DESIGN VISION
ソニーのデザイン
リサーチプロジェクト
「DESIGN VISION」
クリエイティビティとテクノロジーで、新たな価値を切り拓くために。
「DESIGN VISION」は、さまざまな視点から世の中の先行きを予見し、未来の方向性を考える、ソニーのデザインリサーチプロジェクト。
クリエイティブセンターのデザイナー自らがフィールドリサーチへ赴き、分析や提言を行うことで、
デザインの力を幅広く活用する取り組みです。
ソニー クリエイティブ
センターの
デザイン
リサーチプロジェクト
ソニーのデザイン部門であるクリエイティブセンターが独自に取り組む、継続的なデザインリサーチのプロジェクト「DESIGN VISION」。技術の進展や世界の情勢がめまぐるしく変化していくなかで、社会における企業のあり方や使命について考え、新たな方向性を導くには、どうすればいいか。「DESIGN VISION」はこの問題に対し、デザインの力を活用して世の中の潮流や感性価値の動向をいち早く捉え、領域や部門を超えて新たな視点やヒントを提示するために、クリエイティブセンター内で発足したプロジェクトです。
「DESIGN VISION」のデザインリサーチは世界各地の拠点を含むクリエイティブセンターのグローバルチームによって実施され、その成果は年単位でレポート化されます。このレポートはクリエイティブセンターにおける製品やサービスなどのアウトプットに役立てられますが、ソニーグループ社員に向けた知見共有や提言活動など、さらに活用の幅を広げようとしています。
デザインリサーチで
“未来のストーリー”
を可視化する試み
「DESIGN VISION」の目標は、デザインリサーチの手法を組織レベルで実践することにより、ソニーが向かうべき未来のストーリーをデザインの視点から可視化することにあります。なお「デザインリサーチ」とは、まだ世の中にないプロダクトやサービス、新たな仕組みなどのヒントを見いだすため、アイデアを着想する当事者自身がユーザーや生活者の目線に立って実際に物事を体験し、手がかりを見つけ出すメソッドを表す言葉です。
また「DESIGN VISION」の特徴としては、“デザイン”という言葉から連想される一般的な分野に限らず、最新の社会情勢や人々の意識動向などの幅広い領域を対象に、クリエイティブセンターのデザイナー自身がさまざまな角度からデザインリサーチに携わり、今後のデザイン活動につながる知見を導いていく点が挙げられます。
マーケティングリサーチをはじめとする従来のリサーチ手法とデザインリサーチにはさまざまな違いがありますが、これらに加えて「DESIGN VISION」は、インハウス組織であるクリエイティブセンターならではの視点を最大限に活用する取り組みといえます。
具体的には、一般的なリサーチ手法の多くが社外の市場環境を対象とするのに対し、「DESIGN VISION」ではソニーの経営方針や研究開発の方向性、事業戦略、ブランド戦略など社内の施策をふまえつつデザインリサーチを実践することで、社内外の動向の関連性をより総合的に捉え、新たなビジョンにつなげていくことが可能です。
「DESIGN VISION」
における
デザインリサーチ実践方法
「DESIGN VISION」のデザインリサーチにあたっては、世界各地へ赴いてのフィールドリサーチをはじめ、クリエイティブセンターが拠点を置く各都市における定点観測、デスクトップリサーチやエスノグラフィ※、製品やサービスのユーザー調査、キーパーソンへのデプス・インタビューなど、多様な方法が用いられます。
いま世界で起きていること、最新のトピックスやカルチャーをデザイナー自身が身をもって理解し、主観的な発見や気付きを互いに共有しながら、ビジュアルを交えて言語化。デザインリサーチ特有の方法である、ロジックよりも感性に訴えるインサイトを重要視し、主観的経験をとおして実状を把握しながら、個別のコンテクストに対する共感や理解を深めていきます。
このデザインリサーチで得られた結果を元に、社会全体の潮流や地域特有の変化などを分析。ワークショップなどの場を交え、世の中の複雑な動向に対してソニーがどのように行動し、いかなる価値を提供するべきかを掘り下げ、一連のストーリーとして文章化します。
これらのストーリーを集約したものを、「DESIGN VISION Insight」として年次レポート化。2018年からは冊子を発行し、ソニーグループ社内での配布と情報発信を行っています。また、レポートの一部を当サイトで公開するなど、さらなる知見の共有を目指していきます。
なお、20年は新型コロナ感染症の世界的拡大の影響を受けて、オンラインによるリサーチやワークショップを導入。デザインリサーチの実践やプロセスの共有にあたり、新たな技術やツールを活用する取り組みにもチャレンジしています。
デザイン領域を広げる
「DESIGN VISION」の展望
また、「DESIGN VISION」の活動はデザインリサーチを主軸としながらも、“リサーチ”だけにとどまりません。重要なのは、デザインリサーチで得られたビジョンを、どのように具体的なアクションへとつなげていくか。デザイナー自らが体験の中から紡いだストーリーを、新たなプロダクトやサービス、コミュニケーションなど、具体的なデザインワークへと落とし込んでいく道筋が求められます。
こうした姿勢に基づき、クリエイティブセンターでは「DESIGN VISION」の成果をさまざまなプロダクトやサービスなどのアイデア創出に活用。さらに、デザインリサーチのアプローチによって可視化された未来のストーリーをアイデアソースとして、数々の実験的なプロジェクトが進行しています。
その一つが、イタリア・ミラノで開催される世界最大規模のデザイン見本市「ミラノデザインウィーク」で発表されたロボティクス技術のインスタレーション「Affinity In Autonomy」。「DESIGN VISION」で提示されたストーリーを独自の視点のもとに発展させ、人とロボティクスの新たな共生関係を体験型展示として表現しました。
また、プロダクトの印象や価値を大きく左右する「CMF(Color/色、Material/素材、Finish/加工)」の領域で、今後のデザインの方向性を導き出す「CMFフレームワーク」プロジェクトも、「DESIGN VISION」の活用例の一つといえるでしょう。
加えて力を注いでいるのが、「DESIGN VISION」の成果をレポートやプレゼンテーションなどの形でグループ社内各所へ発信する取り組みです。デザインリサーチに携わったデザイナー自らが、部門や組織を超えた多彩な職能からなるグループ社員への浸透促進に携わるのは、ソニーとしても前例のない試みとなっています。他にも、年次レポートにもとづく施策を各事業部の中期戦略へ盛り込む動きが少しずつ広がるなど、「DESIGN VISION」をさまざまな局面で活用していく取り組みが進められています。
デザイン思考をはじめ、ビジネスの世界でもデザイン的手法への注目が高まりつつある昨今。
ソニーにおいて「DESIGN VISION」とは、デザインリサーチにもとづくビジョンを、
中・長期的な視点から経営やブランド戦略、商品企画やマーケティングにも広げていくための、
実践的な方法論でもあるのです。