Definitive Outline
ワイヤレスミュージック
という
新たな音楽体験を創造する
ワイヤレス通信で音楽を自在に楽しむワイヤレススピーカー。
テクノロジーの進化がもたらした新しいスピーカーの「原型」を求めて、
デザインプロジェクトが始動。
それはワイヤレスミュージックという新たな音楽体験を創造する挑戦でした。
Concept
〈 SRS-X9 / X7 / X5 / X3 〉ワイヤレススピーカーの原型とは
音楽の楽しみかたは、スマートフォンの普及とともに、それまでCDなどの物理的なメディアを介して聴くスタイルから、データを直接ストリーミングして聴くスタイルへと変わりつつあります。そこで台頭してきたのがワイヤレススピーカーでした。またBluetoothなどのワイヤレス技術の向上により、手元のスマートフォンやプレーヤーでどこからでも自由に高音質な音楽を再生できるワイヤレススピーカーの存在が、より注目されるようになってきました。メディアやプレーヤーに縛られずに自由に音楽を楽しめる、この新しいスピーカーのデザインとはどうあるべきか。ワイヤレススピーカーの原型を求めたプロジェクトが始動しました。
「静かに佇む」デザイン
世界市場に向けた新たなデザインを創造するため、ロンドンを拠点にデザインフィールドワークを開始。様々な人種が集まるグローバル都市であるロンドンは、音楽関係のクリエイターも多く、音楽文化発信の中心地でもあります。ストリーミング系のサービスも充実し、クリエイターとリスナーの双方でオーディオライフスタイルの変革が起きている現場です。そういった環境下で、東京、ヨーロッパ、上海の3拠点から参集したデザイナーは、音響設計者、構造設計者や商品企画と共に、ディスカッションを繰り返し、方向性を模索していきました。
フィールドワークの過程では、デザイン感度の高いユーザーや音楽クリエイターとのディスカッションも頻繁に行いました。デザイナーがあたためていた荒削りなアイデアと、彼らとの議論の中で見つけたキーワードを掛け合わせることで、その答えをできるだけシンプルな形で導き出そうと考えたからです。 こうして浮かび上がってきたのが、「blend in (調和)」というキーワードでした。存在を主張し「見せる」デザインよりも、インテリアに調和し「静かに佇む」デザイン。テクノロジーの存在感を上質に消し去る、デザインの原型が見えてきました。
音の空間を切り取るという発想
「blend in(調和)」から導き出されるデザイン。そのヒントを、スピーカーが置かれる空間そのものを抽出することに見出しました。一般的にインテリア空間は「水平・垂直」を基調としています。また、音楽データを物理的なメディアを介さずワイヤレスで送信することは、その空間に音楽が調和し、溶け込んでいるかのような感覚を与えます。それならば、既に音楽が溶け込んでいる空間の一部を「水平・垂直」に切り取り、それを鳴らすための音の箱を再定義すればいい。スピーカーの存在を空間に挿入するのではなく、「空間から音の箱を切り取る」という方が自然だと考えました。
存在の再定義」
空間を切り取るという考えに行きついた時に、我々が創造してきたテクノロジーという存在は、極端な言い方をすれば、ワイヤレス音源に限らず、すべてが目に見えなくなる方向にあることを改めて再認識しました。テクノロジーが進化すればするほどその純度が高まるわけです。その中でどうしても消せないピュアな存在(=今回であれば音の箱)を空間から切り取り、存在を再定義する。消せない何かを探りあて抽出し、ミニマイズし、再定義するのが我々プロダクトデザイナーの唯一無二の仕事なのかもしれません。
アートディレクター 石井
スタンダードデザインを
確立する」
急成長しているワイヤレススピーカー市場において、デザインのスタンダードを確立する絶好の機会でした。市場には各社各様で様々なデザインがありますが、まだ成熟していないカテゴリーだからこそ、「ワイヤレススピーカーはこうあるべき」というワイヤレススピーカーの原型をつくることが、我々の最大の使命であり、またチャンスと考えました。ハイエンドの大型モデルから小型モデルまで、統一したデザイン言語を作り、点ではなく群による統一のメッセージを発信することで、ソニーのワイヤレススピーカーの存在感を高めたいと考えたのです。
統括課長 鈴木