これまで過ごした月日のなかで、
わたしたちは想像さえしていなかった日常の変化を体感した。
そして、2050年の東京。
かつて描いたScience-Fictionのものがたりは、
現実となって目の前に姿を著(あらわ)すかもしれない。
そのとき、あなたは誰のとなりで、
どんな気持ちでその世界に在るだろうか。
ONE DAY, 2050:
わたしたちは、いつか来る日に思いを馳せる。
Sci-Fi Prototyping?
ソニーのデザイナーとSF作家がコラボレーションし、Sci-Fiプロトタイピングの手法で「2050年の東京」を描き出しました。
「2050年」「東京」「恋愛」という3つのキーワードを大きな傘とし、「WELL-BEING」「HABITAT」「SENSE」「LIFE」の4つのテーマについて、断続的にワークショップを重ねて探求し、デザイナーによる「デザインプロトタイピング」と、SF作家による「SF短編小説」に結実しました。「デザインプロトタイピング」は各テーマの世界観に寄り添うサービスやプロダクトの提案です。
※すべてフィクションです。ソニーの商品やサービスには直接関係ありません。
Sci-Fiプロトタイピングとは
「Sci-Fiプロトタイピング」とは、SF(サイエンス・フィクション)を用いて未来を構想、それを起点にバックキャストして「いま、これから何をすべきか」を考察する技法です。
世界的なパンデミックは、現在の延長線上で「未来」を描くことをより一層困難にしました。そんななか、SF作家のもつ大胆かつ精緻な「想像力」と、社会が内包する「課題」を「接続」することによって未来をプロトタイピングするこの技法が、まだ見ぬ新たな「原型」を創造する有効手段として世界的にもにわかに注目を集めています。
今回ソニーグループ クリエイティブセンターは、より不確実で、複雑で、曖昧化していくであろうこれからの社会において、非合理性を含むモノやコトについて、デザイナーならではの大胆かつ緻密な視座をもって考え続けていくべく、「WIRED Sci-Fiプロトタイピング研究所」の協力のもと、SF作家とともにSci-Fiプロトタイピングを実践しました。
よりよい未来の可能性とその社会におけるソニーの役割を探求したひとつの結果として生まれたのが、今回の4つの「デザインプロトタイピング」と4つの「SF短編小説」です。
未来年表
今回提示している「未来年表」は、架空の社会と技術の変遷を、現在から2050年までの時系列に整理したものです。「デザインプロトタイピング」と「SF短編小説」のプロットや世界観からバックキャスティングするなかで導かれた事象が、「未来年表」にはマッピングされています。
※年表は架空の話です。実際のソニーの商品、サービス等とは一切関係ありません。
- 2022年-2024年
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- サービス業代替ロボットが普及し、少子化による労働力不足が解消される
- 会話支援ロボットの実用化
- モルディブで海上都市の建設が開始
- 脳波を使ってデータを入力するBMI (Brain-machine Interface )入力デバイスが登場
- AIにより人のアシスタントとなるパーソナルな小型のコミュニケーションロボットが登場
- 貼付型 ウエアラブルセンサーが発売
- 2025年-2029年
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- 継続的に記録された個人の表情データ・脳情報などから感情や 気分の状態推定・予測が可能に
- VR機器に向けた香り発生デバイスが登場
- 自動運転レベル4の自家用車の発売
- オフィスロボットの利用が始まる
- ロボット・インテグレーション・サービスが登場
- 遺伝子検査が一般化
- 2030年-2034年
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- 業務用人型歩行ロボットの実用化
- 遠隔地のロボットや他者と様々な感覚を相互共有できる身体共有技術が実用化。
- 個人の体験を、視覚/匂い/温度などの感覚情報と心理状態も含めて記録し再現・共有できるようになる。
- うつ病が心臓病、交通事故を抜き、「健康な生活に影響 を及ぼす要因」の第1位に。AIが人の心身の状態を分析しすぐにアドバイスしてくれる。
- AIの産業への普及による失業や社会不安に対して、ベーシックインカムを採用する国が増える。
- 2035年
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- グレートトランジション(社会の大転換):職と仕事が、生きるために必要な職(ジョブ)と人生のための仕事(ワーク)に変わる
- 2035年-2039年
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- コミュニケーション能力を持つ業務用人型歩行ロボットの実用化
- 日本の仕事の49%がAI/ロボットで代替可能になり、人はより創造的で知的なタスクの業務に移行。
- 五感を再現するAR/VRで、自宅にいながら仮想現実を旅する没入型ツーリズムが普及
- 映像を記録するように記憶情報も記録できるようになる
- 政府によるメンタルヘルス管理システムが構築される。
- 世界平均気温 2度上昇
- 海面上昇による土地面積の減少により、海上に設置する「海上スマートシティ」の開発が各地で始まる
- 個人データの一括管理により、サービスのパーソナライゼーションが一般化
- 2040年-2049年
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- BMI(Brain-machine Interface)を使って仮想人格を操作できるようになる
- 自分の代わりに仮想人格を使ったAI/ロボットが仕事を行えるようになり、余暇時間が増大する。
- プラットフォーマーなどが発行するデジタル通貨をベースとしたデジタル経済圏が形成される
- 東京湾上の海上都市が完成
- 遺伝子的・価値観的マッチ率などが計算可能に
- 高度な人生設計シュミレーションサービスが一般化する
- 感覚拡張を可能にした多機能マスクの普及。香りのデジタル化
- 2045年
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- シンギュラリティ(技術的特異点):人工知能が、自身で自律的により高度な知能を生み出す事が可能になる
- 2050年
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- AR/VRを使った自分自身の仮想人格と共存するようになる
- 屋内外のあらゆる生産作業を自律型ロボットが実現
- ロボットの外科医や料理人が登場。エキスパートの暗黙知が共有可能に。
- 記憶情報を基に仮想現実内に思い出の再現が可能となる
- 人の視覚、聴覚、触感を代替できる 認識技術が確立
- 仮想人格も、市民権が得られるようになる
- 温暖化に伴う砂漠化や海面上昇等によって消失した自然環境を再構築/復元する技術が確立
- 老化が完全に治療できる。健康寿命120年時代の到来
WIRED Sci-Fiプロトタイピング研究所
WIRED Sci-Fiプロトタイピング研究所は、SF作家と未来を構想するコンサルティングサービスを提供する研究機関です。世界で最も影響力のあるテクノロジーメディア『WIRED』の日本版とクリエイティブ集団PARTYが協働し、2020年6月に設立されました。コンサルティングサービスを企業に提供するほか、プログラムの基盤となるワークショップやメソッドの開発、「WIRED.jp」などのメディアを通じた「SFプロトタイピング」に関する情報発信を行なっています。
作家紹介
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藤井太洋1971年奄美大島生まれ。2012年、ソフトウェア会社勤務時代に執筆した長編『Gene Mapper』を電子書籍で個人出版し、Kindle本「小説・文芸部門」で最多販売数を獲得。著書に『オービタル・クラウド』(日本SF大賞と星雲賞日本長編部門を受賞)、『ハロー・ワールド』(吉川英治文学新人賞受賞)など。
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麦原遼東京大学大学院数理科学研究科修士課程修了。ゲンロン 大森望SF創作講座の2期生。2018年に『逆数宇宙』で第2回ゲンロンSF新人賞優秀賞を受賞してデビュー。『S-Fマガジン』20年8月号で「それでもわたしは永遠に働きたい」、『小説すばる』21年1月号で「2259」などを発表し、活躍の場を広げている。
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津久井五月1992年生まれ。東京大学・同大学院で建築学を学ぶ。2017年、「コルヌトピア」で第5回ハヤカワSFコンテスト大賞を受賞しデビュー。デザイン、生き物、風景などをテーマに小説を執筆している。著書は『コルヌトピア』(ハヤカワ文庫JA)。
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小野美由紀1985年東京都生まれ。“女性が性交後に男性を食べないと妊娠できない世界になったら?”を描いた恋愛SF小説『ピュア』が、早川書房のnoteに全文掲載されSNSで話題を呼ぶ。著書に80年代の架空のアジアの都市を舞台にした『路地裏のウォンビン』(U-NEXT)のほか、『メゾン刻の湯』(ポプラ社)など。
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