ファンケル
元気ステーション
世の中に新たな
健康づくりの場を
ファンケル 銀座スクエア7階のワンフロアを使用し、ゲーム感覚で健康づくりが楽しめるエンタテインメントコンテンツを提供している
「ファンケル 元気ステーション」。それらのコンテンツは、ソニーのプロジェクトチームが株式会社ファンケル(以下ファンケル)の
「お客様に健康づくりのきっかけを提供したい」という要望に寄り添い、つくりあげたものです。
プロジェクトの軌跡をファンケルの馬見塚様を交え、メンバーが振り返ります。
ソニー株式会社
クリエイティブセンター
ロケーションバリューデザイン室
デザイナー
庄司
株式会社ファンケル
執行役員
ファンケル銀座スクエア館長
馬見塚様
ソニービジネスソリューション株式会社
ロケーションバリュー企画室
UXプロデューサー
内山
健康100年時代を
楽しくサポートするために
ファンケル 銀座スクエア7階に位置し、楽しみながら健康づくりができるゲーム型コンテンツを来場者に無料で提供している「ファンケル 元気ステーション」。ファンケルはなぜこのような場をつくろうと思ったのだろうか。
馬見塚ファンケルは生涯にわたる健康づくりのパートナーとして、サプリメント事業を推進する一方、これまでファンケル 銀座スクエアで体力測定を無料で行える予防医療ミュージアムを運営してきました。そして今回、全館リニューアルに際し、「たのしく生きる、健康100年時代へ」という事業メッセージのもと、もっと多くの人々の健康づくりに貢献したいという想いから、世代を問わず楽しめるゲーム型コンテンツを揃えたフロアに刷新しようと考えました。
そこで相談したのが、ソニービジネスソリューションの内山さんでした。世界中の人々を熱中させるゲームやエンタテインメントを生み出してきたソニーの力を借り、外国籍の観光客も多く、老若男女が集まる銀座という街にふさわしいコンテンツをつくりたいと思ったからです。6種類のコンテンツの素案を伝え、「お客様が楽しみながら、健康の気づきを得て、来た時よりも元気になって帰ってもらえるデジタル体験を考えてほしい」と依頼しました。
内山私はB2B領域で空間プロデュースを手がけているのですが、このプロジェクトの話を聞いたときに、高いデザイン性が重要なポイントになるなと思いました。そこで初期段階からデザイナーの庄司に参加してもらい、どうすれば馬見塚さんの要望に添えるか、二人でアイデアを練っていきました。
庄司今回のプロジェクトに際して私たちが最も大事にしたのは、新たな健康づくりの場を創出しようとするファンケルの方々の想いに寄り添い、その本質を掴んで具現化すること。内山と議論を重ねるうちに、個々のコンテンツの内容や見た目を考え、それぞれの楽しさを追求するだけでは「来た時よりも元気になって帰ってほしい」という要望を叶えられないのでないかと思い至りました。課題は、このフロア全体を貫くストーリーをいかにデザインするかだと考えたのです。
そこで初回のプレゼンテーションでは、ソニーのテクノロジーを使った各コンテンツのアイデアや可能性を説明しつつ、「どのようにしてお客様に元気になっていただくのか。そのユーザー体験を実現するストーリーこそ大切です。それを一緒に考えさせてほしい」と提案しました。そのような私たちの考えにファンケルの方々も共感いただき、プロジェクトが本格的にスタートしました。
大切なのはメッセージを
伝えるストーリー
ソニーのメンバーたちは、なぜストーリーが重要だと考えたのだろうか。さらに、ファンケルから提示された6種類のコンテンツをどのようなストーリーに仕立てのだろうか。
庄司私たちソニーのデザイナーはミラノデザインウィークの出展など多くの空間・UXデザインを手がけていますが、常にその場に込められたメッセージを伝えるストーリーを大切にしています。今回のファンケル 元気ステーションでいえば、個々のコンテンツは楽しくても、フロアを出るときにお客様の中に何もメッセージが残っていなければ、意味がありません。馬見塚さんをはじめ、ファンケルの方々はこのフロアに「お客様に健康への気づきを得てもらい、元気になって帰ってもらいたい」という想いを込めています。そこで内山とともに、このメッセージをお客様に届けるためのストーリーを考えていきました。
ファンケルの方々から提示された6種類のコンテンツは「片足立ち測定/歩行能力測定/柔軟性・筋力アップ/食事・栄養情報/反応速度測定/正しい呼吸法」という健康づくりの基本となるもの。これらのコンテンツをいかに編集し、1本のストーリーにしていくか。内山と話し合いを重ねながら、お客様に身近に感じていただけるように「自分の身体について知る」「楽しく学ぶ」「元気になる」という分かりやすいテーマでコンテンツを分類し、それを順番に体験してもらう形式を考案。フロアを訪れたお客様に、まず自身の健康に関心をもってもらい、つぎに健康づくりに役立つ栄養情報を伝えて、最後に正しい呼吸法でリフレッシュして、元気になって帰ってもらう。そんなストーリーを練り上げていきました。
内山さらに、私はストーリーを考える一方で、プロデューサーとしてデザイナーの能力を最大限に発揮できるよう現場調整に努めました。ファンケルの方々も考えていくうちに「もっとこうしたい」というリクエストがでてきます。そこで私は先方の現場担当者と密にコンタクトを取り、そこで得た新たな情報を庄司に伝え、ファンケル側の要望の変化に細かく対応しながら、ストーリーの完成度を上げていきました。
馬見塚庄司さんと内山さんが提案してくれたストーリーは、私たちの「お客様の意識を変えるような体験を提供したい」という要望に合致したものでした。さらに有り難かったのが、コンテンツにとどまらず、内装を含む空間全体を考えてくれたこと。内装は他のインテリア会社が担当しているのですが、あるときに「内装もストーリーの重要な要素なので、イメージを共有するために、ファンケル・インテリア会社・ソニーで定期的にミーティングを持ちませんか」と提案を受け、そうさせてもらいました。おかげで、統一感を持った空間設計が行えました。
誰もが楽しく、
やりたくなるコンテンツを
メンバーたちはストーリーを完成させた後、ソニーのプロダクトなどを使用し、個々のコンテンツをつくり込んでいった。ユニークな名前が与えられた、それらのコンテンツにどのような創意工夫を凝らしたのだろうか。
庄司ファンケルの方々の「お客様に楽しく体験していただきたい」という想いを実現するために、各コンテンツにソニーらしい遊び心を盛り込もうと考えました。例えば、足の筋力やバランス感覚を計る片足立ち測定のFLAMIN-GO(フラミンゴー)では、ただ立っている時間を計測するだけでは面白みに欠けるため、目の前のスクリーンに銀座の街並みを映し出し、片足立ちの間、その風景の中を進むようにすることで楽しい時間になるように工夫しました。
また、柔軟性・筋力アップのMANE-CCO(マネッコ)は、スクリーンに表示されるポーズと同じポーズをとり続けるコンテンツなのですが、スクリーンに表示されたお客様のシルエットに小鳥をとまらせたり、足元の花を成長させたりすることで、じっとしている時間を飽きさせないように演出しています。さらに、こだわったのが各コンテンツへの没入感を高めるサウンド。FLAMIN-GOであれば、街中を疾走するスピード感のある曲調にするなど、各コンテンツにより集中できるように細部までこだわりました。
庄司各コンテンツのビジュアル表現についても、幅広い年代に元気を届けることを意識してデザインしました。コンテンツの冒頭に使い方を説明するキャラクターがでてくるのですが、お客様に「私はこの年齢層ではない」と思わせないように、フラットで爽やかな印象を与えるイラストに仕上げました。また、各コンテンツのビジュアル表現についても、カラーはグリーンからイエローへのグラデーションを基調とした明るい色合いにするとともに、表示する文字も柔らかな印象を与えるフォントを選びました。
また、お客様が迷わずに使えるように操作性も追求しています。コンテンツ内のコース選択ボタンなどは年代別の平均身長などを調べたうえで、ボタンの大きさや位置を幾度もシミュレーションして設定。さらに、外国籍のお客様でも不自由なく使用できるように英語や中国語も併記するなど、国籍や年齢を問わず、すべてのお客様が楽しみながら健康チェックができるように配慮しています。
馬見塚庄司さんはお客様の立場でコンテンツの隅々まで細やかにデザインしてくれました。例えば、ストーリー最後の休息ゾーンにある正しい呼吸法を紹介するSUU-HAKU(スーハク)の映像演出。これは森林をイメージした映像のなかで、呼吸法を実践するコンテンツなのですが、庄司さんが「外から来たお客様がこの世界観に自然に入り込めるように、来場された時間帯に合わせて、昼の森林と夜の森林を分けて映し出したい」と提案してくれて、なるほどと納得しました。そんな工夫の積み重ねが、各コンテンツの体験価値の向上につながっていると感じています。
(写真左)各コンテンツのカラースキーム (写真右)時間帯に合わせて絵が切り替わるSUU-HAKU(スーハク)
ブラッシュアップを続け、
場の"鮮度"を保っていく
2020年8月、ファンケル 銀座スクエアのリニューアルグランドオープンに伴い、ファンケル 元気ステーションも営業を開始した。訪れたお客様の反応はどうだったのか。 また今後、メンバーたちはどのような展望を抱いているのか。
馬見塚ファンケル 銀座スクエアのリニューアルオープンから数ヶ月後に、来館者アンケートをとったのですが、ファンケル 元気ステーションは実に100%のお客様が「楽しかった」と回答してくださり、私たちも大変驚きました。社内の反応もよく、好調なスタートが切れたと思います。ただ、私はもっと楽しくできると思っています。アンケートの詳細項目を見ると、お客様の年代によっては「難しい」という意見もあり、そういった声にきめ細かく応えていきたい。これからも庄司さんと内山さんの助けを借りながら、ブラッシュアップを続けて場の"鮮度"を保っていきたいと思います。
内山私たちも馬見塚さんの「つくって終わりではない」という気持ちに応え、コンテンツの改善提案を続けることで、ファンケル 元気ステーションのさらなる発展に貢献していきたいと思います。そのなかで、ソニーのテクノロジー・デザイン・コンテンツという3つの力を結集し、新たなユーザー体験の創出に挑戦していきたいです。
庄司外部企業から依頼されたプロジェクトでは、いただいた要望に寄り添い、そこに込められた想いを世の中にいかに伝えていくかが大事だと考えています。今回は、内山がファンケルの方々が抱く要望の本質的な部分まで聞き出し、共有してくれたことで、ファンケルの皆さんの要望に寄り添いながら、デザインすることができました。今後もファンケルの方々の想いに寄り添い、内山やエンジニアと力を合わせ、訪れたお客様が常に新鮮な気持ちで健康を意識できるよう、ファンケル 元気ステーションのブラッシュアップをサポートしていきたいと思います。
健康100年時代を楽しくサポートする、ゲーム型コンテンツを提供する「ファンケル 元気ステーション」。
ソニー クリエイティブセンターは今後も、
デザインの力で新たなユーザー体験の創出に挑戦していきます。