SONY

長期視点の経営によるクリエイティビティへの貢献と、
多様性の進化を通じた成長
- 2023年度 経営方針説明会 -

2023年5月18日、品川本社で「2023年度 経営方針説明会」を開催しました。「長期視点の経営によるクリエイティビティへの貢献と、多様性の進化を通じた成長」をテーマに、会長 CEOの吉田は、音を起源に長期視点の経営で広がってきたソニーの事業を俯瞰したうえで、Purposeを軸とした「感動の追求」に関する取り組みの数々を紹介しました。また、社長 COO 兼 CFOの十時は、各事業の成長戦略とともに、人材と事業の多様性のさらなる進化がソニーの成長につながることを説明しました。今回のブログでは、経営方針説明会でのスピーチの模様をお届けします。

音を起源としたソニーの事業の広がりと経営の長期視点

経営方針説明会に登壇した吉田は冒頭、ソニーの事業が音を起源として広がったことと、経営の長期視点について説明しました。
ラテン語で音を意味する「SONUS」を由来とする社名そしてブランドである「SONY」。テープレコーダー、トランジスタラジオ、ウォークマンなどから広がってきたエレクトロニクス事業。1968年の音楽事業への参入を起点に、映画、ゲームへと広がってきたエンタテインメント事業。ラジオ小型化の鍵となった部品、トランジスタから始まった半導体事業。これらの事業は「音」を原点とし、長期視点での経営によって広がってきました。
また、吉田は「長期視点の原点は創業者」にあるとしたうえで、ファウンダーのひとりである盛田昭夫が長期ビジョンの志をもって参入した生命保険事業をその象徴と位置づけました。

Purposeを軸とした「感動の追求」

続いて吉田は、Purposeを軸とした近年の「感動を追求する」取り組みとして、グループアーキテクチャーの再編、クリエイティブの強化、感動空間の拡張の3点に触れました。

グループアーキテクチャーの再編

2020年にソニーグループの経営機構改革の実施を発表。各事業が等距離でつながることを目指したこの経営再編により、事業間連携やコンテンツIPのシナジーが加速したと吉田は振り返りました。

クリエイティブの強化

「クリエイターに近づき、感動を創ることに注力すると同時に、感動を創る力に投資してきました」と述べた吉田は、コンテンツIP強化に過去5年間で1兆円を投資したことに言及。また、「クリエイターが生み出す作品をより多くのユーザーに届け、『世界を感動で満たす』上で重要になるのがパートナーとの連携」と説明し、その代表例としてPlayStation®のゲームをテレビドラマ化した「The Last of Us」の大ヒットを挙げました。また、このドラマの大ヒットが、原作ゲームソフトの売り上げと劇中楽曲のストリーミング再生を伸ばす結果となったことを紹介し、活発なコンテンツIPの事業連携がクリエイティブの強化に結び付いていると述べました。さらに、「DTCサービスはユーザーから学ぶための取り組みであると同時に、クリエイターにも貢献していくことを目指しています」と述べ、「Community of Interest」のひとつであるアニメに特化したDTCサービスCrunchyrollが視聴データをクリエイターへ還元していることを紹介。「ソニーグループが直接つながる人を10億人に広げるという長期ビジョンの下、今後もアニメやゲーム、インドといった特定領域で感動を届け、クリエイションに生かしていきたい」と語りました。

「『感動』を生み出すクリエイターに世界で最も選ばれるブランドになることを目指しています」と語る吉田は、プロダクト領域でのクリエイションの強化についても触れ、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントを含むハリウッドスタジオで広く使われている映像制作カメラ「VENICE」シリーズや、新しい映像表現をテクノロジーで支えるバーチャルプロダクション、スポーツの感動を生み出すHawk-Eye Innovationsの技術を紹介。また、クリエイションを支えるキーデバイスであるCMOSイメージセンサーを「感動を生み出すクリエイション半導体」と表現し、過去5年間で1兆円を超える投資を行っており、今後もこの領域に注力していくと説明しました。

感動空間の拡張

「感動の『場』を現実空間から仮想空間、移動空間に広げるという長期視点でのチャレンジも行っています」--。
吉田は、ゲーム技術で創られるバーチャル空間が、クリエイションの場であり、人と人とがつながる場でもあることの例として、ゲームのライブサービス、音楽ライブ、スポーツのファンエンゲージメントの取り組みに触れました。また、バーチャルとフィジカルをシームレスにつなぐ取り組みとして、人を仮想空間に導くVRや、手軽に楽しくクリエイションが可能となる『mocopi』、スポーツ選手の動きを再現する骨格情報を推定するトラッキングシステムなどの技術を紹介。さらに、クリエイターの創造性を拡張させる重要なテクノロジーと位置付けるAIのリアルとバーチャルを繋いだ例として「Gran Turismo Sophy」を取り上げました。

もう一つの感動の場である移動空間での取り組みとして、ソニー・ホンダモビリティの「AFEELA」にも言及。イメージング・センシング技術、通信・ネットワーク技術に加え、Epic Gamesと協業し、「Unreal Engine」を活用した新しいエンタテインメントの可能性を追求すると吉田は述べました。
今後、感動空間は宇宙の場にまで広がり、人工衛星『EYE』を通じた感動体験の探索にも取り組む予定であることも紹介しました。

クリエイティビティの場「インド」での挑戦

吉田は、感動を追求してきた場のひとつとして1980年代から取り組んできたインドでの事例を紹介しました。
感動を創り、届けるプロダクトを展開するSony India、Sony Music Entertainment Indiaにおけるローカルクリエイションの推進、Sony Pictures Networks Indiaのメディアネットワーク事業の展開、Crunchyrollでのヒンディー語吹き替え配信など、感動を広げることに取り組んでいます。
吉田は今後の成長に向けて、予定されているSony Pictures Networks IndiaとZee Entertainment Enterprises Ltd.の合併に触れ、「地域文化に根差したクリエイションをさらに広げていきたいと考えています」とインドでのローカルクリエイションのさらなる進化への期待に言及しました。
続いて、Sony Pictures Networks India のCEOであるNP・シンが登壇。インド市場の成長性やポテンシャル、エンタテイメント領域での取り組みを紹介したNP・シンは「インドでの私たちの取り組みは、『世界を感動で満たす』というソニーのPurposeに沿ったものであり、境界を押し広げ、期待を超えていくことを目指しています」と抱負を語りました。

各事業セグメントの成長戦略

社長 COO 兼 CFOの十時は冒頭、第4次中期経営計画の進捗を報告した上で、最終年度となる当年度について「KPIの確実な達成に向け、足元のリスクマネジメントに重点を置いた事業運営を進めていきます」と述べました。
続いて、各事業セグメントの成長戦略を説明。ゲーム&ネットワークサービス分野については、PlayStation®5の普及推進とファーストパーティー・ゲームポートフォリオの強化、拡充によるアクティブユーザーの拡大。音楽分野ではストリーミングやエマージング・メディアの市場成長を上回るための施策。映画分野は長期的なIP価値最大化に向けたストラテジックサプライヤー戦略、劇場重視の方針を説明しました。
また、これらゲーム、音楽、映画のエンタテインメント3分野の横断的な取り組みとして、「グランツーリスモ」や「Twisted Metal」などゲームIPの映像化や、「鬼滅の刃」などを製作するアニプレックスとCrunchyrollとの連携を通じた、海外市場における日本アニメのIP価値最大化、アニメファン拡大の推進を紹介。これらに加え、タイのウォーターパーク「Columbia Pictures' Aquaverse」や、スペインでオープン予定の映画『アンチャーテッド』をテーマとしたアトラクション、アニプレックスが手掛ける「ソードアート・オンライン」をテーマとした屋内体験型アトラクション「THE TOKYO MATRIX」など映画、アニメIPを活用したロケーションベースエンタテイメントの事例にも触れました。これら施策がコンテンツIPの価値を最大化することに言及し、さらなる成長への期待を述べました。

エンタテイメント・テクノロジー&サービス分野においては、幅広いクリエイター向けにテクノロジーとサービス群を拡大していくこと、イメージング&センシング・ソリューション分野はイメージセンサーNo.1ポジションを強化するために、スマートフォン用CMOSイメージセンサーの大判化・高性能化による成長継続に加え、車載やインフラ領域でもシェア拡大を目指すと説明しました。
金融分野についてはブランディングの再強化と、グループインフラの活用、成長投資という事業の成長ポイントに触れたうえで、金融事業のさらなる成長を実現するため、ソニーフィナンシャルグループ(株)の株式上場を前提にしたパーシャル・スピンオフを検討していくと述べました。スピンオフの実行後も、ソニーグループ(株)が20%弱の株式を保有し、金融各社の社名、ブランド、グループ内の位置づけは変わらないこと、また、2〜3年後の実行を念頭に、今年度末にかけて詳細を検討することを説明しました。

多様性の進化を重要視する十時は、人材の多様化を図る社内外の様々な取り組みに触れたうえで「多様な人材が、境界を越えて知や活動を共有し、事業の多様性を進化させ、有機的につながることで、ソニーグループのさらなる成長と長期的な企業価値向上を目指していきます」と語りました。

クリエイターと共に「感動」を創り、世界に広げることに貢献

再び登壇した吉田は、Purposeにもある「世界」を持続可能にするために、13年前に始めた環境負荷ゼロをめざす長期環境計画「Road to Zero」や、地球に対する思いを育むきっかけをつくるプロジェクトに言及。
「『クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす』ことに終わりはありません。今後もクリエイターと共に『感動』を創り、それを世界に広げることに貢献していきます。」とスピーチを締めくくりました。