AIBOからVISION-Sまで
~ソニーのAIロボティクスの進化~
ソニーのAIロボティクス技術を定義する基礎的なプロセスである「認識」、「思考」、「行動」。つまり、イメージセンサーなどを通じて「認識」した周囲のデータを、最先端AIが「思考」して解析・判断し、ロボティクス技術によってデバイスを「行動」します。またAI技術は「機械学習」によって定義づけられる面もあります。行動パターンやルーティン、経験を学習しながら、継続的に行動を調整し、情報をアップデートしていきます。
AI分野の可能性を広げてきたソニーでは、初代AIBOを発売した1999年以降、20年以上にわたり、AIロボティクス領域で研鑽を重ねてきました。グループ横断的に基礎研究を担ってきたR&Dセンターや株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)、新たな領域への応用活用に向けた研究開発を行うソニーAI、既存ビジネス領域でAIを差異化技術とし推進しているソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS)やソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)、そしてこれまでにないビジネスへの利用につなげているAIロボティクスビジネスグループ(AIRBG)など、多岐にわたる事業や組織にてAIの開発や活用を進めています 。今回のブログでは、初代AIBOから最新プロジェクトのVISION-Sに至るまで、ソニーの開発者たちが、どのような軌跡を辿ってきたかを振り返ります。
初代AIBOが産声を上げたのは1999年の日本でした。外部からの刺激や自らの判断により行動する自律型のエンターテインメントロボットとして、多様な感情表現や学習・成長機能を持ち、人とコミュニケーションを行うことができました。誕生後、数年で音声認識や顔認識などの新技術が加わった新しいモデルが次々に登場し、外観だけでなくソフトウェアもアップデートし続けました。中には、AIBOと外部デバイスをBluetoothで接続し、AIBOの思考をテキスト情報として読み取ることができるモデルもありました。
そのような中、ソニーは2006年にロボット事業の見直しを行い、AIBOは生産を完了することになりました。その後、販売モデルのアフターサービスが終了した2014年にAIBOの時代は一旦幕を閉じることになりますが、AIBOはユーザーに愛されていました。
その後10年以上の時を経て、新しいデザインと進化したAI機能を備える「aibo」として生まれ変わります。新しいaiboは先代より動作が滑らかになり、より豊かな表情で表現ができるようになりました。また、インターネットに常時接続することで、最先端AIとしての能力を最大限発揮し、ソフトウェアも定期的にアップデートします。本物の子犬と同様に、オーナーとのインタラクションを通じて学習・成長するaiboには、唯一無二の個性が宿ります。また、犬にできる芸やふるまいだけでなく、新しいダンスや、ごはんやトイレなどのしつけ、自分の縄張りまでを覚えさせることができます。オーナーたちは自身のaiboを持ち寄って、お互いの愛犬の成長を披露しあうオフ会を実施したり、AIRBGが主催者となって、世界中のオーナーたちの要望を聞く機会として、ファンミーティングも定期的に開催しています。
AIRBGのエンジニアたちが手掛けるのは何もaiboだけではありません。今年日本市場で試験的に導入された高度な会話の実現を目指す小型ロボット「poiq」、クリエイターの創造力をあますことなく支援するプロフェッショナル向けドローン「Airpeak」、そしてAIとクラウドベースの機能で、Safety(安全性), Entertainment(エンタテインメント), Adaptability(適応性)という3つのコンセプトを持つ電気自動車のプロトタイプ「VISION-S 01/02」。特に「VISION-S」は、モビリティ空間を感動空間に変革させる重要な取り組みとして推進しています。
通常のモビリティを超えた自動車体験の実現性を検証するため、VISION-Sプロトタイプには、最先端のセンサーとAIを活用した技術を搭載していきます。例えば、カメラで運転手以外の乗客もモニタリングし、対象者が眠りそうとAIが判断した場合、座席の向きや位置を調整して寝やすくするといった機能も検討しています。ほかにも、aiboが適切な「就寝」時間を学習するように、VISION-Sもオーナーの好みや傾向、例えば好きな音楽や過ごしやすい室温、ドライブモードや移動経路にいたるまで、日々学習していきます。またVISION-Sはクラウドに接続できるため、将来的にはソフトウェア更新によって新機能を追加できる仕組みを検証しています。
VISION-SのプロトタイプはCES 2020で初めて一般公開され、モビリティにおけるソニーの技術と将来に向けたビジョンを示しました。その後も研究開発を重ね、公道走行テストも実施し、そして、2022年6月にソニーグループ株式会社は、本田技研工業株式会社と新会社「ソニー・ホンダモビリティ」の設立に関する合弁契約を締結したこと、新会社によるEVの販売とモビリティ向けサービスの提供開始を2025年に予定していることを発表しました。10月13日に設立発表記者会見を開催した同社は、「多様な知で革新を追求し、人を動かす」というPurpose(存在意義)のもと、「Autonomy(自立性)」、「Augmentation(拡張性)」、「Affinity(親和性)」の3Aを追求したEVの開発をめざすことを発表しました。
モビリティ領域の取り組みであるVISION-Sや、aibo、poiq、Airpeak、そして他にも開発中の多くの革新的なテクノロジーを通じ、ソニーはAIロボティクス技術をさらに発展させ、誰もがロボットと共存するサステナブルな世界の実現をめざしています。