CAVE without a LIGHT
ボーダーを超える、
エンタテインメント体験
暗闇の中、見知らぬ人同士でチームを組み、一緒に楽器を演奏して壮大な音楽をつくりあげる—そんな一風変わった体験型展示
「CAVE without a LIGHT(ケイブ・ウィズアウト・ア・ライト)」を提案したソニー。
そこには、国籍や性別、年齢や障がいといったボーダーを超え、一人でも多くの人が楽しめるエンタテインメント体験をつくりたいという想いがありました。
きっかけは、社内での試作デモ
CAVE without a LIGHTが生まれたきっかけは、ソニーのデザイン部門であるクリエイティブセンター、品質・環境部、R&Dセンターなどの複数部署が共同で制作した試作デモでした。それは、暗い部屋の中、ソニー独自の音響技術を用いたバーチャルな反響音や環境音を聞くことで、視覚に頼らずにまったく違う空間にいるような感覚を得られるというもの。この試作デモが社内で評価され、世界最大のクリエイティブ・ビジネス・フェスティバル「SXSW2019」のソニーブース内に展示スペースが設けられることになりました。
世界中の人びとが訪れるイベントに向けて、この試作デモをどう進化させるか。メンバーたちは音響技術に触覚技術を組み合わせ、リアルな感覚の再現にとどまらない、新感覚のエンタテインメント体験を創出しようと考えました。そこから、イベントが開催される米国・テキサス州で行われていた洞窟内の音楽フェスをモチーフに「暗い洞窟の中で、みんなで楽器を協奏する」という新たな体験づくりに挑みました。
聴覚と触覚を呼び覚ます、
誰もが楽しめる体験を
「暗い洞窟の中で協奏する」という体験を、いかにデザインするか。まず外からの光や音が入ってこない洞窟の暗闇を模した空間をつくるとともに、参加者たちがボンゴを演奏するという設定を考案。参加者自らが叩くリアルなボンゴの音に、バーチャルな反響音やコウモリの鳴き声などの環境音を重ねることで、あたかも洞窟の中で演奏しているような感覚を視覚に頼らずに再現しました。さらに、ボンゴの音に合わせて参加者たちが乗るリフトを振動させ、途中から100人以上が奏でるボンゴの音も重ねることで、現実ではあり得ないダイナミックなエンタテインメント体験をつくりあげました。
この体験をより多くの人に楽しんでもらうため、プロジェクトチームは障がいのある社員や国籍の異なる社員などに声をかけ、多様な人を理解することで新たな気づきを得て、ともにデザインするインクルーシブデザインの手法を採用。この手法によって、来場者にとってのユーザビリティと体験のクオリティの双方を向上させることができました。例えば、視覚障がいのある人びとを念頭に置いてつくった半立体の洞窟の模型は、言語の異なる人びとにとっても体験を理解するための良いツールとなりました。リズムが取りやすいようにシンプルにデザインした音楽は、体の不自由な人びとにとって演奏しやすいのと同時に、多くの来場者が盛り上がりやすいという効果が。また、来場者の声やボンゴの音が壁から跳ね返ってくることを防ぐためにリフトの向きを斜めにしたところ、車イスでも出入りしやすいという利点を見つけることもできました。
これら会場内のすべてのデザインには「障がいがあってもなくても楽しんでほしい」というメンバーたちの想いが込められています。
ソニーの多様性をいかし、
さらなる体験の創出へ
「SXSW2019」の開催期間中、CAVE without a LIGHTの会場は多くの人で賑わいました。中には、演奏に合わせて歌い出したり、踊ったりするなど、メンバーたちの想像以上に熱中してくれる参加者も。さらに、現地の盲協会の方々も来場し、目が見えていなくても「すごい!面白い!」と言ってくれたことは、メンバーたちが目指してきた体験を提供できた証になりました。
CAVE without a LIGHTでは、試作デモの制作時から協業していた品質・環境部やR&Dセンターのメンバー、さらに障がいのある社員や外国籍の社員など、それぞれ異なった視点を持つ人たちと議論を繰り返すなかで、完成度を高めていくことができました。クリエイティブセンターはこの経験をいかし、今後も幅広い人びとが楽しめる体験の創出に取り組んでいきます。
プロジェクトリーダー 詫摩、デザイナー 出口、プロジェクトマネージャー 西原、デザインリーダー 津田、デザイナー 木村
未知の聴覚と触覚を呼び覚まし、多くの人が楽しめる体験型展示CAVE without a LIGHT。
クリエイティブセンターは今後も、ソニーグループの多様な人材と協力しながら、
新たな体験づくりに挑戦し続けます。