高田 : ソニーにとって九州は、イメージセンサーを生産している拠点があるなどつながりの深い場所です。そこに今回、九州初のソニーの直営店舗となるソニーストア 福岡天神をオープンすることができました。福岡天神店は、福岡市中心部の天神にあるビルの1、2階に店を構える路面店なので通りを歩いている方も入って来やすく、さらに同じビル内には児童館があるため小さな子どもを連れた方も多く訪れるのが特徴です。また、福岡は中国や韓国とも距離が近く、外国人観光客の方が多く来られるエリアです。先日は、海外出身のスタッフが中心になって、浴衣を着てお客様をお迎えして、浴衣を体験いただくと言う日本文化を伝えるイベントを行いました。
私たちが目指しているのは、地元に末永く愛される「明るいお店」です。まずはしっかり地域に密着しながら、大人から子どもまで、だれもが気軽に来られるお店にしていきたいと考えています。買うものが決まっていなくても、ふらっと立ち寄って楽しんでいただき、「今日は来て良かったな」「いい事を知ることができたな」と、少しでもお客様の好奇心を満たし、感動体験を提供できればと思っています。また、温かみのあるアットホームな雰囲気を出すよう、店舗の内装も木を基調としたものにしました。
高田 : 明るいお店をつくるために、お店で重視したのがホスピタリティーや協調性です。20代~50代まで幅広い年齢層で、かつ多国籍なメンバーが集まっています。そこでまず心がけたのは、異なる背景や考え方を持つ集団の中に、さまざまな意見が自由にでやすい環境や仕組みをつくること。これは私自身、フランスや中国に赴任して、ソニー製品のマーケティングという仕事を通して、さまざまな国の人と接してきた経験や、15年ほどマネージメントを務めてきた経験から培われてきたもので、このお店を立ち上げる際もぜひそうしようと考えていました。
まずはメンバーが自由に発言できるように、自分から率先してコミュニケーションをとり気軽に話せる雰囲気づくりをしています。
またスタッフ間での共有事項をできるだけ分かりやすい言葉で伝えることも大事です。以前ミーティングで、「引き金」という言葉を使ったのですが、海外出身のスタッフから「分かりにくい」と指摘を受けたことがありました。それ以来、だれもが分かりやすい言葉を使うというのが店舗全体の共通意識になっています。
来店されたお客様の対応にとどまらず、お客様に来店いただくための活動も、3~4人のスタッフでグループを作り、一体となって進めています。先日は、福岡に新しくできた商業施設のオープニングイベントに出展して、防水スピーカーの楽しさを体験していただきました。
海外からのお客様が母国語を話すスタッフを見つけるととても喜んでくださります。日本人のお客様からも、海外出身のスタッフが日本語で一生懸命に案内している様子をみて、よく褒めていただきますね。また店舗では毎朝「いらっしゃいませ」「少々お待ちください」などの言葉を日本語、英語、中国語で唱和しているのですが、ネイティブのスタッフがそれぞれいるのでスタッフの外国語の言葉の覚えが早いのも良い影響です。海外からのお客様から「また来るね」と言っていただけたときはとてもうれしいですね。
高田 : ソニーストア 福岡天神店では、より地域に密着していくために、地元の企業や人との連携を積極的に行なっているのも特徴です。その一つが、オープン時に発売しました博多織のパソコンケースとアクセサリーポーチ、カメラ用ボディスーツです。福岡出身のメンバーが考え、博多織織元の「西村織物」、地元のカメラアクセサリーブランド「ULYSSES」のご協力のもと企画を進めました。地元の文化を取り入れながら、さまざまな企業と連携することはこれからもぜひ続けていきたいと考えています。
オープン時には、地元の人を主人公にしたポスターを展開するなど、地域住民の方との関係を深める取り組みもしています。年齢や職種もさまざまな人に登場していただき、好きなソニー製品を語ってもらいました。
また、近隣の保育園から上の階の児童館に子どもたちが遠足に来たときは、スペースが足りず一時的にソニーストアのスペースを貸してほしいとの依頼があり、シアタールームで子どもたちに映画を見てもらったことがありました。普段から子どもたちを店内でよく見かけるのは福岡天神店ならではの光景かもしれませんね。
オープンしてからこれまでの間、電化製品に興味が有る方はもちろん、親子やシニアまでいろいろな方が来店してくださり、私たちもとても楽しいです。
高田 : 私たちは、お店としての機能だけでなく、楽しい体験を提供する場でありたいと思っています。ですからソニーストア 福岡天神では、これからも多様なスタッフと力を合わせていろいろなアイデアを出し合いながら、お客様の好奇心を喚起できるようにチャレンジしていきたいと思います。
ソニーにはいろいろな人がいるので普段ダイバーシティの促進の必要性を特別に意識することはあまりないのですが、国籍や年齢、性別やその人の経歴に関わらず、その人の強みをいかして、活躍できる人をしっかり責任のある職に登用することは大切にしていくべきだと考えています。技術や知識はあとからでも補えますから、その人自身のやる気や想いが何より大事だと思います。そうした会社としての姿勢が職場の良い雰囲気につながり、ひいてはお客様に楽しい体験を提供することにつながっていくのではないでしょうか。