BeautyExplorer™
美容の未来をつくる
毎日を美しく健やかに暮らしたい。そんな想いをカタチにするために誕生したのが、肌の状態を細かく分析し、
改善へのソリューション提案につなげる肌解析システム「BeautyExplorer™(ビューティーエクスプローラー)」です。
ソニーが美容という領域で、あたらしい未来を描きます。
美しく健やかなライフスタイルの模索
いま世の中ではどのような体験や価値が求められているのか。ソニーは新たな感動やライフスタイルを提供するため、広い視点でのリサーチやワークショップを重ねてきました。浮かび上がってきたのは「忙しくとも、より健やかに充実して暮らしたい」という、人の本質的な欲求でした。一方で、急速なテクノロジーの進化が潜在的なストレスとなり、心理的な負荷を増やしているのではないかという課題も見えてきました。本来、テクノロジーは人を支える存在であり、充実した暮らしかたにつながるべきものです。そこでテクノロジーのありかたをデザインの観点から見つめ直し、人の心身を満たし豊かにするようなライフスタイルを提案できないかと考えました。
答えを模索するなかでデザイナーが出会ったのが、「カメラのセンサー技術を肌に応用できないか」というエンジニアの発想でした。社内の技術交換会で発表されていた「肌解析センサー」で撮像された解析画像には、肉眼では見えない肌のキメや毛穴、色みまでが鮮やかにとらえられていました。この画像を通じて肌のコンディションを把握し、肌に影響をおよぼす要因をつきとめることができれば、肌の悩みを解決したり、美しく健やかな生活を送るヒントを提供できたりするのではないかと考えました。新たな技術に挑戦するエンジニアの熱意と、人の生活を豊かにしたいというデザイナーの想いがひとつになり、美容という新たな領域に向けたプロジェクトがその一歩を踏み出しました。
ビジネスの全体像を視覚化する
ソニーではじめてとなる美容業界向けの製品として、事業化に向けたプロジェクトチームが発足。そこにデザイナーも参加し、メンバーの認識を統一するためにも、さまざまなユースシーンを想定してビジュアル化。ターゲットや使いかたなどを絞り込むなかで、ビジネスの全体像と商品像を結びつけていきました。たどり着いたのは、美容業界に手軽に扱える高精度な肌解析機を提供するだけでなく、その先のユーザーに美しく健やかな生活を送るための美容ソリューションとして届けることでした。こうして誕生したのが、肌測定カメラや肌解析アプリとクラウドサービスを組み合わせた肌解析システム「BeautyExplorer」です。
この肌解析システムにより、エステサロンや化粧品メーカーなどのパートナー企業は、高精度な肌測定による質の高いサービスを提供できるだけでなく、測定データをクラウドに蓄積することでユーザーにより効果的なアドバイスを提供でき、継続的なコミュニケーションができるようになります。ユーザーは、自分の肌の状態を詳しく知るとともに、定期的な測定によって自分自身をより深く理解し、生活習慣の改善にもつなげられます。将来にわたって、人々のより美しく健やかな生活をサポートできるようなビジネスモデルを、商品企画、設計、デザイナーが協力し合ってデザインしました。
BtoBの領域では、関係するステークホルダーが多く、業務も多岐にわたります。そのため現場を観察し、顧客を取り巻くビジネス環境を分析した上で、顧客が抱えている想いや課題をデザインによってビジュアライズすることが重要です。ビジネスの全体像を描くことで、関係する全員が目的地までの道筋を理解し、その先のゴールを共有できます。ビジネスを最適解へと導く設計図をつくること、それが私たちソニーデザインの果たすべき役割のひとつだと考えています。
統括部長 大場
ソニーらしい「美」を探求する
美容という新たな分野でソニーならではの価値を提供するため、ビジネスモデルにもとづいた多様なユースシーンから課題を抽出。実際の現場でユーザーを観察しながらデザインの進むべき方向性を探りました。そこから導き出されたのが、シンプルな操作でだれもが使いこなせる 「intuitive(直感的)」、肌に触れる商品に求められる「comfort(快適さ)」、解析結果を明確に視覚化することで得られる「impress(達成感)」という3つのキーワードでした。これをもとに、ユーザーの心理に寄り添い、「測る」ことを心地よい体験に変える製品を目指しました。
測ることの心地よさをデザインする
肌測定カメラ「Skin View Camera」は、女性の肌に直接当てて肌の状態を測定するため、「測る」を心地よくすることがデザインの重要なテーマでした。たとえば「水分センサー」は、センサー基板を肌に押し当てて測定しますが、無機質な電子部品をそのまま肌に当てることに抵抗感がありました。そこで基板をボディと同じホワイトに調色。さらにセンサー表面の凹凸をなくし、肌へのストレスを最小限に抑えています。常に清潔に保てるようにメンテナンスのしやすさにも配慮。ビス1本で内部機構を固定できるように工夫し、ボディの継ぎ目を極力なくすことで、汚れをさっと拭き取れるようにしています。また、長く使っても清潔感が保てるよう、塗装などの加飾はせずに樹脂やアルミという素材そのものが生きる材料を選定。プロダクトとして品位あるものにするため色みや質感の表現に徹底的にこだわりました。日常で使うものだからこそ、「心地よさ」への配慮をプロダクトの隅々にまで行き届かせています。
達成感をデザインする
専用タブレットに搭載する肌解析アプリ「Skin Analyzer」も一貫したコンセプトのもとにデザイン。複雑になりがちな測定項目を横方向に統一し、初めて使う人でも迷わないよう画面の動きをそろえています。画面は目を疲れさせない穏やかな色調と、柔らかくエレガントな質感で表現。各解析データの色が重複しないよう配色し、最も重要な解析結果が一目でわかるようにしています。またスマートフォン向けアプリ「Skin Viewer」を提供し、ユーザーが解析結果をいつでも手軽に見られるようにしました。継続して測定すれば肌の状態の推移がグラフ表示されるため、生活のリズムと肌の相関関係がわかります。自分の生活を見つめるきっかけになり、肌の健やかさを保つモチベーションとなるような「達成感」の得られるデザインにしています。
フィードバックによるデザインの洗練
ユーザーテストを重ねて使用シーンごとの課題を洗い出し、フィードバックを繰り返しながらデザインを洗練。シャッターボタンを押して肌を測定する「Skin View Camera」は、美容カウンセラーが対面で測る場合と、ユーザーが自分自身で測る場合とでは使い勝手が異なります。そのため、どの使用シーンでも使いやすい最適なサイズ感や顔に当てる角度、左右どちらの指でも押しやすいボタン配置などを、多数のモックアップを使って検証しました。実際に自分で測ってもらうと、ユーザーは画面を見ながら操作するため、本体のボタンが視界から消え、位置を認識しづらいことがわかりました。そこでタブレットのアプリ画面に大きなシャッターボタンを配置することで、どちらの使用シーンでも迷わず使えるようにしました。
また初期の試作機では、タブレットとは別に置かれた鏡を見ながらカメラを当てる位置を確認していましたが、最終的にタブレットのフロントカメラと連動させることで、画面に映った顔を見ながら測れるようにしました。水分センサーについても、初めは正しい測りかたを図説していましたが、本当に測定できているのか実感できないという声があり、センサーが肌への接触を感知するとアプリ画面内のインジケーターに適圧と時間を表示することで、正しく測定できていることが視覚的にわかるように工夫しています。
さらに化粧品メーカーやエステサロンなどの店舗でも実証試験を行い、美容カウンセラーへのヒアリングで得た「お客様にアドバイスするために、前回の測定結果と並べて比較したい」というコメントから、アプリの設計を変更。カウンセラーがお客様とのコミュニケーションを円滑にできるように結果の比較表示機能を追加しています。こうした現場からのフィードバックを取り入れつつ、ユーザーインターフェースのアップデートを重ね、心地よい美容体験を提供するデザインへと洗練させていきました。
ユーザーテストでは、社員食堂に特設ブースを設けて、手づくりの試作品を多くの社員に試してもらいました。初期の頃は、この肌解析機をどのように使えばいいのかわからないという人も多かったため、シンプルでありながらも操作が自然とわかるようなデザインに仕上げるために試行錯誤を繰り返しました。プロダクトだけでなくユーザーインターフェースと綿密に連動することで、より多くの人に心地よく測っていただけるデザインになったと思います。
デザイナー 秋田
人々の美しさと健やかな生活をサポートするBeautyExplorer。
テクノロジーとデザインをひとつに融合し、
ソニーは未来を見据えた、
これからの美容体験をデザインします。
それもエンタテインメント
最初に肌解析画像を見たときに、ソニーのセンサー技術でこんなことまでわかるのかという新鮮な驚きがありました。この技術が人々の美しさや幸せにつながり、心を満たすようなライフスタイルを提供することで、ユーザーとあたらしい関係が築けるのではないかと思います。BeautyExplorerが人生そのものを充実させ豊かにするものになれば、これもまた、ソニーのエンタテインメントのひとつの形と言えるのではないかと考えています。
デザインマネージャー/デザイナー 木村