中国東方航空
ブランドショールーム
ソリューションに命を吹き込む
上海虹橋空港に隣接する中国東方航空新社屋のブランドショールームは、ソニーの中国拠点であるソニーチャイナのプロフェッショナルソリューショングループ
(PSC)が結成したプロジェクトチームにより完成しました。国営企業である中国東方航空のブランドコンセプトや歴史が体感できるよう、
飛行機の主翼を想起させる形状のショールームに、地球儀のオブジェをはじめ、大画面のCrystal LEDディスプレイシステムや
虹橋空港のスケールモデル、さらにそれらに連動するARコンテンツを展示しています。
ショールーム全体のコンセプトから、空間デザイン、ARコンテンツまで、包括的なソリューションを導いたデザイナーと主要メンバーが語ります。
Sony (China) Limited,
Shanghai Creative Center,
Kain Xiao
Sony (China) Limited,
Shanghai Creative Center,
Kain Xiao
Sony (China) Limited,
Network Business Division,
Chenyi Li
Sony (China) Limited,
Professional Solution China,
Raymond Leung
Sony (China) Limited,
Professional Solution China,
Raymond Leung
Sony (China) Limited,
Shanghai Creative Center,
Qi Zheng
ビジュアルの力で
クライアントと
イメージを共有
中国東方航空(CEA)のブランドショールームは、上海クリエイティブセンターのデザイナーが社外のクライアントのために直接デザインを手がけた初めてのケース。このプロジェクトのきっかけ、そしてデザイナーの役割は何だったのか。
Qi Zheng:当初CEAは新社屋のラウンジ用に最先端のディスプレイを探しているという話でプロフェッショナルソリューションのチームから相談されたのですが、それ以上のものを求めていることがわかったので、より広い視野で提案するために上海クリエイティブセンターのデザイナーが加わり、CEAが求めているコンセプトやイメージをビジュアル化して、プロジェクトが目指す方向性について皆が共有できるようにしたのです。
Raymond Leung:ただ商品やシステムを単体で提供するだけではない、より総合的なソリューションを提供するというバリューチェーンの上流を目指すべく、早い段階からデザイナーに協力してもらいました。鍵はクライアントを理解することでした。クライアントと議論を繰り返す中で彼らが本当に求めていることを聞き出し、それに対する我々の提案をビジュアル化することで、最終的にはソニーの強みである総合的に解決策を提案する力を理解していただけたのだと思います。受注後も、デザイナーとともにシステムのデザインからコンテンツ制作、施工、さらにはアフターサービスと、すべてに携わることができました。
自宅のリビングのように
寛げる空間
CEAのショールームは、リアルなディスプレイと、最先端のAR技術を使ったダイナミックなデジタルコンテンツという2つのレイヤーで構成されているが、その意図は何だろうか。
Kain Xiao:このショールームは、CEAの巨大な新社屋の中でも日々社員の方々が行き交うメインのエントランス空間に位置しています。この開かれた空間を最大限に利用したくて、CEAのお客様だけでなく、社員の方々をも迎え入れられるような開放的な空間を提案しました。日々の喧騒に包まれるこの複合ビルにおいて、来場者がリラックスできる、自宅のリビングのようにエレガントでゆったりとした空間を作りたかったのです。
この空間の形状は建物の構造上台形をしていたことから、航空機からインスピレーションを得て、航空機の主翼を想起させる工夫を施しました。天井から弧を描くパネルを取り付け、さらに通路のどの位置からも翼の先端が見えるようにしました。入口には全体のシンボルとして巨大な木製の地球儀を設置。奥には虹橋空港の1:800スケールの全体模型、中間のシアター部分には10mの8K x 2KのCrystal LEDディスプレイシステムと3Dのサウンドフィールドを備えたシアターを設け、来場者がまさに時空を超えた旅をバーチャルで楽しめるようにしました。またCEAの企業メッセージである「エコロジー」「サステイナビリティ」「エレガントなサービス」を表すため、造作に多くの木材や植物を使用しました。ARコンテンツは、Global Stage(グローバル・ステージ)、Story of Sky(空の物語)、とVibes of Hongqiao(虹橋の鼓動)の3つのテーマで、それぞれ空間の要素と連動した内容になっています。解説などの情報はARコンテンツに集約することで、周囲の来場者を気にせず、ゆっくり見聞きできるようにしています。CEAもこのコンセプトを理解し、支持してくださったおかげで、実現が可能となりました。色々と自由にやらせていただけて、とても感謝しています。
AR技術でストーリーを語る
このショールームは一箇所に多数のAR機器を導入している中国国内でも有数の事例といえるが、今回のARコンテンツのコンセプトは何だろうか。また苦労した点は。
Chenyi Li:ARコンテンツのコンセプトは、従来の静的な展示から脱却し、直感的に、インタラクティブに楽しめるリアルタイムなコンテンツを提供することです。コンテンツは3つのテーマに分けて用意。Global Stage(グローバル・ステージ)ではCEAの成長とオペレーション、Story of Sky(空の物語)はCEAの歴史の中で成長の節目となった出来事を紹介、Vibes of Hongqiao(虹橋の鼓動)では虹橋空港とその周辺、そしてCEA本社の俯瞰映像を通してCEAや航空業界全体の活発な発展を紹介しています。これらを最新のARデバイスを使ってリアルタイムで楽しめるようにしました。
Kain Xiao:デザイン面で言えば、CEAブランドの価値である急成長やグローバル展開などのコンセプトを、包括的な体験として表現する必要がありました。そこで、各フライトのリアルタイムデータを使い、空港の模型にAR技術で飛行機を飛ばすなど、CEA内のネットワークからしか入手できない情報を用いて、あの場所でしか得られない体験を提供できるような工夫をしました。もっとも苦労したところは、実際の展示物にデジタルコンテンツを同期させることでした。なにしろ、展示空間が完成しないと、AR機器がきちんとリンクして働くのかどうか確証を得ることができないので。
Qi Zheng:例えば、空港の模型は当初かなり細部まで作り込んだのですが、実際に仕上がった模型にARコンテンツを重ねてみると、模型が細かすぎてうまく同期させられなかったのです。そのため、きちんと同期するまで模型の修正を重ねる必要がありました。
Chenyi Li:ARコンテンツのプロジェクトリーダーとしてもっとも大変だったのは、現場が完成するまで進められない作業もあるので、作業量をあらかじめ推測して、限られた時間内で作業を円滑に進め、納期に間に合わせることでした。はじめて16機のARグラスと20台のARモバイル端末を現場に持ち込んだときのことを忘れられません。もちろん事前に何度もテストを重ねましたが、現場で全ての機器が同時に稼働した瞬間は本当に感動しました。
Kain Xiao:現場で端末のキャリブリーションをしているときに、CEAの社員の方が通りかかって我々の作業を興味深そうに見ていたので、少しだけデバイスを装着してもらったのです。彼らの様子を見て、我々のやってきたことが間違っていなかったのだと思いました。
コミュニケーションツールとしてのデザイン
プロジェクトを振り返って、PSCが目指す新しいソリューションビジネスにおけるデザインの役割とは何だろうか。
Qi Zheng:このようなプロジェクトでは早い段階から密にコミュニケーションをとることがとても大切です。クライアントの求めていることを理解するために、デザインの持つ最大の強みを利用しました。それがビジュアル化です。クライアントとの打ち合わせにデザイナーが同席し、ニーズを聞き出し都度イメージをビジュアル化することで、参加者全員が共通のビジョンやゴールを共有することができる。このようなコミュニケーションは深い信頼関係を構築します。結果、明確なコンセプト、ユニークなコンテンツ、そして最先端のソニーの技術を用いた、まさに包括的なストーリーを提供することができたのです。
Raymond Leung:プロフェッショナル機器を販売するビジネスチームとして、以前はデザインや体験についてさほど思いが及んでいませんでしたが、今では、体験価値がもっとも重要だと感じています。我々はCrystal LEDディスプレイシステムだけを売っているわけではありません。クライアントがこれまでにない体験を求めているならば、それを実現できるよう、我々の持っているあらゆる技術を組み合わせて提案していきたいと思っています。これからも、デザイナーの活躍に大いに期待しています。