About
Good Design Award
ソニーが近年受賞した
グッドデザイン賞
家電や建築、サービス、地域づくり活動など、有形無形を問わず、人が何らかの理想や目的を果たすために意図して築いたものごとをデザインととらえ、
その質を評価するグッドデザイン賞。デザインの力でいかに暮らしや産業の質を高め、新たな社会の活力を生み出しているかが問われます。
ソニーが手がけた様々な製品、サービス、活動もグッドデザイン賞を受賞しています。
ここでは、グッドデザイン賞の歴史などをご紹介するとともに、近年の受賞案件を振り返ります。
グッドデザイン賞について
まずは、グッドデザイン賞の基本情報や
歴史をご紹介します。
グッドデザイン賞とは
優れたデザインの製品や建築、サービス、システムに贈られるグッドデザイン賞は、公益財団法人日本デザイン振興会が主催しています。グッドデザイン賞は単にデザインの優劣を競うコンクールやコンテストではなく、その審査を通じて、新たな創造の価値を発見して社会と共有することで、次の創造につなげていく仕組みです。
デザインの盗用問題を背景に、グッドデザイン賞は当初、工業製品のみが受賞対象となっていました。しかしながら、受賞対象の範囲は、時代とともに変わってきています。
グッドデザイン賞は、向き合うべき根源的な課題として以下の5つの言葉を掲げています。つまり、これらの課題解決を求めているともいえます。
- 人間(HUMANITY)
- もの・ことづくりを導く創発力
- 本質(HONESTY)
- 現代社会に対する洞察力
- 創造(INNOVATION)
- 未来を切り開く構想力
- 魅力(ESTHETICS)
- 豊かな生活文化を想起させる想像力
- 倫理(ETHICS)
- 社会・環境をかたちづくる思考力
グッドデザイン賞の
歴史/背景
グッドデザイン賞は、これまで「復活の時代」「ジャパンオリジナルの時代」「価値変化の時代」「価値多様化の時代」「共有の時代」の5つのフェーズを経てきました。その歴史は、1957年にさかのぼります。
第2次世界大戦に敗れた日本は、戦後復興に向けた動きを活発化させていました。そんななか、1949年(昭和24年)にイギリスからGHQを通じて日本の輸出織物の意匠がイギリス製品を盗用していると抗議されたことを皮切りに、複数の先進諸国から輸出品のデザイン盗用問題の指摘が相次ぎ、外交問題に発展しました。これを受けて政府は輸出検査や輸出意匠の登録・認定などの制度整備を行い、一定の成果を挙げましたが、根本的に模倣を防止するにはオリジナリティのあるデザインを奨励するべきであるという動きが政府をはじめ民間企業の中でも起こり始めます。一方、イギリスでは経済復興と貿易発展に対してデザインが大きく寄与するものとの考えから、グッドデザイン商品を選定する取り組みが始まります。こうした2つの動きが重なり、通商産業省(現在の経済産業省)は1957年に「グッドデザイン商品選定制度」(Gマーク制度)をスタートさせました。このGマーク制度が、現在のグッドデザイン賞の前身になります。
1970年代に入り、順調な経済成長率を示すなか、ソニーが1979年にウォークマンを世に問います。このような日本企業のデザインが国際的に高い評価を受け、発信力のある製品が次々と登場します。Gマーク制度は、時代をリードするデザインを表彰するため、1977年に「部門別大賞」を選ぶ特別賞、1980年にその年を象徴するデザインに位置付けられる「グッドデザイン大賞」を設けます。
バブルが崩壊し、また、温暖化をはじめ環境対策も大きな課題として問われた時代。これまで築いてきた価値観が国内外で揺らいだ時期ともいえます。こうした情勢のもと、旧通産省主催のグッドデザイン商品選定制度は終了し、1998年に日本産業デザイン振興会(現・日本デザイン振興会)主催の「グッドデザイン賞」として改めてスタートしました。
2000年代に入ると、ICT(Information and Communication Technology)が急速に発展。グッドデザイン賞では、近未来の生活者の視点に立つという方針への転換が行われました。そして、「人間、本質、創造、魅力、倫理」という5つのワードが、グッドデザイン賞の理念に掲げられます。
2011年に発生した東日本大震災。大災害に直面した人々は「自分たちにできることは何か?」といった根源的な問題を考えることになりました。価値観が大きく転換した出来事だといえます。グッドデザイン賞も「何がよいデザインなのか?」と考え直す契機になりました。
(参照:https://www.g-mark.org/about/)
賞の種類
グッドデザイン賞の審査は、応募者から示された情報をもとに実施する「1次審査」、応募対象の製品などをもとに行う「2次審査」によって行われます。2次審査を通過した応募対象は「グッドデザイン賞受賞」となります。
グッドデザイン賞を受けたすべての対象の中で、これからの生活・産業・社会を導き、明日を拓き得る優れたデザイン100件をグッドデザイン・ベスト100として選びます。このグッドデザイン・ベスト100に選ばれたものの中から、特に優れているものに対し、以下に挙げるようなグッドデザイン特別賞が贈られます。
- グッドデザイン大賞
- すべてのグッドデザイン賞受賞対象の中で、最も優れたデザインと認められたものです。
- グッドデザイン金賞(経済産業大臣賞)
- すべてのグッドデザイン賞受賞対象の中で、特に優れたデザインと認めるものです。
- グッドフォーカス賞 新ビジネスデザイン
(経済産業省 商務・サービス審議官賞) - すべてのグッドデザイン賞受賞対象のうち、新たなビジネスモデルや新産業の創出、イノベーションの促進などに寄与する意味で、特に優れたデザインとして認めるものです。なお、グッドフォーカス賞にはこの他に[技術・伝承デザイン](中小企業庁長官賞)、[地域社会デザイン](日本商工会議所会頭賞)、[防災・復興デザイン](日本デザイン振興会会長賞)の3つのテーマが設けられています。
ソニーが受賞した
グッドデザイン
金賞・特別賞・ベスト100
ここからは、近年ソニーが受賞したグッドデザイン金賞・特別賞・ベスト100を年度別にご紹介します。
2023年度
グッドデザイン賞
-
グッドデザイン金賞
ポータブルシアターシステム HT-AX7
評価ポイント/審査員コメント
これほどまで手軽に、ストレスなく立体音響空間を実現してくれるものはこれまでなかった。まず、一見小さなインテリア小物のような佇まいから想像出来ない迫力あるサウンドを響かせるのだが、本体から充電されたワイヤレス・リアスピーカーを持ち上げ、自分の背後左右に置いた瞬間、本格的なホームシアターのような立体音響空間に包み込まれる。ワイヤレススピーカーとして不可欠な充電という行為を、非常に巧みに、必然的にデザインしている事が、この立体音響体験をより気軽で身近なものとしている。力業ではなく軽やかに、必然的に導き出されるようにUXを実現した素晴らしいプロダクトである。
-
グッドデザイン金賞
PlayStation®5用アクセシビリティ
コントローラーキット Access™ コントローラー評価ポイント/審査員コメント
これだけカスタマイズの高い自由度がありながら、破綻のないデザインに驚かされる。本体の円形構成によって「向き」の制約をなくし、操作ボタンも「高さ、長さ」など個々の状態に合わせやすい豊富なパーツ類が工具なく脱着できるなど、製品化までにユーザーと多くの対話をしたであろう、細やかな配慮が実装されている。標準コントローラーとの同時使用により操作分担しながら複数人で一緒に遊ぶこともでき、パッケージの開封から接続に至るまでの一連の流れも一貫性がありブレがない。同社の高い理想である「誰もが遊べる」コントローラー実現を目指した特別仕様でありながらも、特段高額としなかった事が同社の背景にある明確で強い意思を表しているといえる。審査委員一同、満票にてこれを高く評価した。
-
グッドデザイン・ベスト100
空間再現ディスプレイ ELF-SR2
評価ポイント/審査員コメント
立体映像を映し出すディスプレイはこれまで各社様々な方式で開発してきたが、同社はカメラで瞳を検知して左右の目に生成した3D映像を届けるという独自の方式である。眼鏡やゴーグルを必要とせずに、大画面化された3D映像を裸眼で見るという体験は想像以上に心地よくリアリティを感じるものである。今後あらゆる領域での実用化が期待できる。プロダクトとしても細部まで非常に洗練されており、スタンドや背面の造形処理も美しい。カメラ技術で培われた瞳を検知するというAIが、3D映像を裸眼で体験できるためのキーテクノロジーに昇華している。
-
グッドデザイン・ベスト100
フルサイズセンサー搭載レンズ交換式旋回型のCinema Lineカメラ FR7
評価ポイント/審査員コメント
「形態は機能に従う」と言わんばかりのスタイリングでありながら、随所にデザイナーの美意識を感じる秀逸なプロダクトである。人の入っていけないシチュエーションや無人でなければ撮影できない現場等、これまでのシネマカメラでは不可能だった映像の撮影を実現することがこの製品のカメラとしての使命、一番の特徴ではあるが、無駄をそぎ落としただけではない、機能的、必然的に細部にまで施された美しい形態こそがこの製品の最大の魅力となっている。
-
グッドデザイン・ベスト100
網膜投影カメラキット DSC-HX99 RNV kit
評価ポイント/審査員コメント
「ロービジョン」と呼ばれる日常生活に支障をきたすほど視力に問題を抱えた人向けの、視力に依存しない網膜投影ビューファインダーを搭載したカメラキットである。本製品は単に「見える」ことを目的に作られたものではなく、美しい風景を誰もが同じように感動したりシェアするなど写真に付随する楽しさを伝えたりすることを目指したことにあり、人間の感性を尊重する理念が最新の技術となって実装されている。その製品化までの成り立ちもユニークで、違う技術を持つ会社同士がお互いの理念をリスペクトする事で商品化にまで至ったその背景は、学ぶべき美しい姿勢であると言ってもいい。最先端のテクノロジーがただ利便性や不便さを取り除くものではなく、豊かな感性を満たすために作られた点を審査委員一同高く評価した。
2022年度
グッドデザイン賞
-
グッドデザイン金賞
ワイヤレスステレオヘッドセット LinkBuds
評価ポイント/審査員コメント
今回エントリーされたイヤホンの中で、際立った存在であった。音楽を聴きながら周囲の音を取り込むことは、そもそも矛盾とも思えるが、耳を塞がないリング型ドライバーという発想に至り、実現したことは驚くべきことである。デバイス開発も出来るこのメーカーの強みといえる。耳周辺のタップによる操作など、新たな試みも満載、着けてみると軽く、開放感があり、心地良い。この構造で高音質を実現している事に、問題解決とモノの本質とをトレードオフしないというメーカーの強い姿勢が読み取れる。驚くほどコンパクトなパッケージもプラスチック使用量ゼロを実現するなど、環境にも配慮され、この業界に蔓延する過剰な包装形態に一石を投じる試みである。イヤホンが本来持つ問題に真摯に取り組んだ、大義ある秀逸なプロダクト。
2021年度
グッドデザイン賞
-
グッドデザイン金賞
コンソールゲーム機 プレイステーション®5
PlayStation®5はゲーム体験を新たに再定義し、ユーザーに新世代の革新的なゲームプレイを届けます。 ハプティック技術、アダプティブトリガー、3Dオーディオ技術が生み出す濃密な没入感。カスタムされたCPU・GPU・SSDがその力を発揮し、これまでのPlayStation®の常識を超える処理性能を実現しています。
-
グッドフォーカス賞 [新ビジネスデザイン]
音声ARアプリ Locatone(ロケトーン)
Locatone(ロケトーン)は、リアルの場を活用し、そこにバーチャルな世界を掛け合わせた、新しいサウンドエンタテインメントです。好きなコンテンツを選択し、マップ上の特定のスポットを訪れると、位置情報に連動して自動的に音声や音楽が聞こえてきます。音声を聞きながら街をめぐることで、街の新しい魅力や楽しみ方を発見できます。
-
グッドデザイン・ベスト100
映像制作用カメラ商品群 Cinema Line
VENICE / FX9 / FX6 / FX3本格的な映画制作から小規模制作の映像まで、幅広い領域の映像クリエイターにシネマの印象的な映像表現を提供する、映像制作用カメラ商品群です。映画制作の現場で培ってきた映像表現力と最先端のデジタルイメージング技術を融合し、多様化する映像文化の広がりを支えます。
-
グッドデザイン・ベスト100
5Gミリ波帯対応デバイス Xperia PRO
5Gミリ波やHDMI入力に対応し、新たな映像づくりに挑むクリエイターの制作環境を革新させるプロフェッショナル向け5Gミリ波帯対応デバイスです。業務用カメラ等にXperia PROを繋げば、高解像度データを場所を選ばずワイヤレスに超高速伝送。過酷な撮影環境での制作ワークフローを改善し、より自由な映像の創造に貢献します。
2020年度
グッドデザイン賞
-
グッドデザイン・ベスト100
モビリティへの取り組み VISION-S
ソニーは、テクノロジーとクリエイティビティによってモビリティの進化へ貢献していく取り組み「VISION-S」を発表。安心・安全からエンタテインメントまで、次世代の移動体験を提供し、公道走行を前提とした試作車両をデザイン・開発しました。今後パートナー企業と新たな移動体験に向けた活動を継続していきます。
評価ポイント/審査員コメント
半導体、エレクトロニクス、モバイル、MaaS、エンタメ、金融…ソニーが持つ事業アセットを融合させ、未来のモビリティのあり方を追求するプロジェクト。プロトタイプは、新規性や独自性よりも「そのまま公道を走行できる」安全性と規格にこだわって開発され、CESでの発表はソニーとして史上最高のバズが生まれるほどのグローバルな注目を集めた。センシングによる安全性、ソフトウェアによる継続的なアップデート、AIによる移動最適化やエネルギー効率向上、ファイナンシャルサービスとの連携などを更に推し進め、社会への未来像提示と実装を期待したい。
-
グッドデザイン・ベスト100
toio™ 専用タイトル おんがくであそぼう ピコトンズ
ソニー・インタラクティブエンタテインメントによる、ロボットトイ「toio™(トイオ)」の専用タイトル。付属のマットや絵本の上で「toio™コア キューブ」をタッチ・スライドするだけで子どもでも直感的に音楽が演奏でき、キャラクターとゲームであそびながら、幅広く音楽が学べる新しい遊びです。
評価ポイント/審査員コメント
toioの専用タイトルだからこそできる音楽における感性と直感を育てるプログラムに仕上がっている。子どもも大人も関係なく楽しめ、気がつくと作曲体験が生まれるというシステムのデザインに評価が集まった。プログラムだけでなく、同梱されているプレイブックが楽しむことを促してくれることで、触ってみたい、演奏してみたいという気持ちが身体の中から呼び起こされてしまう。ピコトンズで遊んだ子どもたちが、これからどのように音楽と付き合っていくのか、とても楽しみである。
2019年度
グッドデザイン賞
-
グッドデザイン金賞
都会の中の実験的な「変わり続ける公園」 Ginza Sony Park(銀座ソニーパーク)
街に開かれた実験的な「変わり続ける公園」として、個性豊かなパートナーとともに、年間を通して遊び心を感じる体験型イベントやライブ等のプログラム、様々な試みをする店舗を展開。ソニービル解体途中、建て替えを再開する2021年9月までの期間限定「垂直立体公園」。ビルの特徴的な構造を残し、フラットな地上部と地下4層で構成している。
評価ポイント/審査員コメント
銀座数寄屋橋交差点のランドマークであったソニービルの地上部分を解体してつくられた公園。地下では地下鉄のコンコースや西銀座駐車場とも繋がり、地下部分も含めて立体的な公園としてデザインされている。公園の定義とはなにか、公共スペースとはなにかと見ている側を逆照射する。オリンピックを控え再開発が乱立する中で、あえてオープンスペースをつくることを選んだこと。数年間はあえてビルは建てないことを選んだことそのものが、現在最も革新的なデザインであるといえるだろう。
-
グッドデザイン金賞
toio™ 専用タイトル 工作生物 ゲズンロイド
ソニー・インタラクティブエンタテインメントによる、ロボットトイ「toio™(トイオ)」の専用タイトル。 付属の工作シートから作る紙工作を、モーター内蔵で動き回ることのできる「toio™コア キューブ」と組み合わせてプログラムで制御することで、 命を吹き込まれたように動く「工作生物」ができあがる。
評価ポイント/審査員コメント
自分のつくった生物が動く。そんな夢想を形にしてくれる。ここでつくるのがロボットではなく生物というのがそそられる。「デジタルものづくり」ではなく、「動く紙工作」である点が興味深い。コンセプトはもちろんのこと、アナログとデジタルの融合の仕方、好奇心を刺激する演出、命を吹き込む動きのデザイン、ネットを活用した展開手法など、すべてが秀逸な作品。
-
グッドデザイン・ベスト100
グラスサウンドスピーカー LSPX-S2
LSPX-S2は、透明な有機ガラス管を振動させ、クリアな音で空間を満たすグラスサウンドスピーカーです。すべてを音質のために最適化設計し、テーブル中央に置いても会話を遮らないようなコンパクトで居住空間に溶け込む佇まいと、高音質化・ハイレゾ対応を両立させました。生演奏のようなリアルな音と柔らかな光が調和し、空間を彩ります。
評価ポイント/審査員コメント
前作のピエゾスピーカーよりさらに空間に溶け込むデザインとなっている。電気製品感を払拭し、次の時代のモノのあり方を示唆するような啓蒙感のあるデザインで、音の良さだけでなく心に響く光の揺らぎが空間に安らぎを与え心地よい。先端のガラス部分は細くテーブル上の料理を遮らず、また底面積も小さいので置く場所を選ばない。そのため、トレイに載せてお酒や料理と一緒に持ち運ぶ、キャンドルを彷彿とさせる使い方が粋だ。
ソニーデザインは、近年ソニーグループのビジネス領域の拡大に伴いデザインの領域を広げ、様々な活動に取り組んでいます。
これらの活動がグッドデザイン賞という社会的意義を求められる賞を受賞できたことはとても意味のあることだと考えます。
これからもソニーデザインは、デザインの力で社会に貢献することを目指します。