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極限環境を切り拓く 自律移動ロボットを つくりたい 人類史上誰も 見たことが ない景色を 見られる ようにする ソニーグループ R&Dセンターの研究者 市川サラのポートレート写真

R&Dメンバーを解き明かす

極限環境を切り拓く
自律移動ロボットをつくりたい

市川 サラ

2020年入社 工学研究科ロボティクス専攻卒
仕事内容:高効率な3D環境認識ソフトウェア開発(地図生成、経路生成)
専門分野:ロボット工学、ナビゲーション

現在の仕事内容は?

未知の環境下でのロボットの
自律移動を支える
ロボットナビゲーション

私たち人間は知らない土地で目的地に行きたいとき、地図アプリで経路検索をして最短経路を探します。ロボットも人間と同様のことをしています。具体的には、はじめにカメラやLiDARなどのセンサから、周辺環境のデータを取得します。取得した画像や3D点群データから、一般的には信号処理をして自分の周辺環境の地図を作成します(地図生成)。そして、その地図上で、自分の現在位置がどこなのかを把握(自己位置推定)。障害物を避けて安全にゴールに到達できる経路を探索し(経路生成)、経路を追従(経路追従)します。この一連の流れが「ロボットナビゲーション」と呼ばれており、この流れを常に繰り返すことで、ロボットはそれまでセンサで捉えられていなかった部分や環境の変化にも対応することができます。

ロボットナビゲーションのイメージ画像
大学院時代に自作したドローンの写真

なぜ今の研究分野に?

人間が行けないような場所に行ける
ロボットをつくりたい

大学院時代から、現在の専門であるロボットナビゲーションを専攻していました。研究室ではプラントで稼働するロボットを研究していましたが、同時にドローンでの映像撮影にはまり、ドローンを飛ばしていました。普段見ることのできない景色が見られるのが本当に楽しくて。そして「ロボットは人間がたどり着けない場所を見せてくれる」という魅力を再発見しました。ロボットナビゲーションは、ロボットが自分の位置や周りの状況を把握し、目的地までの経路を計画する技術ですが、ロボットが人類未踏の地を探索したり、危険な環境で人間の代わりに働いたり、世に役立つために不可欠な技術です。数多くのロボティクス領域の技術の中から、あえてこのソフトウェア系を専門としたのは、ロボットの機能向上と将来の応用可能性を大きく広げることができると感じたからでした。

自分のルーツになったエピソードは?

宇宙と出会って興味を抱いた
サイエンス・テクノロジーの世界

自律移動ロボットには、人間が立ち入れない極限環境でさまざまなタスクをこなすことが期待されていますが、実は、まさに極限環境の代表である「宇宙」へのあこがれが、私の研究の原動力なんです。原点は、高校時代に参加したJAXA主催のサマーキャンプ。家族が購読する科学雑誌に載っていた広告に、たまたま目が留まったという些細なきっかけで参加しましたが、小惑星探査機「はやぶさ」が帰還した直後で、かなり“熱い”タイミングでした。惑星探査活動のリアルに触れ、同世代と感動を一緒に味わったことで、「私もいつか宇宙に行きたい。宇宙で活躍するものをつくりたい」という想いがむくむくと大きくなりました。当時、理系科目の勉強は決して得意ではなかったのですが、この出来事がサイエンス・テクノロジーに興味を持ち、理系学部への進学を決めるターニングポイントだったと思います。

高校時代にJAXA主催のサマーキャンプに参加したときの写真
大学院時代に無重力飛行体験に参加したときの写真

ソニーを選んだ理由は?

若手の提案を受け入れサポートする
企業文化と職場環境

企業で研究活動を続けるにあたり、若手でも新規事業など自分で提案し挑戦できる機会があるかが、気になるポイントでした。就職活動の中で、ソニーには新規事業の創出や事業化を支援するSony Startup Acceleration Programというプログラムや、新たな事業や研究アイデアを発信するボトムアップ活動があることを知りました。そして、ここで挑戦したいと思いました。実際に入社して、年齢や社歴に関係なく提案できる雰囲気や、共感した提案には惜しみなく協力する文化を感じました。ソニーは事業の幅が広く、さまざまな分野の研究者が在籍しているので、自分一人の知識では行き詰まりそうなアイデアも実現できると確信しています。

R&Dセンターのスゴイところは?

多彩なクリエイティビティを持つ
研究者仲間との出会い

ソニーのR&Dセンターには各分野の専門家が集まっていますが、同時に発想力やクリエイティビティにあふれる人が多くいます。業務外のつながりもあり、私の場合は新入社員研修で同じグループだったメンバーと毎週のように話をしています。音楽や3D映像、VRゲームなどにも精通する人がいるので、3Dコンテンツや音楽、動画などを合作して楽しむこともあります。研修に取り組んだ当時も全力投球で課題に取り組みましたが、プライベートでの活動も遊びのつもりが、気づいたら真剣になっていることも。そうした交流の中から、研究活動に役立つ情報やヒントが得られることが多々あります。R&Dセンターのエンジニアが集まれば、何だってできてしまうのではないかと本気で思っています。

自宅でテレワークしているときの写真
害獣対策ドローンシステムの画像

印象的だった仕事は?

害獣対策ドローンのアイデアが
社内イベントで受賞

私は静岡県の山の自然が豊かなエリアで生まれ育ちましたが、野生動物による農作物への被害が頻発していて、実家の畑もイノシシに荒らされて困っていました。そこで、大学時代に研究した自律移動ロボットの知見を生かして、ドローンで害獣を発見・追跡するシステムを発案しました。そのアイデアを社内で開催された研究開発テーマのボトムアップ提案活動「チャレさぽ」で発表したところ、特別賞を受賞できました。私の提案が多くの人に認められ、興味を持ってもらえたことは、アイデア創出の自信にもつながっています

この先の目標は?

ロボティクスで人間の暮らしを安全
で便利にしたい

人間の代わりにさまざまな作業を行うアシスタントロボットを開発し、暮らしをスマートにしたいです。一人に一体ずつアシスタントロボットがいるSFのような世界が実現できたらいいなと思っています。将来、自分が手がけたナビゲーション技術が、さまざまなロボットに搭載される未来が来たら、と想像しながら研究に打ち込んでいます。そして、やはり「宇宙へ憧れ」も持ち続けています。宇宙空間で探索や作業を行う自律移動型ロボットを開発して、人類史上誰も見たことがない景色を見たい、そのロボットを相棒にして私も宇宙に行ってみたいというのが、私の夢です。

オフィスでの市川サラの写真 オフィスでの市川サラの写真

日々の研究活動で大切にしている言葉は?

猪突猛進

どんなテーマにも果敢にチャレンジしていくのが私の研究スタイルです。子どもの頃から、勉強でも遊びでも「できない」と言うのが嫌で、できるかどうかわからないことにもチャレンジしてきました。その精神は今も変わりません。「猪(イノシシ)」は畑を荒らす厄介者ではありますが、突進するときの猛烈なパワーにはあやかりたいです。これからも猪突猛進の勢いで研究に取り組んでいきたいと思います。

実績

チャレさぽ2020:
「小型UAVによる害獣追い払い」特別賞受賞
チャレさぽ2021:
「自然な合成写真生成」特別賞受賞

関連リンク

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