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Zhinong Yingが携帯アンテナ技術への貢献により
IEEE フェローに選出
2020年11月、スウェーデン・ルンドのR&Dセンター Connectivity Technology Labの主任研究者Zhinong Yingが、携帯電話のアンテナ技術への貢献が認められ、IEEE(※)フェローに選出されました。
IEEEフェローは、IEEEの関連する領域において極めて優れた結果を達成した人物に対して、IEEEのBoard of Directorsによって認定されます。IEEEフェローは会員の最高グレードに位置付けられていることから、技術コミュニティにおいて大変名誉であると同時に、キャリアにおける重要な成果であると認められています。
グレードの昇進は、一年に一度の会員の投票で行われ、昇進できる人は0.1%以下です。Yingは、IEEE antenna and propagation societyにおいて今年世界中から選出された、わずか五名のフェローの中の一人となります。
アンテナ技術における画期的な功績
この名誉ある称号は、Yingの30年に及ぶ、携帯電話業界向けのアンテナ技術における画期的な功績が認められたものです。IEEEフェローの任命においては、Yingの功績として3つの重要な領域があげられました。
■携帯電話向けのデュアルバンド・マルチバンド・マルチシステムアンテナ
Yingの発明は世界中に影響を与え、多くの携帯電話のユーザーに直接的な利益をもたらしました。Yingは多くの発明によって、160件以上の特許を取得または出願しています。(そのうち125件が携帯電話アンテナ技術に関するものです。)
彼が新規設計した不均一のらせん形状を特徴とする、デュアルバンド対応ヘリカルアンテナは、エリクソンの携帯電話T10やT18を始め、ライセンスされた他の携帯電話メーカーにも採用されました。シンプルで安価に生産できるこのアンテナは、1億台以上の携帯電話に搭載されました。さらに、後に発明したマルチバンド内蔵アンテナは、ソニー・エリクソンのフラッグシップモデルであるT68に搭載されて、モバイル向けアンテナの新たなデザイン構築に貢献し、業界に大きな功績を残しました。
■4Gアンテナシステムにおけるダイバーシティ/MIMOアンテナと5Gミリ波のビームフォーミングシステム
MIMO (multiple input, multiple output) とダイバーシティ技術は、ここ10年間のコミュニケーション領域における最も革新的な進歩でした。これらの技術によって、限られた周波数帯において高いデータレートが実現できるようになりました。
携帯電話のプラットフォームにおいて、ダイバーシティ/MIMOアンテナは近接する他のアンテナとの間に距離を設けることが必要です。Yingは、MIMOアンテナの特性評価に新たな指標を導入して、小型MIMOアンテナに関する革新的な設計開発と、複数の大学と協業して小型MIMOアンテナの空間分離技術の体系的な研究を主導しました。彼は2007年に世界で初めて700MHz帯LTEの実証実験を行い、2015年にはエリクソンとともに5Gミリ波の実証実験を行いました。
■発表や標準化活動を通して、携帯電話業界に貢献
マルチバンド・マルチシステム対応携帯電話用アンテナシステム、MIMO、ミリ波ビームフォーミング、EMFによる人体への影響の研究について、Yingは6冊の本と160を超える論文を執筆し、携帯電話業界に有用な参考文献を提供しました。彼の研究は3GPPやEMFの標準化においても活用されています。
Yingの経歴と大学との協業
Yingは中国で生まれ、1992年にスウェーデンに移住。スウェーデン、ヨーテボリのChalmers技術大学にてアンテナ技術の博士号を取得しました。1995年にスウェーデン、ルンドのエリクソンへ入社しました。Yingの当時の上司であるThomas Bolinは、ルンドのR&Dセンターやテストラボを設立して、エリクソンにおけるアンテナのコンピタンスを構築。また、エリクソン、後のソニー・エリクソンの10か所のサイトにおいて、グローバルなアンテナネットワークを構築しました。
ルンド大学、Chalmers大学、ストックホルムにあるKTH(王立工科大学)との密接な協業による先進的な研究では、革新的なアンテナ技術を実現し、モバイル業界に大きなインパクトを与えました。
現在、ルンドサイトのR&Dセンターでは、産業と学術の相乗効果を活用しながら、未来の技術や6Gに向けた標準化活動のための研究を行っており、携帯電話開発において重要な役割を担い続けています。
また、YingはデンマークのAalborg大学の非常勤講師に就任。2021年の2月1日から、大学とソニーとの共同プロジェクトを開始しています。Aalborg大学の最先端の無線コミュニケーション研究活動との結びつきがより強固になり、ソニーにとって貴重な機会になることを期待しています。
メッセージ
■Zhinong Ying
IEEEフェローに選出いただき、大変名誉に感じております。この栄誉は私だけではなく、エリクソン、ソニー・エリクソン、ソニーと変遷する中でともにアンテナ技術に取り組んできた、ルンドサイトのたくさんの同僚に対して与えられたものです。この会社で長年に渡り、多くの優秀な同僚や世界トップレベルの研究者たちとともに、情熱を持ってアンテナ技術に取り組んでこられたことは私にとって幸運でした。現在はソニーの他のビジネスグループと協業し、大学と共同研究に取り組んでいます。私たちの持つアンテナ技術のキーコンピタンスによって、IoT、5G、6Gに貢献していきたいです。
■R&Dセンター ルンド Connectivity Technology LabのDirectorであるRickard
私たちのチームの一員であるYingさんがこのような栄誉を受けたことを大変誇りに感じています。ソニーにおいて無線研究・標準化活動はグローバルな組織ですが、世界中のソニーR&Dラボ間で協力し合うことができています。6G技術などの新たな無線規格に必要な特許においては、遠隔のコミュニケーションにおける専門知識や革新的な思考が必要となります。R&Dセンター ルンドサイトのYingさんと同僚たちの研究チームは革新と前向きな思考によって、ソニーの製品や技術規格に適用可能な既存技術に対する挑戦や新しいソリューションの提案をして、ソニーの研究開発を推進し、貢献しています。
IEEEフェローや大学教授の称号を得たことは、私たちの世界トップクラスの研究を対外的に認知していただく上でも、重要な意味を持っています。地域の研究と世界中の研究が協業することは、ソニーにおける無線コミュニケーションの分野において重要な機会であると確信しています。
※IEEE:人類社会に有益な技術革新の前進に貢献する世界最大の専門家組織です。 IEEEとIEEEメンバーは頻繁に引用される出版物、国際会議、標準規格(スタンダード)、および専門的・教育的活動を通じ、国際社会をインスパイアします。 IEEE は “アイ・トリプル・イー” と読み、Institute of Electrical and Electronics Engineers の略です。これが組織の正式名称であり、IEEEは米国公益法人法で公益法人に指定されています。 詳細はIEEEのホームページをご覧ください。