SONY

GHOSTBUSTERS
ROOKIE
TRAINING

技術の実験を、
エンタテインメント体験に

映画『ゴーストバスターズ』の一員となり、ゴーストを退治する体験型ARプログラム「GHOSTBUSTERS ROOKIE TRAINING」。
もともとはAR(拡張現実)技術の実証実験だったものを、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(以下ソニー・ピクチャーズ)との
コラボレーションにより、エンタテインメント体験に昇華させた本プロジェクト。
その背景には、「ソニーの技術とコンテンツが融合すると、こんな新しい世界が創れる」ことを実証しようとするデザイナーとエンジニアの想いがありました。

技術をいかに
ユニークな体験にするか

「GHOSTBUSTERS ROOKIE TRAINING」の発端は、ソニーのR&Dセンターで開発されていたARグラスの実証実験でした。開発したエンジニアは、開発要素が切り離された技術単体の実験にするのではなく、統合された顧客体験の創出に挑戦し、ゲーム業界やエンタテインメント業界、一般の方からも生のフィードバックをもらうことで、ARをエンタテインメントに応用するために必要な技術や課題を徹底的に洗い出そうと考えました。エンジニアから「ARを使って、現実空間を遊び場に変えるような新しいエンタテインメント体験をつくれないか」と相談を受けたデザインチームは、カリフォルニア州のロサンゼルスに拠点を置くソニー・ピクチャーズとのコラボレーションを着想しました。

デザインチームは、まずソニー・ピクチャーズのマーケティングチームから、コラボレーション可能な複数の映画タイトルを入手し、各作品をもとにどのような体験がつくれるかを考察。その中で注目したのが、「誰もが知っていて映画の世界に入り込みやすい」「AR技術を生かしやすい」などの条件を満たしつつ、メンバーが子供のころから大ファンであった『ゴーストバスターズ』でした。半透明に光るゴーストはAR技術で再現しやすく、参加者が新人ゴーストバスターになり、屋外で実際にゴーストを探しまわって退治するという設定にすれば、誰もが分かりやすく楽しめるのではないか。そんな体験の構想をソニー・ピクチャーズのトップと、オリジナルの『ゴーストバスターズ』(1984年)の映画監督アイヴァン・ライトマン氏に説明したところ「面白い!ぜひ、うちのスタジオを使ってやってみよう」と快諾され、プロジェクトがスタートしました。

「GHOSTBUSTERS ROOKIE TRAINING」の舞台となったソニー・ピクチャーズの屋外スタジオ。
実際の映画に登場した車やセットがそのまま展示されている

日常空間を異世界に変える、
新たな体験デザイン

「GHOSTBUSTERS ROOKIE TRAINING」で目指したのが、日常と非日常が融合する新たなエンタテインメント体験をつくること、ならびにそれを実現するための技術的挑戦を行うこと。そして、その体験に参加した人々が映画の世界観に没入し、主人公になりきった感覚で驚き、興奮してもらうことでした。開発メンバーはまず、人々がどうすれば非日常の体験をリアルに感じるのか、その意識の正体をプロトタイピングによって探っていきました。

映像だけでなく、物理的な重さのあるトラップボックスを操作するときや、ゴーストに向けてビームを放ったときの感触が手に伝わったとき、セットの一部が突然動き出したときなどに、日常と非日常が重なり合うヒントがあるのではないかと着目。そこから、バーチャルなゴーストが現実のモノを動かすなど、現実の人やモノと仮想の映像を相互作用させ、驚きを生み出していきました。さらに、それらの驚きのポイントをスタジオのリアルな街並みを歩きまわってゴーストを探すというシナリオの中に取り込み、異世界のゴーストが日常に出現するという体験のリアリティーを追求しました。

アイデアを絵コンテで表現し、プロトタイピングによる検証を重ねて、ストーリーを作成

ビームを放った感触を体感できるなど、ARや触覚技術などを応用し、日常と非日常が融合したエンタテインメント体験を創出

映画の世界観に没入してもらうために、エンタテインメントとしてのゲーム性にも配慮。現実世界が見えているというARの特性を生かし、3人のチーム制とし、1人がゴーストを見つけ、1人が捕獲するトラップボックスをセットし、1人がそのボックスにゴーストを入れ込むという連携プレイにすることで、参加者が相談しながら協力してゴーストを捕まえられるようにしました。さらに、どこでゴーストが出現すると驚きと納得感があるかを、プレイヤーの歩く歩数と秒数を測定しながら検証し、プレイ全体から受ける感情の起伏と、画像認識技術のバランスを取りながらゲームデザインを行いました。

また、開発途中でその重要さに気付いたのが、「音」による演出。PlayStation®に携わる国内外のサウンドチームもプロジェクトに迎え、BGMでシーンの状況を理解しやすくしたり、効果音で次の行動へ誘導したりと目には見えない「リアル」の演出も加えました。さらに、参加者がゴーストバスターズの一員になりきれるよう、最初に映画のようなコスチュームに着替えてもらうようにすることで、体験への入り口を演出。また、ゲームのガイド役には実際の俳優を起用して、ゲームを盛り上げるとともに、美術セットや小道具なども映画の世界観に忠実に、細部まで作り込みました。同時にARグラスにネットワーク機能を追加するなど、体験と技術両方の完成度を高めていきました。

ARグラスから見える実際の映像。ゴーストの出現位置やタイミングなども仮説と検証を繰り返し、全体のゲームバランスを調整

コスチュームやセット、小道具などの物理的なアイテムが、映画の世界観に没入できる仕掛けとなっている

チュートリアルビデオはコミック版『ゴーストバスターズ』のイラストレーターに依頼(左) 参加者の表情(右)

チュートリアルビデオはコミック版『ゴーストバスターズ』のイラストレーターに依頼(上) 参加者の表情(下)

日常と非日常が溶け合う
新しいエンタテインメントの原型へ

「GHOSTBUSTERS ROOKIE TRAINING」の体験イベントは、ソニー・ピクチャーズのスタジオで映画関係者やゲームクリエイターの方を対象に開催されました。その中で開発メンバーたちを喜ばせたのが、参加者が互いに様々な会話をしながら、生き生きと、まるで子どもに戻ったかのようにはしゃぎながらゴーストと戦い、そしてゴーストを捕まえたときに参加者同士が自然とハイタッチをしてくれたこと。参加者からは、「映画館の体験を拡張するものだ」「現実の生活空間に何かが忍び込む感覚は、究極的に個人化された新しいエンタテインメント体験を生み出している」など高い評価が寄せられました。また、途中段階のプロトタイプを試していただいたアイヴァン・ライトマン監督からは、「35年前に僕が映画として描いた世界がやっと実現された」とのコメントをいただきました。

この「GHOSTBUSTERS ROOKIE TRAINING」は、より多くの人からフィードバックをもらうため、一般の方も対象にし、Ginza Sony Park(銀座ソニーパーク)でも開催。アメリカの広大なスタジオの屋外空間から、人々の行き交う立体的な屋内空間へとゲーム体験の場を移した本プログラムは、ここでも好評を博し、幕を閉じました。開発メンバーたちは今回のフィードバックを生かし、これからもリアルとバーチャルが融合する新たなエンタテインメント体験を追求し続けます。

左:写真左から、エンジニア 塚原、ゴーストバスターズのブランドを管理するGhost Corpsのエリック・ライヒ氏、プロデューサー 山上。右:デザイナー 石井

現実空間とAR技術を融合させた、
体験型プログラム
「GHOSTBUSTERS ROOKIE TRAINING」。
技術を新たなエンタテインメント体験として、
世の中に届けるために、これからも挑戦を続けます。

※イベント画像提供:Ginza Sony Park