SONY

ソニーはクリエイターのために。
-「Sony Creators Conference」基調講演-

2023年 8月8日(火)〜9日(水)、ソニーは米国ロサンゼルスで「Sony Creators Conference」を初開催しました。今回のブログではソニーグループ株式会社 執行役 専務 CTOの北野宏明が、エンタテインメント領域でコンテンツづくりをリードするソニーグループのトップクリエイター陣を招いて登壇した、基調講演の概要をご紹介します。

創造で未来を切り拓く

aibo製品画像

北野は、まずテクノロジーとエンタテインメントの融合を試みた数々の挑戦的な取り組みのひとつとして、初代「AIBO」を紹介。初期R&Dプロジェクトのチームメンバーとして「エンタテインメント・ロボット」という着想を得るに至った経緯と、プロトタイプで実装した技術を語りました。この新たなエンタテインメントの形を実現するにあたり、開発チームは分散型オペレーティングシステム、ホット・プラグアンドプレイ、OpenRインターフェースなど、当時の最先端技術を取り入れていきました。その後も、新たなチームが最新技術を用いて開発した新世代の「aibo」がロボティクスの可能性を広げ続け、今も人々を笑顔にしています。

ロボティクスと同様の大きなテクノロジーの革新として、北野はコンピューティングの進歩とそれに用いるデータ規模の拡大にも触れました。三十年前、カーネギーメロン大学でリアルタイム音声翻訳用に自然言語処理システムを開発していた頃に大規模だと感じていたデータ規模と計算資源は、現在のそれとは比較にならないほど小さかったと振り返りました。

次世代のエンタテインメントでクリエイターが届けたいビジョンを具現化するうえでデータ規模と計算資源が重要な役割を担うことになると述べつつ、北野はソニーが新たなテクノロジーを模索する際に、優先させることは一貫して変わらないと語ります。それは、倫理的かつ責任ある形で、クリエイターが創造性を発揮するための力になるということです。ソニーはクリエイターに寄り添い、より優れたクリエイティブ・ツールをより多くの人に届け、人々のクリエイティビティをイノベーションによって高めたいと考えています。

デジタル仮想空間から現実世界まで、幅広いソニーのテクノロジー

GT Sophy画像

ソニーは、人間の想像力と創造性を解き放つというミッションのもと、2020年にSony AI という新しい研究組織を設立しました。その最初のプロジェクトの 1 つが、プレイステーション®用のドライビングシミュレーター「グランツーリスモ」シリーズ向けに、世界最高峰のドライバーにさえもひらめきをもたらす、超人的なレーシングエージェント「グランツーリスモ・ソフィー」(GT Sophy)を開発することでした。研究チームは、新たな分散型深層強化学習を用いてGT Sophyの開発に成功したばかりでなく、人間がこのエージェントから走りを学ぶという興味深い事実までをも発見しました。チームは現在、プレイヤーがGT Sophyといつでも遊べるよう開発に取り組むとともに、ゲーム開発者がさらにエキサイティングなゲームを制作できるよう、プレイステーションのゲーム開発スタジオと幅広く提携しはじめています。

イメージセンサー SONY  Raspi画像

ソニーはイメージング&センシング領域のグローバルリーダーとして、現実世界でも高い技術力を誇ります。チップ上に画像解析処理機能を搭載したソニー独自のインテリジェントビジョンセンサー「IMX500」とエッジコンピューティングプラットフォーム 「AITRIOS™(アイトリオス)」 は、持続可能な社会に向けた創造的なソリューション構築を可能にします。高度なビジョン・センシングから仮想空間でのコンテンツ制作に至るまで、ソニーが提供する技術群は幅広く、その組み合わせから個々の技術が相互に強化され、クリエイターの手に新たな可能性をもたらします。さらにソニーと Raspberry Pi のパートナーシップを通じて、何百万人ものRaspberry Piのユーザーと開発者コミュニティが、ソニーのインテリジェント・ビジョンセンシング技術をより手軽に活用できるようになっています。

クリエイターのために

北野は、「Sony Creators Conference」を通じて、テクノロジーとクリエイティビティが織りなす未来を創る人々のコミュニティを構築していきたいと述べました。「既存の枠を打ち破り、新しいものを創る人はみなクリエイター」だとしたうえで、ソニーではあらゆるアーティストのみならず、技術者、イノベーター、起業家、研究者、科学者など、未来を創造する人すべてをクリエイターと捉えていると強調し、「私たちは皆、クリエイターです。」と力強く語りました。

We are here for creators

「ソニーはクリエイターから成る会社です。私たちはゲーム、音楽、映画、アニメーションなどを制作するクリエイティブエンタテインメントカンパニーです。自らがクリエイターであるソニーが開発するテクノロジーは、すべてのクリエイターがその力を発揮できるようにするためのものです。ソニーはクリエイターのための会社です。」と熱く語りました。

クリエイティビティとテクノロジーを駆使するクリエイターたち

<Mike Ford, CTO of Sony Pictures Imageworks>

マイクさん登壇写真

Mike Fordは、画期的なビジュアルを実現した大ヒット映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』の制作プロセスを紹介。同作に登場する6つのユニークな場所の描写を研究・映像化し、そこに住む600以上のキャラクターを構築するチャレンジを振り返りました。そしてこれを達成するため、最終的に過去31年間のどのプロジェクトよりも多くの社内ツールを構築したと回想し、この映画を成功に導いた鍵の一つは、同作の世界を探索し、新たな発見をしていく中で、才能あふれるソフトウェアチーム、優れたアーティスト、そして強いこだわりを持つクリエイティブパートナーと協働したことで、アートとテクノロジーが自ずと融合したことだと結論づけました。

<Meghan Morgan Juinio, Director of Product Development at Satna Monica Studio, PlayStation Studios >

メーガンさん登壇写真

Meghan Morgan Juinioは、テクノロジーの力によって革新的かつ創造的なビジョンを実現し続けてきた「ゴッド・オブ・ウォー」シリーズについて語りました。サンタモニカスタジオの制作チームは、より没入感のあるゲーム体験を実現するため、2018年の『ゴッド・オブ・ウォー』から、ゲームを全編ワンカットで撮影するというビジョンを掲げ、ゲームの物語の伝え方を進化させてきました。最新作『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』では、映画を見ているかのような体験がさらに進化。登場するキャラクター数が増えたのに加え、いくつものストーリーラインが存在し、広大な世界の中でプレイヤーがさまざまな場所を訪れることができるようになりましたが、これには、あらゆる分野の専門家を集めた部門を横断するチームの協力が必要でした。Meghanは、70以上ものアクセシビリティ機能により、より多くのプレイヤーが同作を体験できるようになった点も含め、創造性に溢れたチームがテクノロジーをうまく活用することで、素晴らしい体験を世界に届けられることに感動していると締めくくりました。

<株式会社ポリフォニーデジタル 代表取締役 山内一典>

山内さん登壇写真

25年以上にわたりコンピューターグラフィックスの可能性を追求してきた、ドライビングシュミレーター「グランツーリスモ」シリーズ。その産みの親である山内一典は、「グランツーリスモ」シリーズのリアリティの源泉としてビデオゲーム制作が、実は自然科学の手法と同様であると語り、「森羅万象を量子化することで計算可能な存在にしていく」という同社のシンプルな制作哲学を紹介した上で、それが日々のゲーム制作にどのように当てはまるのか、説明しました。良質なデータをどのように取得するか、どのようにオブジェクトをモデリングし計算するか、そしてその結果を、限りある計算リソースを用いて、最終的にどのように効果的な「表現」に昇華させるのか。これらの各段階において、人間のクリエイティビティが欠かせないと山内は語ります。また、ソニーの強みはこれらのステージすべてにおいて、必要なテクノロジーやクリエイターを、その内部に持っていることではないかとしたうえで、自然科学を志し、表現を志す未来のクリエイターと一緒に仕事をしたい、と語りかけました。

<Carter Swan, Senior Producer, PlayStation Productions>

カーターさん登壇写真

Carter Swanは「グランツーリスモ」の映画化にあたり、極めてリアルなドライビングシミュレーターを創るという山内のビジョンに忠実でいるために奮闘した制作チームの決意と、その映画化に必要不可欠だった画期的な技術を紹介。 白熱するレースの様子、そのスピード感や危険をリアルに再現するため、CGIの使用は極力控えたチームが直面した最大の課題は、レーシング・カーの車内や車体に設置できるサイズで、かつ必要な解像度を備えるカメラを見つけることだったと語ります。ソニーのデジタルシネマカメラ『VENICE 2』用カメラヘッド延長システム VENICEエクステンションシステム2 は、ヘッド部分をカメラ本体から取り外して、狭い空間での撮影を可能としてくれるもので、ジンバルやクレーンにも簡単に取り付けが可能です。この活用で撮影の自由度を高められたチームは、レースの臨場感や、俳優自身がレース中に感じる重力までも捉えることができたと語ります。Carterは、ソニーグループのあらゆる部門が、プレイステーション史上最も成功しているシリーズの圧倒的なリアリティに敬意を払いながら協力したからこそ、この映画が実現したと強調しました。

クリエイターとともにつくる未来

スピーカー全員登壇写真

北野はゲストスピーカー全員とともにステージに戻り、「クリエイターの皆様が思い描くビジョンを現実のものにするためのテクノロジーを開発していくという、ソニーの揺るぎない姿勢をご理解いただけましたら幸いです。ソニーはクリエイターのための会社であり、『Sony Creators Conference』を世界中のより多くのクリエイターの皆様に向けて開催し、次世代のテクノロジーを皆様とともに創造したいと願っています。ともに未来を切り拓いていきましょう」と語り、スピーチを締めくくりました。

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