプラスチックや再生材の素材開発に10年以上前から取り組んでおり、高品質な「音」を実現する再生プラスチックを開発し、さまざまなオーディオ製品に導入しています。
性能をバージンプラスチックと同等まで改良し、設計を工夫することで内部部品を中心に使用してきました。
2019年にホームオーディオで初めて使用し、材料により音の響きの影響を受けやすいサウンドバーやワイヤレススピーカーの一部にも使用されています。
こちらのワイヤレスポータブルスピーカー『SRS-XE200』と『SRS-XE300』では、このような内部部品に高音質再生プラスチックが使用されています。
また、こちらのサウンドバー『HT-S400』のサブウーファーでは、リアパネルに高音質再生プラスチックが使用されています。
再生プラスチックの導入は、このほかにもヘッドホンの外装部品にも広がっています。
紙発泡材
ソニーは、世界中で深刻化しているプラスチックごみにおける海洋汚染問題を重く受け止めています。
2019年より海洋プラごみ対策アクション「One Blue Ocean Project」を推進し、製品においてもプラスチック使用量の削減や再生材の積極的な利用を進めています。
特に大型の製品においては安価で衝撃吸収率が高い緩衝材として発泡スチロールを活用していましたが、このたび紙を原材料に発泡させた新たな緩衝材を開発しました。
紙発泡材は、回収古紙などの紙材を粉砕したものを原材料としています。
これに薬剤を加え、発泡機に入れることで空気の泡を含んだ紙発泡材をつくることができます。
独自のレシピに基づきパルプモードや段ボールなどの他の紙材とハイブリッドに組み合わせることで、重量のある大型の製品にも対応可能な緩衝特性を達成した紙発泡材を開発しています。
紙が原料なので加工がしやすく、軽量な製品の保護材として薄物シートにも成形できます。
今後、さらに改良を重ねて、各種包装に利用できる緩衝材としての採用を目指しています。
エンディング
ソニーの環境への取り組み「Sony's Story on the Environment」のご紹介は以上です。いかがでしたでしょうか。
今年10月18日から開催されるCEATEC 2022において、ソニーは「ずっと、地球で感動を分かち合うために。」をテーマとして出展します。今回の展示をはじめとした、ソニーが取り組む環境に貢献するさまざまなテクノロジーをご紹介する予定です。
ぜひ、ソニーのブースにもお越しください。