Collaboration

イノベーションを加速させるデータ分析

事業の多様性に磨かれた高精度の予測分析ツール

2020年3月11日

  • 高松 慎吾

    ソニー株式会社 R&Dセンター
    Tokyo Laboratory 07

  • 矢倉 秀樹

    ソニー損害保険株式会社
    ダイレクトマーケティング部

2010年代に入り、日常にあるさまざまな種類の膨大なデータを収集、分析し、人々の生活やビジネスに活用する動きが加速しています。特にデータ分析手法として、統計アルゴリズムや機械学習を用いて過去の実績から将来の結果を予測する“予測分析”に注目が集まっています。研究に携わる高松が話します。「予測分析はお客さまの購買行動をより的確に把握することを可能にしたり、製造情報を元に歩留り改善に向けて製造工程を分析したりすることで、企業がより効果の高い施策を打てるようになります。しかしデータの収集は当たり前になる一方、種類も量も豊富なデータを分析、活用するためには高い専門性が必要でした」。

予測分析技術とは?
機械学習により、過去のデータに基づき、将来の結果を予測する技術のこと。

そこで、高松のチームが開発を進めているのが、予測分析ツール「Prediction One」(プレディクション・ワン)※。このツールの特長は“データ分析の専門家でなくても簡単に操作ができること”。「ユーザーが分析したいあらゆるデータに対応できるよう、アルゴリズムを構築しました。ツールが入力データに適した分析手法を自動的に選択するため、ユーザーはワンクリックで予測分析を行うことができます。データを外部に出す必要もありません」。

※:Prediction One(プレディクション・ワン)

専門知識がなくても簡単に操作できるシンプルで直感的なUIが特徴の予測分析ツール。ユーザビリティや予測精度の高さはもちろん、予測の根拠まで提示されるなど、これまでにない独自技術を開発。また、特別なシステムも不要で、ノートPCのような一般的な環境でも動作するように設計されている。2019年6月よりソニーネットワークコミュニケーションズよりサービス提供中。
https://predictionone.sony.biz/

高松は、ソニーに多様な事業があるからこそ、こうした特長を実現できたと振り返ります。「R&Dで開発したデータ前処理・モデル構築技術を社内で紹介すると、ソニーグループ内のいろいろな事業体からデータ分析の相談を受けました。そこで私が事業側を兼務しながら、さまざまなデータと分析ニーズに対応できるツールを開発して事業をサポートしていたのです。多様な事業を支援しながら、豊富な種類のデータサンプルをもとにアルゴリズム開発を進めたことで、より多くのケースを事前に想定したツールができました。また、ツール自体もソニーグループ内に広く公開していたので、試作段階から多くのユーザーがいました。使用したグループの皆さんからもらったフィードバックから新たな課題が見つけることができ、ツールのブラッシュアップにつながっています」。

開発当初からツールを活用してきたソニー損保の矢倉はこう話します。「さまざまな要望を聞き入れてもらい、とても使いやすいツールになっています。もちろん精度も高く、お客さまの傾向を正確につかむことができます。また、どうしてその予測が出たかという理由も表示されるため、社内でサービス改善施策の提案を説明する際に説得力があります。今後強化したいのは『何を予測し、結果をどう活用するか』といったツールの“活用スキル”です。高松さんに相談に乗ってもらいながら、より効果的な活用方法を模索しています」。

「予測分析を企業がうまく導入できると、サービスが向上し、企業と顧客の両方にプラスになると考えています。開発したツールによって、世の中にこの動きを加速することができれば、イノベーションと言えるのではないでしょうか。広く外部の皆さんにも活用いただきながら、グループで連携してこのツールを進化させていきたいです」(高松)。

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