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経済産業省の産業標準化事業表彰を受賞

2020年12月18日

左:矢ヶ崎 陽一、右:鈴木 輝彦

経済産業省では、世界で通用する国際標準化人材の育成、日本における産業標準及び適合性評価活動の促進を図ることを目的として「産業標準化事業表彰」が毎年行われています。今年度は、内閣総理大臣表彰1名、経済産業大臣表彰22名、3組織、産業技術環境局長表彰30名、2組織が選出され、10月1日に都内で開催された表彰式においてR&Dセンター Tokyo Laboratory 18の鈴木 輝彦が「経済産業大臣表彰」を、また同部署の矢ヶ崎 陽一が「産業技術環境局長表彰」を受賞しました。

「経済産業大臣表彰」は標準化活動や適合性評価活動など(関連する普及・啓発、教育、研究、国際協力などの活動も含む)に関与し、国際標準化・産業標準化に顕著な功績のあった方及び組織を対象として贈られ、「産業技術環境局長表彰」は日本における国際標準化・産業標準化・適合性評価活動の発展、日本の国際標準化を推進するための規格の作成等の活動に寄与し、かつ、今後とも継続的に同分野における活躍が期待できると認められる方を対象として贈られるものです。

鈴木と矢ヶ崎は、情報技術分野の国際標準化を行うISO/IEC JTC 1の国内審議団体である一般社団法人 情報処理学会 情報規格調査会から今年度の候補者として推薦され、経済産業省の審議を経て産業標準化事業表彰を受賞しました。
受賞理由は以下の通りです(経済産業省発表文より)

■ 鈴木 輝彦
「ISO/IEC JTC 1(情報技術)/SC 29(音声、画像、マルチメディア、ハイパーメディア情報符号化)の国際議長を3年にわたって務め、その間、組織改編を主導し、映像音響符号化技術の持続的な国際標準化体制の構築及び我が国の地位向上に大きく貢献。また、ビデオ符号化技術において、4K/8K/HDR(ハイダイナミックレンジ)映像技術の国際標準化を推進し、我が国技術が多数国際標準に採用。」

■ 矢ヶ崎 陽一
「約30年にわたり、 ISO/IEC JTC 1(情報技術)/SC 29(音声、画像、マルチメディア、ハイパーメディア情報符号化)/WG 11(動画像符号化)のエキスパート、国内対策委員会幹事等として、MPEG-4 AVC などの動画圧縮技術に関する国際標準化活動に貢献。また、産業界からの要望を集め、アプリケーションに合わせて実装コストを抑え、かつ、互換性を確保する規格開発にも貢献。」

鈴木は1995年にISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11の国際標準化に参加して以来現在に至るまで、エディタとして多くのプロジェクトを担当し、これまでも数々の表彰を受けてきましたが、今回の経済産業大臣表彰では特に、ISO/IEC 23008|ITU-T Rec. H.265(High Efficiency Video Coding: 高効率ビデオ符号化)およびISO/IEC 23008-8(HEVC適合性試験)のエディタとしての貢献、そして、ISO/IEC JTC 1/SC 29の国際議長として組織発足(1991年)以来初となるスコープの見直しと組織改編を行い、センシング技術や認識技術の発達によって映像音響符号化技術が自動運転や遠隔操作等の新たな応用分野で活用される将来においても、持続的に国際標準化を推進できる体制を構築した功績を評価されての受賞となりました。

矢ヶ崎は1989年にISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11の国際標準化に参加して以来現在に至るまで、エディタ、エキスパートとしてMPEG-2 Video、MPEG-4 Visual、MPEG-4 AVC(ISO/IEC 14496-10 MPEG-4 AVC/H.264)など広く普及している規格の技術開発を主導し、また、互換性を確保することで産業界の規格採用を促進する等、標準化策定とその普及に大きく貢献し、国内外で表彰を受けてきました。今回の産業技術環境局長表彰では特に、ISO/IEC 14496-2(音響映像オブジェクトの符号化‐第2部: 映像MPEG-4 Visual)およびISO/IEC 14496-2追補1: スタジオプロファイルのプロジェクトリーダーとしてテレビ局等放送関係者の要望を取りまとめながら、規格発行後実装されるまでの期間における技術進歩を勘案して標準化作業を主導した功績が評価されました。追補1は全世界の放送局やプロダクションにおいて、現在も主要なフォーマットとして活用されています。

受賞コメント

■鈴木 輝彦

映像の圧縮技術の標準化を進めている JPEGやMPEGは、発足以来30年程になりますが、引き続き、映像音響技術をリードする Innovativeな技術の開発と標準化が進められています。この JPEG、MPEG の親団体である、ISO/IEC JTC 1/SC 29 の国際議長に2017 年に就任し、映像音響技術の国際標準化を進めてきました。

映像技術も人間が見て楽しむエンタテイメントでの活用から、自動運転のように機械が認識して活用するという新しい応用分での国際標準化の加速が期待され、自動運転や遠隔操作、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)などの普及促進が見込まれます。今後もこうした、新しい技術を取り込み、持続的に映像音響符号化技術の国際標準化を推進できる体制に組織改革を進めました。また、ビデオ符号化技術において、4K/8K/HDR(ハイダイナミックレンジ)映像技術の国際標準化を推進してきました。

経済産業大臣賞を受賞し、大変光栄で、また今後引き続き国際標準化を進めていく上で励みになります。ご協力、ご指導を頂いた方々に、御礼申し上げます。引き続き、ソニー、また業界のために微力ながら、貢献していきたいと思います。

■矢ヶ崎 陽一
産業標準化事業表彰式に参列した際に、多くの分野で標準化の成功例を拝見しました。ばねのような基本部品から、鉄道などの大規模システム、また、最近注目の集まっている環境関連まで、標準化が果たす役割を再認識しました。特に、国際市場への進出、また国際競争力の向上には、国際標準化戦略が必須です。今後は、社内関連部署の協力を仰ぎながら、標準化戦略の策定や次世代の標準化を担う人材の育成などに努めたいと思います。

最後になりましたが、これまでの長期にわたり、ご協力、ご指導を頂いたみなさまに、御礼申し上げます。

鈴木と矢ヶ崎のこれまでの活動については以下をご参照ください。

功績概要

■鈴木 輝彦

鈴木は1995年にISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11の国際標準化に参加して以来現在に至るまで、エディタとして多くのプロジェクトを担当し、これまでも数々の表彰を受けてきました。

- 2007年 情報規格調査会 標準化貢献賞 「2004年から現在まで3年間にわたり、SC 29/WG 11/ビデオ小委員会幹事補佐並びにSC 29/WG 11/MPEG-4小委員会委員として標準化活動に尽力。また、MPEG-2やMPEG-4関連の多くのプロジェクトエディタを引き受け、さらにアドホックグループの議長を担当するなど国際の場でも大いに活躍。」(情報規格調査会発表文)

- 2008年 工業標準化事業表彰 国際標準化貢献者表彰 産業技術環境局長表彰 「ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11において11の案件にプロジェクトエディタとして参画し、ビデオ符号化技術おける高精細化、高品質化技術の国際標準化に貢献。また、純粋な技術理論だけでなく、商品化に必要な要求仕様や実装技術についても積極的に新規作業項目提案を行う等国際標準化活動の強化に貢献。」(経済産業省発表文)

- 2016年 情報規格調査会 標準化功績賞 「1995年から現在までの長きにわたりSC 29/WG 11 国際会合へ継続的に参加し、動画像符号化に関連する数多くの案件のエディタを担当し、標準化とその普及活動に尽力した。2004年1月からSC 29/WG 11ビデオ小委員会の委員、2006年1月から同幹事補佐、2009年3月からは同主査を務め、国内意見の取りまとめと国際規格への反映に多大な貢献。」(情報規格調査会発表文)

その後もISO/IEC 23008|ITU-T Rec. H.265(High Efficiency Video Coding: 高効率ビデオ符号化)のエディタとしてITU-T(国際電気通信連合 電気通信標準化部門)/SG 16(マルチメディア符号化、システム及びアプリケーション)との共同プロジェクトに発足時から参加し、4K/8K/HDR映像技術の国際標準化を推進。この国際標準によって4K/8K/HDR映像を圧縮伝送することが可能になり、4K/8K衛星放送、4Kストリーミングが開始されました。また、策定した規格に準拠した製品、サービスの互換性を担保するため、エディタとして適合性試験の開発に尽力し、ISO/IEC 23008-8(HEVC 適合試験)として国際標準を策定。この標準により、ISO/IEC 23008|ITU-T Rec. H.265に準拠した製品、サービスの互換性が確保されました。

鈴木は国内においても2006年から情報規格調査会 SC 29専門委員会/ WG 11/MPEG Video(MPEGビデオ符号化)小委員会の幹事・主査として日本の標準化対処方針を策定したほか、ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11の国際会議では日本代表団団長を務め、日本の意向を反映した提案や技術を多くの国際標準に盛り込み、国際標準化における日本の地位向上に多大な貢献を果たしました。

2017年からはISO/IEC JTC 1/SC 29の国際議長に選出され、ITU-T/SG 16と共同でJVET(Joint Video Expert Team: 共同ビデオ・エキスパートチーム)を設立、映像信号の更なる高圧縮を実現するISO/IEC 23090|ITU-T Rec. H.266(Versatile Video Coding: 多用途ビデオ符号化)の国際標準化を推進してきました。また、センシング技術、認識技術の発達に伴い、自動運転での活用など、映像技術の新しい応用分野が広がってきたことを踏まえ、鈴木さんは国際議長としてISO/IEC JTC 1/SC 29の発足(1991年)以来初となるスコープの見直しと組織改編を行い、今後も持続的に映像音響符号化技術の国際標準化を推進できる体制へと変革しました。これにより、人間が見て楽しむエンタテインメント分野で映像技術を活用するだけでなく、機械がセンシングし認識して活用する自動運転や遠隔操作、IoTといった新しい応用分野で活用するための符号化技術の国際標準化が加速していくことが期待されています。

■矢ヶ崎 陽一

矢ヶ崎は、1989年にISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11の国際標準化に参加して以来現在に至るまで、エディタ、エキスパートとしてMPEG-2 Video、MPEG-4 Visual、MPEG-4 AVC(ISO/IEC 14496-10 MPEG-4 AVC/H.264)など広く普及している規格の技術開発を主導してきました。特に、「ISO/IEC 14496-2(音響映像オブジェクトの符号化‐第2部: 映像 MPEG-4 Visual): 2001/追補 1: 2002(Studio Profile)」および「ISO/IEC 14496-2(音響映像オブジェクトの符号化‐第2部: 映像 MPEG-4 Visual): 2004」ではプロジェクトリーダーとして、テレビ局等放送関係者からの要望や規格発行後実装されるまでの機関における技術進歩を勘案して標準化作業をリードし、プロジェクトエディタとして国際規格の取りまとめに尽力しました。こうした貢献が評価され、2003年には「ISO/IEC Certificate of Appreciation, Project Editor in development of International Standard ISO/IEC 14496-2 3rd」を受賞しました。なお、「追補1: Studio Profile」は放送機器に採用され、現在も主要なフォーマットとして全世界の放送局やプロダクションで使用されています。

MPEG-4 AVCの標準化においては、ITU-T/SG 16との共同プロジェクト発足時からエキスパートとして参加し、多くの技術提案を行ったことに加え、知財に関するITU-T/SG 16メンバーとISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11メンバーとの間の考え方の相違を解消すべく、民生機器における特許システムについての啓蒙活動に努め、規格の取りまとめに尽力しました。また、産業界からの要望を集め、アプリケーションに合わせて実装コストを抑えつつ互換性を確保するProfile策定にも貢献しました。この結果、MPEG-4 AVCは民生用ビデオカメラ規格 AVCHD、業務用ビデオカメラ規格 XAVC、ブルーレイディスク、ビデオストリーミングサービス、家庭用ゲーム機器などで採用され、規格後20年を経た現在でも、最も多く使用されているVideo Codec規格となりました。

矢ヶ崎は国内においても、2004年からISO/IEC JTC 1の国内審議団体である情報規格調査会 SC 29専門委員会、SC 29/WG 11/MPEG-4小委員会、およびMPEG Video小委員会の幹事に就任し、現在も傘下組織間の意見調整や投票案の割り振りを行うなどして委員会活動を推進しています。また、日本から提案を行う際には、放送局などのメディア企業、IT企業、電機メーカー、半導体メーカー等の各業界から出される意見や要望を取りまとめ、日本としての優位性につながるように審議を主導してきました。こうした貢献が評価され、2010年には情報規格調査会標準化貢献賞を受賞しています。

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