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10年後のビジョンへ、クリエイションシフトでIP価値を最大化する 2024年経営方針説明会

ソニーグループは2024年5月23日、東京・品川のソニーシティで2024年度経営方針説明会を開催し、100名を超える報道関係者とアナリストが参加しました。 説明会では、会長 CEOの吉田憲一郎が経営の方向性を「クリエイションシフト」と紹介し、社長COO 兼 CFOの十時裕樹が、2023年度業績説明会で発表した「第5次中期経営計画」の先にある長期ビジョン「Creative Entertainment Vision」 と、その実現に向けた取り組みなどを紹介しました。

経営の方向性は「クリエイションシフト」

最初に登壇した吉田は、Purpose(存在意義)「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」に触れ、ソニーグループの社会的存在意義は、「感動」を作り、それをパートナーとともに世界に届けることだと言及しました。そして、近年は、ゲーム・音楽・映画のエンタテインメント3事業に力を入れてきたことなどを振り返りました。

また、クリエイターと「感動」を生み出すためにソニーが事業を展開する「コンテンツ」「プロダクツ&サービス」「CMOSイメージセンサー」といった領域で、軸足をクリエイション側へシフトしてきたと述べ、各領域で行った投資などの取り組みを紹介しました。

クランチロールを通してアニメクリエイタ—コミュニティへの貢献を志していると語る吉田

今後は「リアルタイムクリエイション」に注力

吉田は、上記の3つの領域を更に成長させるカギとして、今後は「リアルタイム」をキーワードに、CMOSイメージセンサーとゲームエンジンなどのクリエイションテクノロジーに注力すると述べました。

CMOSイメージセンサーには、過去6年間で1兆5000億円を設備投資し、クリエイターに向けた製品においても、感動の瞬間を捉えることに貢献していると説明。ミラーレス一眼カメラ『α9 III』はスポーツ報道の現場で、デジタルシネマカメラ『VENICE』シリーズは映画業界で活用されています。また、CMOSイメージセンサーは、カメラで撮影したことや実際の3Dの被写体であること(真正性)を検証することにも生かされています。

さらに、ゲームエンジンの活用について、ソニーが出資するEpic GamesのUnreal Engineが、ゲーム以外の映像コンテンツ制作にも使われていると述べ、Sony Pictures Entertainment(SPE)の次世代ビジュアライゼーション施設「Torchlight」によるクリエイターの支援の取り組みなどを紹介しました。

今後は、リアルタイムをキーワードに、クリエイションテクノロジーに注力すると語る吉田

10年後のソニーのありたい姿を描いた「Creative Entertainment Vision」

続いて十時が登壇。第5次中期経営計画のテーマ「境界を超える~グループ全体のシナジー最大化~」に触れ、今後も引き続きグループ全体でIP価値最大化に注力すると述べました。そして、10年後のソニーのありたい姿を描いた長期ビジョン「Creative Entertainment Vision」を発表しました。

「Creative Entertainment Vision」公式動画

「Purposeを柱としながら、より明確な時間軸で具体的にイメージできる到達点を示したいと考え、ソニーの未来を担う世代を中心に、グループ各社の多様な人材と2年以上の時間をかけて議論を進めてきました。これは、この先の10年程度の社会の変化や、テクノロジーの進化を推測した、ソニーグループの長期ビジョンを映像として表現したものです」

十時は長期ビジョン策定の背景をこのように述べた上で、キーメッセージの「Create Infinite Realities」に触れ、「私たちは、クリエイターと共に、フィジカルとバーチャルが重なる多層的な世界をシームレスにつなぎ、クリエイティビティとテクノロジーの力による無限の感動を届けていきます」と表明しました。

「Creative Entertainment Vision」実現に向けた取り組み

十時はまた、「Creative Entertainment Vision」が示す方向性に向けて、現在進行中のIPの創出、育成、そして、境界を越えてIPを拡張する「IP360」の取り組みを紹介しました。

IPの創出に向けて、アニメ分野では、アニプレックス傘下の制作スタジオ A-1 PicturesやCloverWorksなどが日本のソニーミュージックやソニーグループのエンジニアと連携して開発中のアニメ制作ソフト「AnimeCanvas」を、2024年度中に試験導入して制作環境と効率の改善などを目指すほか、アニプレックスとCrunchyrollを中核に、海外のアニメクリエイターを育成するアカデミーの設立を検討中であることを明らかにしました。

「AnimeCanvas」の試験導入を説明する十時

また、IPの育成について、ゲームと映画分野ではPlayStation Productionsを立ち上げ、ゲームIPの実写映像化に取り組んできた実績を紹介。「Horizon」や「God of War」などの作品制作を進めていると述べました。

そして、「IP360」については、IPと各種技術を掛け合わせてアトラクションなどに展開するロケーションベースエンタテインメント(LBE)、ファンのIPに対する愛着を高めるグッズなどに展開するマーチャンダイジング、エンタテインメントのさらなる活用が見込まれるモビリティ空間に、カテゴリ横断で注力すると説明しました。

効率的なIP価値最大化のためのソリューションとインフラ基盤の構築も目指す

また、クリエイターがIP価値最大化を高品質かつ効率的に行うための技術基盤にも言及。ソニーグループの強みである、センシング&キャプチャリング、リアルタイム3D処理や各種AIや機械学習といった技術に触れ、スピーディーかつ低コストに幅広いファンにIPを届けられるソリューションの構築を目指すと述べました。

さらに、IP価値最大化の取り組みを効率的に行うため、PlayStation Networkのネットワーク基盤をベースとして、アカウント、決裁、データ基盤などのコア機能をCrunchyrollに展開して、グループ共通のエンゲージメントプラットフォームへと発展させることも検討中であると紹介し、将来的にはファンエンゲージメント特化型の共通インフラ基盤として、広くエンタテインメント業界で活用されることを目指すと語りました。

最後に十時は、「ソニーが長期視点で価値を創出し、成長し続けるためには、事業と人材の多様性を継続的に進化させていくことが重要」という昨年の発言を改めて取り上げました。

そして、エンタテインメント事業を中心に新たな考え方や知見をもたらす仲間が増えているほか、外国籍役員比率と女性管理職比率は年々高まっていると指摘。今後も境界を越えたIP価値最大化を着実に進めるとともに、事業と人材の多様性の継続的に進化させ、さらなる成長を実現すると述べ、プレゼンテーションを終えました。

十時は、事業と人材の多様性の進化を推進して成長を実現すると述べ、スピーチを締めくくった。