多様性こそ社会を変えるイノベーションの源泉 「Sony Women in Technology Award with Nature」創設(後編)
ソニーグループ株式会社 副社長 CTOの北野宏明と、科学雑誌Nature編集長のマグダレーナ・スキッパーさんによる対談の後編です。今年3月に新設された「Sony Women in Technology Award with Nature」は、女性研究者の貢献を広く世に伝え、活動を支援することで、新たなテクノロジーの創出とイノベーションをもたらすことを目指しています。対談の中で、二人は自身のキャリアを振り返りながら、次世代の研究者に向けたメッセージを伝えました。また、失敗を恐れず寛容であることや、性別だけではなく国籍や専門性などのあらゆる観点で多様性を取り入れることが、テクノロジーや社会をよりよく変えていくと語りました。
女性研究者は社会を大きく動かす力がある
「テクノロジー分野に女性が少なく、十分な評価がされてこなかったのはなぜか」という問いに対し、マグダレーナ・スキッパー(以下、マグダレーナ)さんは、歴史的な要因などに触れ、「より多くの女性がテクノロジー分野に進むにつれて、テクノロジーやイノベーションはより人間的なものになるのではないか」との意見を述べました。
また、二人は、幹部ポジションにおける女性比率の低さも解決すべき問題である、との認識を共有しました。
マグダレーナさんは、現状を変えていくためには、女性が自ら発信する事ができる場を提供し、評価される機会をつくることが大事だとして、現在、そして将来の女性研究者に向けて、次のようなメッセージを伝えました。
「キャリアの様々な段階にある女性にむけて、私がいつも伝えているメッセージは、失敗することを恐れず、受け入れることです。失敗は常に成功の一部であり、失敗なくして成功はありません。もう一つのアドバイスは、果敢に行動すること、一歩を踏み出して好機を積極的に活用していくこと、そして自分を信じることです。誰もが優れたアイデアを持っており、そのアイデアを共有することで、より明確に形にしていけるかもしれません」
二人は、賞の審査プロセスの重要性にも触れました。マグダレーナさんは、「審査委員の多様性が欠けているために、女性をはじめとする少数派に属する人たちが受賞機会を得られないことがある」と指摘し、今回の賞の審査委員は性別・国籍・専門性など多様なメンバーとする方針を示しました。
多様性な視点とオープンマインドさが社会を豊かにする
また、「どのようにして多様性に富んだチームを受け入れる環境を作ってきたのか」というマグダレーナさんからの問いに対し、北野はさまざまなバックグラウンドを持つ仲間を集め、チームで活動してきた自身の経験を語りました。
「私がゼロから自分で作り上げたチームのほとんどは、国籍も専門性も異なる多様な人々で構成され、男女などのバランスも取れていると思います。これは女性は何%でなければならないといった比率を意識した結果ではなく、とにかく最も優れた才能をもつ人材を追い求めたからです。トップ人材の探索・登用に真剣に取り組めば、結果的に多様性が得られるものだと思います」
最後に二人は、多様な視点や失敗を受け入れ、互いに尊重し合うことが、テクノロジー、ひいては社会をより豊かにすると締めくくりました。
「(科学やテクノロジーで)未知のものごとに挑戦している以上、基本的には90%、あるいは99%の確率でトライアルはうまくいかないものです。さまざまな視点を受け入れ、互いを尊重しあい、ダイナミックに変化する状況に対するレジリエンスをもつのは良いことだと思います」(北野)
「私たち自身が、多様な質問を投げかけたり、あるいは、すでに投げかけられた課題に対する答えに別の方法でアプローチしたりすることにオープンマインドでいることで、私たちの知識やソリューション、イノベーションが豊かになり、その積み重ねで、社会全体がより豊かになっていくと思います」(マグダレーナ)
Sony Women in Technology Award with Natureは、現在グローバルでエントリーを受け付けています(応募期間は2024年5月31日まで)受賞者3名にはそれぞれ賞金25万USドルとNatureを通じて自身の研究活動について発信する機会が提供されます。