SONY

The WOW Factory:
Space and Communication Design

WOWを生み出「理想工場は、
いまも昔もFUNに満ちている

自由闊達にして愉快なる理想工場の建設……。そんな創業精神を持つソニーがいま見ている、「少し先の未来」。
その熱気を伝えるべく世界最大規模のクリエイティブ・ビジネス・フェスティバルSXSW(サウスバイサウスウエスト)2017に登場した
ソニーの特設ブース=The WOW Factoryのコミュニケーションデザインと
空間デザインは、どのようなプロセスから生まれたのでしょうか。プロジェクトに参画したデザイナー2人に聞きました。

まるで、細胞がどんどん
広がっていくかのように

The WOW Factoryのコミュニケーションデザインや空間デザインの背景には、どのようなコンセプトがあったのでしょうか。

喜多(アートディレクター):ここ数年、ぼくは主にIFAやCESをはじめとする国内外のコンスーマーエレクトロニクス系のエキシビションの空間デザインを担当してきました。当然、主役は「商品」ですから、可能な限り空間の情報を整理することで、商品が際立つニュートラルでわかりやすい空間デザインを心がけてきました。

しかし今回のSXSWでは、まだ商品に至っていない最新技術を活用したプロトタイプや研究開発段階のプロジェクトをお客様に紹介するということなので、通常のコーポレートのイベントのような「ビジネスベースの商品展示」ではなく、「ソニーが考えるクリエイティビティや技術を体験してもらい、その可能性を感じてもらう場」をしつらえる必要がありました。別の言い方をすると、まずは体験してもらい、それを「じぶんごと」化し、普段の生活や体験に重ね合わせてもらうことで楽しさにつながる……。そんな想像が容易に膨らむようなブースにしたいなと、まずは思ったんです。鈴木さんとは、グラフィックの部分を一緒に進めました。

鈴木(デザイナー):空間デザインは初めての体験でした。何しろ、図面を引いたこともなかったので。技術をまじめに紹介するよりは、「FUN」や「WOW」な感情を色やグラフィックで誘因したいなと思いました。

まだお客様の目に届いていない技術をどう見せるかという時に、喜多さんから「新しくて楽しい技術を知ってもらい、それが拡張していくみたいな。細胞がどんどん広がっていくようなデザインコンセプトはどう?」という案が出たことで、徐々にビジュアル案が固まっていきました。最終的に、まだカタチになっていない技術を色で表現しながら、それが集合体のように集まることで多角形を構成する、というコンセプトに落ち着きました。通常のグラフィックであれば製品を主役にすることが多いわけですが、今回はまるで違う表現を求められたので、とてもやりがいがありました。

ロゴに「Sony」と
入れなかった理由

一番苦心したところ、難しかったところ、チャレンジしたところを挙げるとすると?

喜多:SXSWにはどういったお客様が来て、どういったことを求めているのか、というリサーチから始めたのですが、それに対して、どうしたら一番ソニーを感じてもらえるかという落としどころのチューニングには苦労しました。IFAやCESでのデザインとは変えていかないと、SXSWに集まる人たちには受け入れられないだろうと思っていたので。SXSWでは自由な発想で、「会社から怒られるくらいがちょうどいいのかもしれない」ということに至り、方向性が定まりました。

鈴木:たとえばロゴに関して、展示会場名は「The WOW Factory」ですが、通常であれば、そこに「Sony」と入れるのですが、今回はあえて入れていないんです。「The WOW Factory自体がソニーみたいなものだ」という思いで、技術を作っている工場ということに立ち返り、「わたしたちはいつも、ワクワクさせることを考えているんです!」ということが伝わることを、ただひたすら目指しました。

喜多:こういう大がかりなイベントの空間デザインって、広告会社やイベント業者が手がけることが多いのですが、ソニーでは空間デザインまでインハウスでやることになっていて、そこがすごくいいなと感じているんです。空間にせよグラフィックにせよ、「どういうものがいま、ソニーとしてかっこよく見えるか」ということに関しては、中にいるぼくたちが誰よりも深く真剣に考え、こだわりを持っているわけですから。そこを外部の方任せにせず、携わることが許されているのは、デザイナーとしてかなり幸運なことだと思います。

鈴木:先程、細胞がどんどん広がって多面体になる、というお話をしましたが、ソニーという会社自体が多面体というか、ひとつにまとめられない側面があると思っています。今回のThe WOW Factoryは、そうしたソニーにまた新たな面を加えるくらいの気持ちで、新しい表現にチャレンジしたので、いろいろ大変でしたが、いまはもう達成感に溢れています。

シャツに付けた
エンブレムに込めた想い

当然ながら、この会場に来ることができなかった社員がたくさんいます。彼らには、The WOW Factoryのどのような点を共有してもらいたいと思っていますか?

喜多:実際会場に来て体験してくださった方々の様子をみていると、本当に「WOW」といった驚きや笑顔に満ちていました。その事実は、本当に励みになるのではないかと思います。

鈴木:来て下さったお客様に楽しんでいただくことは第一ですが、ワクワクするものを目指しているソニーを感じていただきたかったし、社員が嬉しく誇りに感じるコミュニケーションにしたいなという想いから、シャツの胸にエンブレムを付けました。

さまざまなかたちでThe WOW Factoryの魅力を伝え、チャレンジしたいと思う社員が、ひとりでも多くなるといいなと思います。

喜多:自分が何かしらのかたちで携わって生み出されたものが、最終的に誰かを喜ばせたり楽しませているのだとしたら、それだけで社会や会社に貢献しているように感じるし、ライフワークとまでは言わないにせよ、仕事がもっと楽しくなるはずですよね。少なくともぼくは、そう感じています。

写真左から、アートディレクター 喜多、デザイナー 鈴木