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ソニーとプラスチック〜テレビ背面の刻印に込めた「サーキュラーエコノミー」への確かな一歩〜

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その汎用性の高さから、私たちの身の回りのさまざまなものに活用され、暮らしを豊かにしてきたプラスチック。今や日常生活に欠かせない存在です。その一方で、増加する生産量に比例して廃棄量も増え、地球温暖化や海洋汚染の原因となるなど、自然や生態系への脅威となっています。
プラスチックの資源循環を加速させることが喫緊の課題となる中、ソニーではグループ内や他社との連携を通じて課題を克服し、サーキュラーエコノミーの実現につなげる取り組みを行っています。

グループ連携で挑む、再生プラスチックの資源循環

プラスチックの資源循環を語るうえで、再生プラスチックの存在は欠かせません。ソニー製品では例えば、完全ワイヤレス型ヘッドホン『LinkBuds S』のカラーバリエーション「アースブルー」などにウォーターサーバーボトルから回収した再生素材を使用しているほか、サウンドバーの複数のパーツに音質にも妥協しない独自の再生プラスチックを採用しています。

そうした中でも、製品への活用の幅が広がっているのが、高い耐久性を持つ難燃性再生プラスチック「SORPLAS™」です。

SORPLAS

SORPLASは、ごく微量でも高い難燃性を発揮する独自の添加剤を混ぜることで、市場から回収した素材の使用率を通常の難燃性再生プラスチックよりも高めています。また、その高い再生材使用率でありながら、確かな品質管理により優れた光沢感をも保つことができるため、再生プラスチックの採用が難しいとされる製品の外観部品にも使えます。さらに、各種添加剤の混合比率を変えることで、高い強度、耐衝撃性、高い難燃性などの特性が調節できるので多様な製品に活用できます。

技術リーダーとしてSORPLASの開発に携わった、ソニーセミコンダクタソリューションズ SORPLAS事業室の栗山 晃人は、「環境負荷低減に向けSORPLASの活用拡大をめざす一方、その足掛かりとなる大型製品への導入には、まさに試行錯誤の連続でした」と明かします。

栗山 晃人 ソニーセミコンダクタソリューションズ SORPLAS事業室

「テレビのような大型製品にもSORPLASを導入できるようになれば、バージンプラスチック使用量をより大きく削減できます。大型製品向けには面積の大きい成形型に流し込みやすくなるように『流れ性』という特性を保つことが重要です。一方で、これに加え必要な『強度』と『難燃性』を合わせた3つの特性を並び立たせる配合調整は非常に難しい。特にトレードオフの関係である『強度』と『流れ性』をバランスよく維持させるために何度も検証しました。」
この努力の末、SORPLASは2021年に発売された有機ELテレビの一部のモデルで初めて、最も面積の大きいパーツである背面カバーに採用。さらに、2023年発売の4K業務用モデルでは、全機種の内部素材の一部に使用されています。

このSORPLAS、自社工場から出る光ディスクの廃材を一部原料として活用しています。「ソニーグループ内で循環すれば廃棄物が付加価値へと変貌する上に、グループ全体として環境負荷低減に向けたアプローチができると考えました」と栗山は語ります。
材料特性を活かした付加価値の高い再生プラスチックへと転化させるには、廃材を正確に分類することが最も重要です。分別が行き届いたソニーグループの工場から提供される廃材は、違う樹脂が混じることなく、非常に品質が良かったため、スムーズにSORPLASに活用できたといいます。

SORPLASを活用したブラビア®の背面を覗くと、「SPL」から始まる英数字が刻印されています。これはSORPLAS使用製品か否かを一目で判断できる目印であり、製品の再資源化に向けて重要な役割を果たしています。

SORPLASのグレード名が刻まれたブラビアの背面カバー

「テレビの設計チームと協議を重ね、特別な刻印を施しました。将来テレビを廃品回収する際、SORPLAS使用製品を確実に選別することが狙いです。」
回収の仕組みまで整えることは、開発当初から栗山が見据えていたことでもありました。栗山は「世の中でもまだ例が少ない『製品 to 製品』の資源循環の実現をめざして、一歩一歩着実に挑戦していきたい」と熱く語ります。

他社との連携で挑む、「スピード」と「精度」で導く資源循環システム

プラスチックの資源循環をめぐるソニーの取り組みは、実は別の形でも私たちの身近に存在します。それは近年、スーパーやコンビニエンスストアなどで目にすることの多い、ペットボトルの自動回収機です。

ノルウェーを拠点に資源回収・リサイクル事業を展開するTOMRA社が開発・提供する回収機は、持ち込まれた大量の飲料容器をそれぞれわずか1秒程度で識別、容器の素材や形状、バーコードを高速かつ正確に読み取る優れた性能を備えます。

使用済みのボトルをTOMRA社の自動回収機に投入する様子

そして、これに大きく貢献しているのが、ソニー独自開発のグローバルシャッター技術Pregius™を搭載した、ソニーのイメージセンサーです。回収機内のカメラに内蔵され、飲料容器の識別に活用されています。一般的なCMOSイメージセンサーは高速で動く物体を撮像すると、歪みが生じ、形状や文字などの判読が難しい一方、グローバルシャッター技術は、被写体の電子信号を全画素同時に出力できるため、高速で動く物体でも高い精度で歪まずに捉えることが特長です。

Pregius技術搭載のイメージセンサーが飲料容器の自動選別をしている様子

ソニーセミコンダクタソリューションズ・ヨーロッパで半導体のセールス&マーケティングを統括するパスカル・フラメントは、「我々の技術によって、ペットボトルを間違いなく選別し、他の廃棄物による異物の混入を避けることができます。これにより、TOMRA社が提供するユーザーのリサイクル体験をスムーズにし、リサイクルに適した高品質な資源の確保を可能にします」とイメージセンサーの価値を強調します。

パスカル・フラメント ソニーヨーロッパ, デバイス セールス&マーケティング ヨーロッパ

「スピード」と「精度」における高い技術で回収機の性能を支えるイメージセンサー。その貢献は資源収集車の物流システムにまで及びます。
一般的な回収方法では、生活者が出したペットボトルを自治体が回収後、他の廃棄物と選別するために中間処理施設へ集積しなければならず、資源収集車の輸送効率が悪い傾向にありました。しかし、TOMRA社の自動回収機であれば、イメージセンサーによって回収時点ですぐさま選別ができるため、わざわざ処理施設を経由する必要がなく、さらには回収品の容量を三分の一に減らす機能により、一度に運搬可能な容量を増やすこともできます。収集車の出動効率や輸送コストを改善するだけでなく、収集車から発生するCO2削減にもつながります。

資源循環システムを通じて環境負荷低減をめざす一方、今ある運用の非効率さゆえにCO2排出のジレンマを抱えていたTOMRA社。ソニーのイメージセンサーの導入は、資源価値の再利用に加え、物流システムの最適化に大きく貢献しました。そして、TOMRA社がチャレンジし続ける、環境・経済の両面において持続可能なシステムの構築を支えています。
フラメントは「社会には環境の課題が非常に多くあります。その解決に向けて高い意識で取り組むTOMRA社のようなパートナーとともに、我々の技術が一つでも多く貢献できるよう、日々挑戦していきたいです」と期待を語ります。

ソニーとプラスチック。その関わりの先には、最適な資源循環システムの構築に向けて、グループ内や他社と連携をしながら進めている、着実な取り組みが浮かび上がります。持続可能な社会に貢献するサーキュラーエコノミーの実現に向けて、ソニーは数々の課題と向き合い続けています。

  • ※キービジュアルに使用しているイラストは、記事中で紹介しているソニーのプラスチック循環の取り組みや将来のめざす姿を1つの図解にまとめたイメージです。