One Slate
“一枚の体験”という
アートピース
テレビは空間を構成するひとつのアート=体験へ。映像体験を突き詰めた先に、
アートピースのように空間に佇む、これまでにない新たなテレビの姿がありました。
リビングに凛と佇む一枚板
リビング空間にある要素や作法を切り取って再構築することで、自然とリビングに寄り添うプロダクトを目指したデザインコンセプト「Slice of Living」。この発想をさらに純化させ、テレビという装置を家具やインテリアを超えた、唯一無二の存在に昇華できないかと考え、導き出された答えが「One Slate(すべてが凝縮された一枚の板)」でした。空間に置かれたオブジェのように、立ち姿そのものが美しく、鑑賞するという「体験」を含んだアートに近い存在。これまでのテレビの既成概念にとらわれない、特別なリビング空間をスタイリングするための、アートピースとなる新たなテレビへの挑戦でした。
一枚で完結する
最もピュアな体験
目指したのは、美しい佇まいと映像体験をひとつにした、アートピースのような存在。「One Slate」というコンセプトのもと、極限までシンプルな佇まいを模索する中で、スピーカーやベゼル、スタンドなどの要素を加えるのではなく、有機ELディスプレイの特性を利用することで、画面そのものにあらゆる機能を内包できないかと考えました。そこで画面自体を振動させて音を出すサウンド技術「アコースティック サーフェス」を組み合わせ、「画」と「音」の体験を一枚の板に凝縮。同時に、壁に立て掛けたような自然な佇まいにするため、裏からもう一枚の板によって支えるミニマルな構造にたどり着きました。「画」と「音」と「佇まい」をひとつに融合することで、余計なエレメントが何ひとつない、最もピュアな“一枚の体験”が完成しました。
ガラス素材による美しい構造体
映像への没入感を高めるため、余計なエレメントを一切なくした、画面だけの一枚の板。そのミニマルな造形を生み出すために、テレビの構造から見直しを図りました。画面をより薄くするため、通常パネルの裏側にある基板や端子類を切り離し、背面を支える板にすべてを集約。ガラスで覆うことで強度を確保し、美しく艶やかな一枚のガラス板のように仕上げています。また、背面の板は横幅を極限まで狭めることで、斜めから見たときにも視界に入りにくく、一枚の板であることを印象付けています。画面の傾きにも検討を重ね、視聴しやすく、心地よく自然な角度に調整。一枚板のシルエットが際立つ、オブジェのような凛とした佇まいが生まれました。これまで部屋の隅に設置されることの多かったテレビを、そのポジションから解放し、置いたときも、壁に掛けたときも、空間と響きあうアートピースのような存在に昇華させました。
リビングに学ぶ、
素材のコントラスト
「音」と「画」を融合した新しい体験が、リビング空間に心地よく馴染むように、細部まで素材にも徹底的にこだわりました。画面の側面のアルミは染色や化学研磨を緻密にコントロールし、ガラスと馴染む光沢感を持ちながら、主張しすぎない質感を表現。視聴に最適なバランスで背面の左右に配置された「アクチュエーター」は、アルミ素材のバーで覆い、アイコニックな印象に仕上げています。
背面の板には、ガラスと対比をなす柔らかな印象のファブリック素材を選択。内蔵されたサブウーファーの低音がさらなる臨場感を与えます。布地やガラス、アルミなど、リビング空間に多く存在する素材を組み合わせることで、自然に空間と調和するデザインを実現しています。
理想のかたち
“一枚の体験”の実現。そのためには造形やディテールを極限までシンプルに研ぎ澄ませる必要がありました。素材や質感の検証はもちろん、大きなサブウーファーを収めながらも薄く見える部品レイアウト、背面まで美しく使い易いケーブルマネジメントなど、矛盾する数多くの技術的課題に取り組みました。デザイナーとエンジニアがお互いの領域を越えて、時には激しい議論を重ねながら理想のかたちを追求しました。
デザイナー 桑尾
「画」と「音」と「佇まい」をひとつにし、極限までシンプリファイされた映像体験。
アートピースのように研ぎ澄まされた“一枚の体験”が、空間におけるテレビの在り方を変える。
究極の映像体験を求めて
「究極の映像体験とは何か」を突き詰めていく過程で、スタンドがありベゼルがある従来のテレビの典型から脱却し、まったく新しいフォームファクターを創造する必要がありました。それは映像機器として“あるべき姿”への回帰でした。テレビの佇まいが変われば、置く場所が変わり、ライフスタイルすら変わるはず。究極のシンプリシティと究極の映像体験を融合させたことで、リビング空間の新たな可能性が開けたのではないかと思います。
チーフアートディレクター 田幸