DIVI@Sony※は、ダイバーシティ&インクルージョン推進のために、社員目線で感じている課題を見つけ、社員自らが解決に向けて活動するための、国内ソニーグループを横断するプロジェクトです。ダイバーシティ&インクルージョンについてメンバー自身が理解を深め、社員の意識を高めることや、現場の生の声をマネジメントへフィードバックし、制度や職場環境の整備・改善提案に生かすことなどが、主な活動内容となっています。DIVI@Sonyの発足からこれまでの軌跡と、これからの活動に対する展望をご紹介します。
DIVI@Sonyは、社長※直轄のダイバーシティ推進プロジェクトとして、2005年7月に発足しました。メンバーは、国内ソニーグループの社員20名で、さまざまな部署から選出されました。発足当初はジェンダーにフォーカスし、女性社員活躍推進の取り組みからスタート。女性社員とマネジメントに対するヒアリングや意識調査を行い、社内でのキャリア形成や昇進における男女差の実態を把握しました。そこから見えてきた課題を人材育成、コミュニケーション、ワークライフバランスの観点で整理し、社長のコミットメントのもと、ボトムアップ活動を開始。マネジメントを目指す女性社員の抱える課題への理解と意識向上を目的とした座談会、女性マネジメント同士のネットワーク形成をサポートするセミナーや研修、マネジメント層の啓発を目的としたラウンドテーブルの3施策を実施しました。2007年には、国内ソニーグループの女性マネジメントを対象とした「DIVI マネージャーズ・ミーティング」を開催。冒頭、当時 社長 兼 エレクトロニクスCEOだった中鉢良治がソニーの将来の展望やダイバーシティに関するスピーチを行いました。当時は多くの企業が女性活躍推進施策を始めたばかりで、参考となる情報が少なく、メンバーは何が適切な活動かを模索しながら活動していました。
人事部門との連携や提言も積極的に行いました。2007年にはDIVI@Sonyが提言した、5年後に女性マネジメント倍増を目指すという数値目標設定が、人事部門の活動目標として承認されました。また女性マネジメントの育成に向けたメンター制度の導入を提案。まずDIVI@Sonyの参加メンバーがソニーの役員とのメンタリングトライアルを行いました。その有効性が実証された後、メンタリングはより広い人材を対象とした人事施策として実践導入されました。2008年には、ダイバーシティ推進の専任組織である「ダイバーシティ開発部(当時)」が人事部内に発足。同組織との連携を深めることで、女性活躍推進への取り組みをさらに加速させました。
発足当初から行っていた女性社員向けの座談会は対象層を広げて実施され、社員の生の声がマネジメントの啓発や多様な働き方の検討に活かされました。2009年から、統括部長・統括課長ワークショップに注力し、女性部下のキャリア支援についてディスカッションの場を設けました。参加した統括部長からは「こういった活動が人事部門でなく、現場のメンバーによって運営されていることはよいと思う。」「社員の声を直接反映した活動なので説得力や納得感がある」といったコメントが寄せられました。
ワークライフバランスと働き方に対する活動にも着手。当時はまだ「働き方改革」に取り組んでいる企業も少なく、試行錯誤しながらの活動でした。まずは、社員に「ノー残業デー」アンケートを行い、働き方に対する意識や実態を把握。社員の活性化を目的とした働き方の見直しを提言しました。また、未就学児を持つ女性社員とその上司・部下にもヒアリング調査を実施し、時間や場所にとらわれず、効率的に力を発揮できる働き方が必要であることを、年次活動報告会などトップへの報告の場で問題提起。仕事と家庭生活の両立支援制度の改善と拡充を提言し、結果的に人事施策として制度化されました。
DIVI@Sonyが9年目を迎えた2013年には、ソニー株式会社がダイバーシティステートメントを制定しました。ソニーグループ全体でダイバーシティを推進することが明文化されたことで、DIVI@Sonyは、ソニーとして優先度が高い活動であることを現場に示しました。2013年に開催した「DIVI ウィメンズフォーラム」は、ソニーからのメッセージを直接発信する場で、当時、社長 兼 CEOだった平井一夫(現ソニーグループ株式会社シニアアドバイザー)が登壇し、ダイバーシティ推進をグループ全体の経営方針の一つに掲げることや、女性社員のキャリア形成をサポートすることなどをコミットしました。また、トップマネジメントとのQ&Aセッションでは、女性がより力を発揮するためのアドバイスを求める声に対し、「まず、積極的に前に出て、自分の考えを発言してほしい。組織の中で登用される人は、自分の意見をきちんと持って発言できる人。気付かない上司では困るが、気付いてもらえる努力も必要。」とDIVI@Sonyのアドバイザーを務めた当時の役員が回答しました。会場には約500名、厚木の事業所との中継を含めると約650名の女性社員がトップマネジメントとの対話に耳を傾けました。
10周年を迎えた2015年からは、DIVI@Sonyのスコープは、外国籍社員の抱える課題や男性社員の育児と仕事の両立へと広がっていきました。「育児と仕事の両立を考えるワークショップ」や「外国籍社員のキャリア形成をサポートするワークショップ」では、多様なバックグラウンドの社員による意見交換が行われました。また、育児両立支援制度の活用をテーマとした「DIVI@Sonyタウンホールミーティング」も開催しました。2016年には介護との両立などのテーマが加わり、現在に至るまで数々の施策や提言を行っています。
これまでDIVI@Sonyのメンバーは職場から選ばれていましたが、公募もスタート。「自分もメンバーとして社内の課題解決に取り組み、会社に貢献したい」といった理由で参加希望者が集まりました。さまざまな職場から多様なバックグラウンドの社員が参加し、業務とは異なるテーマで活動するプロジェクトは、社内ネットワークを構築できる、直接トップマネジメントと対話できる、といったことも魅力のひとつになっています。
現在のプロジェクトオーナーは、ソニーグループ株式会社 会長 兼 社長 CEOの吉田憲一郎。参加メンバーは、外国籍社員を含めて総勢19名です。吉田への活動報告は、コロナ禍によりオンライン開催になりましたが、メンバーは活動で得られた気付きを元に提言するだけでなく、活動へのアドバイスを吉田から積極的に得て、より高いレベルの活動を目指しています。また、DIVI@Sonyは国内のプロジェクトですが、これまで人事部門で実施していた海外のソニーグループのダイバーシティ&インクルージョン推進活動のベンチマークの領域をDIVI@Sonyの活動にまで広げたのも、吉田のアドバイスによるものです。
参加するメンバー自身がダイバーシティへの理解を深めることも、DIVI@Sonyのミッションの一つです。ダイバーシティとは何か、何のために推進するのか、DIVI@Sonyにできることは何かを追究するために、さまざまな文献や事例を読んで知見を広げたり、メンバー同士で議論したり、一人ひとりがそれぞれの方法で理解を深めています。そして、理解が深まるにつれ、実現したい施策のアイデアが生まれ、活動に対するモチベーションが高まり、実際に施策を行った後には参加者からフィードバックを得てさらに理解が深まるというポジティブなサイクルにつながっています。
雇用形態や働き方がさらに多様化する、これからの日本社会では、両立支援制度の整備やその制度を誰もが当たり前に使える組織風土が企業に求められます。また全世界に目を向けると、グローバル化が進む環境の中で企業に必要とされるのは、グローバル人材が障壁を感じない職場環境の醸成、多様な人材の能力を引き出すマネジメント育成といった取り組みであると考えます。ライフイベントとキャリアを両立し、多様なバックグラウンドや経験を持つ社員など誰もが最大限の力を発揮できる、働きやすく、働きがいのあるインクルーシブな職場づくりを目指して、DIVI@Sonyはこれからも活動し続けます。