SONY

A(i)R Hockey

デザインが広げる、
ARの新たな可能性

今あるテクノロジーを見つめ直し、新たな体験をつくりだすことも、ソニーデザインが担う役割です。その一例が、世界最大のクリエイティブ・ビジネス・
フェステバルSXSW 2018で注目を集めたA(i)R Hockey(エーアール エアーホッケー)。高速ビジョンセンサー、予測アルゴリズム、
触覚提示技術という先進技術から生み出した新感覚のARゲームが、未来のAR(拡張現実)の可能性を広げます。

テクノロジーを組み合わせ、
新しい価値を見出す

「1/1000秒で物体をセンシングできる高速ビジョンセンサーを使って、新たなユーザー体験がつくれないか」そんな社内の相談から、A(i)R Hockeyのプロジェクトはスタートしました。そこでデザイナーが目指したのが、技術を説明するものではなく、ユーザーが楽しみながら技術を体感できるエンタテインメント体験でした。

高速で動く物体をセンシングしながら、楽しめる遊びや体験とは何か。野球などの球技をはじめ、何百ものアイデアの中から「世界中の誰もが楽しめる」「技術が体感しやすい」という観点で選んだのが、エアーホッケーでした。高速ビジョンセンサーで素早く動くパックをトラッキングし、さらに予測アルゴリズムでパックの軌道を捉え、プロジェクションを追従させていく。それに、触覚提示技術でリアルな感触を持つバーチャルパックを加えれば、これまでにないAR体験を提供できる。そんな全体像をもとに、A(i)R Hockeyをつくり上げていきました。

新しい体験に熱中させ、
技術を感じさせる

A(i)R Hockeyが大切にしたのは、初めての方でも分かりやすく熱中できるゲーム性と、バーチャルとリアルが融合した新たな感覚を味わえることです。まずテーブルは、一般的なエアーホッケーの長方形ではなく円形にすることで、3人で遊べるとともに、パックに予想外の動きを生み出し、よりゲームが白熱するようにしています。さらに、3人のプレイヤーを赤・青・緑で色分けし、打ったパックの軌跡が各色のプロジェクションで彩られる、これまでにない視覚的な楽しさと美しさを表現。ゲーム終了後には、テーブル上に色の軌跡が重なり合った美しいグラフィックが出来上がり、最後までプレイヤーが楽しめるようにしています。

またリアルなパックに加え、バーチャルなパックも出現させ、パックを打つマレットに内蔵した触覚提示技術によって、あたかも本当に打っているような触感を体感できるようにしています。さらに、このバーチャルなパックを多く出現させることで、どれがリアルで、バーチャルなのか、その境界がなくなるような、新感覚のAR体験を追求しました。マレットについては「リアルとバーチャルの間をつなぐもの」とし、本体の表面にも各プレイヤーの色をプロジェクションして追従。ガード上部のエッジを白く発光させることで、薄暗いテーブルからマレットが浮いているような感覚を演出しています。

右下:SXSW 2018会場にて、写真左から、デザイナー 井関、エンジニア 池田、プロジェクトオーナー 水野、プロジェクトマネージャー 大野、デザイナー 大木

デザインの力で、
未来の体験を生みだしていく

SXSW 2018に出展されたA(i)R Hockeyの会場は、国籍や人種に関係なく、多くの来場者で賑わい、皆ゲームに熱中して遊んでくれました。その中で、デザイナーを何より喜ばせたのが「今までARやVRにあまり興味がなかったが、このゲームで人生を楽しませてくれる技術だと思い直した」という来場者の感想でした。この言葉こそ、A(i)R Hockeyが目指したことであり、新たなARの可能性を示しているのではないでしょうか。

A(i)R Hockeyは、高速ビジョンセンサー、予測アルゴリズム、触覚提示技術といったソニー社内に点在していた技術を組み合わせることで、新しいユーザー体験を生み出しました。しかし、ソニーグループ内には、まだまだ最先端のテクノロジーがあり、その組み合わせの可能性は未知数です。ソニーデザインはこれからもテクノロジーを見つめ続け、未来に向けた体験づくりに挑戦していきます。

高速ビジョンセンサーという先進技術をもとに、デザイナーの発想力が生み出したA(i)R Hockey。
この新たなARゲームが、ARが溶け込む未来の暮らしの一端を示します。