Prideロゴに込められた思い
社会との信頼関係の礎となるブランドを育むうえで欠かせないものの一つに企業ロゴがあります。ソニーは昨年5月から、LGBTQ+コミュニティを支援するPride活動の象徴である虹色をあしらった「Prideロゴ」を導入しています。これは、LGBTQ+の社員やコミュニティを尊重し、支援する姿勢を社内外に表明したものです。6月はプライド月間として、世界各国・各地域でLGBTQ+に関する啓発活動が行われます。今回はPrideロゴに込めた担当者たちの思いをお届けします。
ソニーのLGBTQ+への取り組み
多岐にわたるバックグランドを持った人材が活躍するソニー。ファウンダーの一人である井深大は、人材を城の石垣に例えた言葉を残しています。
「企業もお城と同じようなもの。下の石垣がしっかりしていなくてはいけない。強い石垣はいろいろな形の石をうまくかみ合わせることによってできる」
「多様性」をValuesの一つに掲げるソニーにとって、LGBTQ+社員が活躍できる環境整備は重要な取り組みです。国内ソニーグループのダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)推進の一環として日本におけるLGBTQ+の啓発を担当するのは、ソニーピープルソリューションズ(株)ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン推進室の竹藤 和弘です。竹藤は「日本でLGBTという言葉がまだ浸透する前からソニーは、取り組みを進めていました」と振り返ります。
また、ソニーは、2013年5月に「ダイバーシティステートメント」を発行。このステートメントの発行は、LGBTQ+の取り組みにおいて一つのターニングポイントでした。
「ダイバーシティステートメントは、経営における多様性の重要性を明確にした大切な宣言です。現在、この宣言では、多様性の意味について、『人種、国籍、宗教、信条、障がい、性別、年齢、出身地、性的指向、性自認および価値観、働き方などの特徴の多様性および多様性を尊重する活動を意味します』と定義しています。当時、LGBTQ+を含む多様性の尊重について方針を明確にしたのは、日本の企業としては先進的でした」と竹藤は説明します。
その後、2015年、渋谷区でパートナーシップ条例が施行されるなど、日本国内でLGBTQ+に関する取り組みが活発になってきたのと同時期に、それ以前から柔軟に運用してきた同性パートナーがいる社員向け制度の周知や、当事者社員の働きやすさを評価するPRIDE指標策定の議論への参画など、取り組みの幅を広げていきました。
また、ソニーはグループ内だけではなく、社外に向けての情報発信にも努めています。竹藤はその狙いを「当事者が自分らしくいることに自信を持てるようにするため」と話します。ソニーグループ(株)は、2017年から東京レインボープライドへの協賛を、2022年からはプライドセンター大阪への協賛とBusiness for Marriage Equalityへの賛同をしています。
Prideロゴが出来るまで
今年4月に開催された東京レインボープライド2023で掲げられたPrideロゴ。Prideロゴ導入の狙いと重要性について、竹藤は以下のように語ります。
「Prideロゴ導入の狙いは、『ソニーがLGBTQ+とともにある』ことを視覚的に示すことです。LGBTQ+の社員やコミュニティを尊重し、支援する姿勢を社内外に示すのも、Prideロゴの重要な役割です」
ロゴとその運用を定めるガイドラインの制作は、2021年の秋から始まりました。2022年のプライド月間での利用開始を目標に、米国、欧州、アジア各国・各地域の100名近いDE&Iの関係者に加え、ブランドマネジメント担当としてソニーグループ(株)ブランド戦略部の宮永 キャサリーナと竹倉 千保、デザイナーとしてソニーグループ(株)クリエイティブセンターの矢村智明が集まり、プロジェクトチームとして検討を進めました。
プロジェクトのきっかけについて、宮永は次のように話します。
「きっかけは、国内外のソニーグループ社員からのリクエストでした。当時のソニーロゴは、LGBTQ+の誇りと尊厳を表すレインボーカラーをロゴの周囲で扱う運用で、それをよりインクルーシブに表現することの意義や重要性、また具体的な方法について、関係者と連携して検討を進めたのです」
また、実際の検討時のチームの様子について、竹倉は次のように語ります。
「チームメンバーは、レインボーカラーのソニーロゴを実現することの意義を理解し、取り組んでいました。また、米国に本社があるソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(SPE)、ソニーミュージックグループ(SMG)、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)のメンバーからは、貴重なアイデアや示唆を多くもらいました。例えば、LGBTQ+のコミュニティをより正しく表すためにはBIPOC(Black, Indigenous, and People of Color)とトランスジェンダーのカラーを含めた11色版のロゴも作成すべきといった意見や、ソニーロゴの周囲にレインボーカラーを使用するのではなくロゴ自体にレインボーカラーを採用することでインクルーシブを表現することが重要という指摘がありました。また、単にレインボーカラーのロゴを制作するだけでなく、支援活動といった行動が伴っていることが必須であるというような意見も出ました」
矢村は、Prideロゴのデザイン面での工夫を次のように振り返ります。
「プロジェクト開始時に、世界各国・各地域の担当者から『ロゴによって、ソニーがLGBTQ+コミュニティも尊重していることを可視化したい。考え抜かれた意味のあるロゴは、社員やコミュニティへのサポートを示すことができる』と聞き、良いロゴをデザインしたいと思いました。ただ、11色のロゴは白・黒を含むことから、背景色に溶け込んでロゴが欠けて見えてしまわないように色味の調整をする必要があり、その調整が大変だったのです。最終的にグラデーションを取り入れるアイデアを思いつき、それぞれの「意味」を損なわないように神経を使いながら、各色のバランスや見え方を何度も調整しました。完成したデザインを見せた際、『生き生きとして鮮やかだ』とか、『色のグラデーションがインクルージョンを感じさせる』と聞くことができて、嬉しかったですね」
世界に広がるPrideロゴ
それぞれの思いが込められたPrideロゴは、世界各国・各地域のソニーグループ関係会社で使われています。
今月、SPEドイツのミュンヘンオフィスで、Prideロゴの旗が掲げられました。ダイバーシティを推進する社員グループのEBRG(Employee Business Resource Group)のメンバーでもあるミカエル・トリンクルは、「2年連続でミュンヘンのビルの前にPrideロゴの旗を掲げ、世界中のLGBTQ+コミュニティへの尊重とアライシップを示すことを、嬉しく誇りに思います。これは、今年のプライド月間に開始したすべての活動と、その裏にある努力を象徴しています」と語ります。
また、Sony Nordic(Sweden)では、今年の7月から8月の間、プライド月間に合わせて啓発活動を行う際、社内外でPrideロゴを用いる予定です。担当のマリア・ハロとアン・ルイス・クロッツは、「Prideロゴとそれに込められた意図を伝え、多様性の尊重に関する議論を促し、LGBTQ+コミュニティについての理解を深めたいと考えています。私たち全員が受け入れられていると感じられることが重要です」と話します。
米国では、SPE、ソニー・エレクトロニクス(SEL)、SIE、SMGが6月11日に開催されたLA Prideに参加し、Prideロゴを掲げました。
ソニーグループ全体のダイバーシティ推進を担当するソニーグループ(株)グループ人事部のジョアンナ・サヴェチェコは、Prideロゴ導入の意義を次のように振り返ります。
「Prideロゴの導入は、ソニーがLGBTQ+コミュニティと共にあるというメッセージを伝えています。このロゴを掲げて、社員や地域社会、当事者コミュニティと活動を進めることで、ソニーが一人ひとりの個性を尊重していることを改めて実感しています」
ソニーグループの多様性への取り組みは、これからも進化を続けていきます。