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ファウンダーの理念を受け継ぐ、ソニーの障がい者雇用

「障がい者だからという特権なしの厳しさで、健丈者の仕事よりも優れたものを、という信念を持って」 ——。ファウンダーの一人である井深 大が、障がいがあっても一人の社員として活躍し、他の社員と同じ、またはそれ以上の意識をもって働くことの大切さを説いた言葉です。このファウンダーの理念を受け継ぎ、ソニーグループは各個社で積極的な障がい者雇用を行うとともに、障がいの有無にかかわらずキャリア構築ができる、インクルーシブな働き方と職場環境づくりに取り組んできました。

また、ソニーグループには、全社員の6割を障がい者が占めるソニー・太陽株式会社、知的障がいや精神障がいのある方に就労機会を広げているソニー希望・光株式会社などの特例子会社もあります。社員一人ひとりが持つ特性を生かし、プロフェッショナルとして、ソニーグループのさまざまな製品、サービスに貢献しています。

  • ※障がいがなく「丈夫」な人はいるが、「常に」健康な人はいないという、井深の考え方を踏まえて表記したもの。
ソニー・太陽株式会社、ソニー希望・光株式会社で働く社員の皆さんの画像

障がいの有無で区別をしない

ソニーの障がい者雇用が加速したのは、1978年。井深が、身体に障がいのある人が仕事を通じて自立を目指す、大分県別府市の社会福祉法人「太陽の家」の創設者、中村 裕博士の考えに賛同し、ソニー・太陽の前身となる株式会社サンインダストリーを設立したことがきっかけです。

井深 大

中村博士は、留学先のイギリスの病院での取り組みや、東京パラリンピックの開催実現に尽力した経験などから、「障がいのある人は仕事を持ち、自立することが最も必要だ」との信念に至り、1965年に「太陽の家」を創設しました。井深も1973年、知的障がい者の授産施設として「希望の家」を設立しましたが、「太陽の家」で障がい者が生き生きと働く姿に感銘を受け、サンインダストリーの発起人となりました。その後、サンインダストリーは1981年、社名をソニー・太陽と改め、障がい者雇用を推進してきました。

ソニーの障がい者雇用の考え方は、冒頭の井深の言葉が今も根底にあります。障がいの有無で仕事内容や待遇、選考フローなどを区別することはなく、全ての職種にエントリー可能です。配属先、車いす用施設整備、補助器具の購入など、障がいが就労やキャリアの障壁とならないよう、サポートは可能な限り対応する一方で、その先の未来を切り開くのは個人の能力や努力次第と捉えています。そのため、障がい者向けの特別な雇用体系や評価制度は設けていません。

さらにソニーは、障がいのある学生たちが安心してキャリア形成を考え、夢や希望を叶えていけるという意識を持てるように、啓発活動にも取り組んでいます。10年以上前から、「キャリアスタートダッシュセミナー」を開催し、今後の就職活動や働くことに対する具体的なイメージ、自身の考えを深めてもらうために、ソニーグループ各社で活躍する障がいのある先輩社員によるパネルディスカッションなども行っています。また、今年から始まった障がい学生のための産学連携キャリア教育プラットフォーム「家でも就活オンライン カレッジ」に参画し、大学と協働して、障がいのある学生が、キャリアを早期に考えることができる機会を提供しています。

プロも愛用する高品質なマイクを製造するソニー・太陽

ソニー・太陽では、マイクロホン、ヘッドホンの生産を中心に高品質なものづくりに励んでいます。「漫才マイク」と呼ばれ、あらゆるプロ用途に適した名機であるコンデンサーマイクロホン『C-38B』や、King Gnuをはじめ長い間、多くのアーティストに重宝されてきた、唯一無二の真空管式コンデンサーマイクロホン『C-800G/9X』などを、障がい者一人で完成品まで組み立てるカスタムセル方式を導入しています。

現在、ソニー・太陽でそうしたハイエンドマイクロホンの生産ライン管理を担当している渡邊 ひとみも、「自分の作業が完成品につながることを実感できることがやりがいであり、品質の良さにもつながっている」と語ります。幼いころからおもちゃを分解するなど、ものづくりに関心があったという渡邊は、会社見学時に「(障がい者が)できることだけをやるのではなく、できるようにする」という雰囲気に魅力を感じたと言います。

「障がいがあるからできない、任せられないということにならず、自分がやってみたいことに挑戦できることがありがたいです。『まずは自分でやってみる』という機会が平等にあること、そして、一人ではうまくいかなかった時、『助けて』と声を上げることで周りが必ずサポートしてくれる。そんな文化がソニー・太陽には根付いていると思います。」

渡邊 ひとみ
ソニー・太陽(株)プロダクトビジネス部 生産1課2係 係長
「入社して、『(障がい者に対して)なんでもやってあげればいいってものではない、
助けてと言われたときに助けてあげるように』と、考え方が変わりました」

知的障がい・精神障がいのある社員が多く活躍するソニー希望・光

井深が設立した「希望の家」を礎として発展し、知的障がい・精神障がいのある社員が多く活躍するソニー希望・光。その業務範囲は、オフィス環境整備からメール集配・書類処理などの事務サポートにとどまらず、AI機能に学習させるために必要な画像データを生成する「画像アノテーション」などのIT・映像サポートにも及びます。画像アノテーションで生成されたさまざまな学習データは、ソニーのミラーレス一眼カメラ α™(Alpha™)に搭載されている「リアルタイム瞳AF」機能が被写体の瞳を認識するための精度向上に役立てられています。

画像アノテーション担当チームのまとめ役をしている青木 一輝は、「ソニー希望・光では業務内容が多岐にわたっていて、面白い仕事ができると思い入社を希望しました」と笑顔で話します。「チームメンバーに恵まれ、和気あいあいとした明るい雰囲気が業務に生かされていて、お互いの考えを理解した上で提案できるような、学びの空間になっています。このメンバーであれば『障がい者には難しいのではないか』と言われそうな業務でも、全然やれてしまうのではないかと思うし、これからも挑戦していきたいです」

また、電車の写真撮影が趣味という藤井 創士は、「画像アノテーションの作業は自分の趣味にも近いものがあると思い、入社を決めました」と力強く語ります。「一日に50枚以上、時には100枚以上画像を扱うこともありますが、その成果を事業部に評価いただき、『本当に助かっています』という声をいただくのが何よりのやりがいです。また、指差し確認を行うことで、作業精度が格段に向上しました。最終的には、青木さんのようなチームのまとめ役を目指したいです」

(左)藤井 創士 (右)青木 一輝
ソニー希望・光(株)ビジネスソリューション4課
藤井「自分の趣味や好きなこと、障がい特性についても気兼ねなく話せる環境で、大変有意義な会社生活を送れています」
青木「チームでまとめた意見を事業部にお話しした時に、提案内容を評価いただけるところにすごくやりがいを感じています」