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Sony Entertainment Technology Showcase
参加者座談会

エンタテインメントコミュニティの拠点、
米国・ロサンゼルスでクリエイターに近づく

2023年10月31日

2023年8月、ソニーグループ内での技術交流を促す新イベント「Sony Entertainment Technology Showcase(SETS)」が米国・カルバーシティーで開催されました。SETSはエンタテインメント事業に携わる社員とクリエイターを対象に、グループ内でのクリエイターコミュニティ醸成を目指したものです。イベント終了後、展示やカンファレンスに参加したメンバーにあらためてSETSの感想を聞きしました。

プロフィール

  • Daniel De La Rosa

    ソニー・ピクチャーズ
    エンタテインメント
    Technology Development
    SETSでの役割:イベント主催、
    カンファレンスモデレーター

  • Victoria Dorn

    ソニー・インタラクティブ
    エンタテインメント
    Software Engineering
    SETSでの役割:出展者

  • 小森谷 陽多

    ソニー株式会社
    技術開発研究所
    SETSでの役割:出展者、
    カンファレンス登壇者

  • 山村 タイザ

    ソニー・エレクトロニクス・インク
    XR Business Development
    SETSでの役割:出展者、
    カンファレンス登壇者

  • Joohye Yoon

    ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカ
    Corporate DX, US Data Tech Team
    SETSでの役割:出展者

  • 住山 アラン

    ソニーグループ株式会社
    コーポレートテクノロジー戦略部門
    SETSでの役割:プロジェクトマネジメントリーダー

Sony Entertainment Technology Showcase Los Angeles ダイジェスト動画

交流とフィードバックの貴重な機会

──住山(司会進行):皆さん、こんにちは。ご存知のとおりSETS-LA(ロサンゼルスで開催されたSETS)は、ソニーグループ初となるエンタテインメント事業に特化した全社的な技術交流イベントでした。皆さんには展示をはじめさまざまな形でご協力いただき、ありがとうございました。まず、イベント全体の感想を教えてください。

タイザ:このイベントは、ソニーの他組織に所属する参加者との交流に加え、グループ内の多様な技術を知る貴重な機会でした。他の技術を私たちの製品にどのように取り入れられるか、また、社内でどのように協業できるか、などいろいろな着想を得ることができました。

Victoria:そうですね、人脈づくりという面で素晴らしかったと思います。開催地がロサンゼルスだったので、勤務地の近いチームメンバーにも会場でのデモを手伝ってもらったのですが、彼らにとってもグループ内に新たなネットワークを築く機会になりました。こうした出会いや相手の仕事を知ることが協業のきっかけになりますよね。

Joohye:そうですね。私のチームでは過去にも「STEF(Sony Technology Exchange Fair)」のような技術交換会やカンファレンスに何度か参加していますが、SETSはエンタテインメント事業に特化していたので、より建設的な話ができました。

小森谷:私たちもSTEFへの参加経験があります。STEFと比べるとSETSは小規模ですが、そのコンパクトさと、西海岸のおおらかな雰囲気も相まって、来場者との会話や、自分たちの技術の紹介、エンタテインメント事業関係者からの直接のフィードバックなどに時間を使うことができました。

Daniel:私は、規模感を含めてSTEFが大好きですが、STEFは日本で開催されるため、海外メンバーの中には現場での参加が叶わない人もいます。そのため、今年はそういった人にとっても、エンタテインメント領域向けの展示を集約したSETSを開催できてよかったです。

──住山:Danielさんは、イベントの主催にも関わっていましたよね。

Daniel:そうなんです。このようなイベントの企画に携わることにとてもワクワクしました。また、私たちがいつも撮影を行っているソニー・ピクチャーズのスタジオをイベント会場として使用したため、来場者の反応も気になるところでした。当日は非常に多くの来場者をお迎えできて、とても嬉しく思います。

多くのソニー・ピクチャーズ社員にとって、ソニーグループの技術領域の広さや深さは驚くべきものでした。たとえば、彼らはソニーが「におい」の領域や情動分析を手がけていることも知らなかったくらいです。SETS-LAは、ソニー・ピクチャーズをはじめとしたロサンゼルスベースのグループ社員に、こういった技術をもっと知ってもらうための重要な取り組みだと思います。特に感慨深く感じたのは、来場者が実際に展示デモを体験したことで、その技術のコンセプトを本当に理解した瞬間に立ち会えたことですね。

小森谷:その通りですね。そして、クリエイターたちが私たちの研究の思想的背景を理解するスピードは予想以上に早かったと感じています。私が研究の科学的な根拠や実際の応用について説明すると、皆さんすぐにエンタテインメントやコンテンツ制作への応用方法を考えはじめていました。私たちのアイデアを非常に高く評価し、強く支持してくれたことは、大きな励みになりました。

新たな視点や洞察

──住山:人脈づくりやフィードバックについて、皆さん全員から言及がありました。この点、もう少し詳しくお伺いできますか?

タイザ:私たちはもともと、今後実装したいと考えている機能のロードマップを作成していたのですが、SETSで来場者の皆さんとお話しした後、そのリストを見直し、優先順位の一部を変更しました。たとえば、当初はもっと後の段階で実装予定だった拡張機能が、実はクリエイターにとってデザイン作業での汎用性が高いと知り、優先的に取り組むことにしました。

Victoria:デモを実施するにあたり、PlayStation Studiosのオーディオチームにも参加してもらったのですが、普段、彼らの多くは南カルフォルニアを拠点に、私たちは同州の北部を拠点としていることから対面で会える機会は限られているため、ともにデモに立ち会えたことは、とても有意義だったと感じています。

また、グループ内で音響技術に携わる別のチームとの議論にも恵まれました。たとえば、私たちは空間オーディオを手がけているのですが、別チームから技術に関する見解を聞いて意見交換できたことは有意義でした。私たちはゲーム業界にいますが、映画、音楽といったリニアメディアとはだいぶ異なるため、これまでそれらの業界関係者との交流機会がなかなかありませんでしたから。

──住山:Joohyeさんと小森谷さんは仕事の領域が近く、今回は合同展示をされていましたが、SETS以前は交流がなかったそうですね。今回、一緒に仕事してみていかがでしたか?

小森谷:最初の打ち合わせは、4月に私が米国に行ったときに実施しました。おっしゃるとおり、私たちの仕事の領域は近いのですが、アプローチは全く異なります。Joohyeさんのチームは現行の技術の実装に取り組んでいるのに対し、私たちのチームは将来の技術の研究をしているので、まずはお互いを知り、詳細について話し合う必要がありました。そうしたことで、協業の土台ができたと思います。ですよね、Joohyeさん?

Joohye:本当にそう思います。アプローチは違っても、私たちは同じビジョンや目標を持って取り組んでいます。今回、一緒に取り組めたことで、SETSに出展するためのシームレスなストーリー作りができましたし、今後の協業を加速させることもできると思います。

──住山:タイザさんには、出展者とカンファレンスのパネリスト、2つの立場でご活躍いただきました。そうした関わり方にはどのようなメリットがありましたか?

タイザ:他のパネリストの皆さんから多くのことを学べただけでなく、セッション終了後に私たちのブースを立ち寄っていただくよう来場者の皆さんに直接呼びかけることができました。私たちの製品のなかには、裸眼で楽しむ3D映像ディスプレイなど、体験しないと十分に理解できないものがあります。こうした技術の深い没入感は、自分で試してみて、初めて実感できるものです。私の呼びかけによって、セッションの後、チームはデモや質問対応などで大忙しだったろうと思います。

コンテンツクリエイターの力となるために

──住山:素晴らしいですね。来場者がSETSを存分に楽しむ方法についてはいかがでしょう。何かアドバイスはありますか?

Daniel:私は、このイベントではただ技術を見学するだけでなく、質問し、日々の業務にまつわるニーズ、たとえば、何かの技術を使えば解決できそうな悩みや課題を共有することがポイントだと関係者に伝えていました。一方で、来場者の方々には興味を持って質問いただくように促しました。

Victoria:私もDanielさんと同意見です。来場者には、出展者と接する際に、普段使っている技術や将来使う可能性がある技術に関する課題を共有していただくことが重要だと思います。来場者が仕事の詳細は明かせないとしても、私たちエンジニアが実際の課題を聞くことは、ユーザーに寄り添った仕様に近づけていくうえで本当に役立ちます。コンテンツクリエイターの力になるために、私たちがいるのですから。

成功を礎として未来へ

──住山:皆さんは、次回のSETSにも出展したいとお考えでしょうか? また、今後のSETSの展開について、期待していることはありますか。

Daniel:ぜひまたSETSをやりたいと思います。毎年か隔年か、どれくらいの頻度がいいかはわかりませんが、今年はちょうどSIGGRAPH※の直後だったおかげで、大勢の人がロサンゼルスに集まっていたことがよかったと思います。

たとえば、次の展開では、コミュニケーションの流れを今回と逆方向にしてみるのも面白いかもしれません。エンジニアにエンタテインメント業界のことをインプットしてみるというイメージです。そうすれば、理想的なフィードバックのサイクルにつながっていくと思います。

※米国におけるコンピュータ・グラフィックス(CG)とインタラクティブ技術に関するカンファレンスと展示会

タイザ:とても濃密な3日間でしたが、ぜひまたやりたいですね。時間があれば、もっと他のセッションも見たかったと思っていたくらいです。私たちは少人数で展示対応をしたので、忙しくて他の技術を見て回る時間が十分にとれませんでしたから。また、カンファレンスでは、もっと議論を深めたかったですね。

Joohye:次回参加する際は、私たちの技術に興味を持ってくださった来場者の方を、イベント後にフォローできるように、あらかじめもっと戦略を立てて臨みたいと思います。今回、SETS後にブース来訪者のリストは作成できたのですが、それを活用した取組みまでには至りませんでした。次回はもっと積極的に話し合いを始めるように努めて、フォローアップにつなげたいと思います。

Victoria:次回のSETSでも、ぜひまた出展したいと思います。私たちのデモへの反応を見たり、フィードバックをもらえたりしたことは、今後の新しいアイデア創出の一助となりました。また、対象をさらに絞った「ミニSETS」を開催してみるのも面白いと思います。たとえば、特定の分野のクリエイターを集めて、ピンポイントでフィードバックをもらうようなイメージです。

小森谷:私たちもぜひ、次回のSETSでも展示したいと思っています。エンタテインメント事業関係者と直接交流できる素晴らしい機会でした。もちろん、日本から各種機器を持ち込まないといけないので、タイミングなどにも左右されるとは思いますが、R&Dチームの多くのメンバーが出展を希望していると思います。

住山:皆さん、貴重なフィードバックをありがとうございました!

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